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七話 彼女
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高校3年の春。
オレと和倉は同じクラスになった。
進学校で、3年進級時にクラス替えがあるのが一般的かどうかわからないが、この高校では3年で特進(バリバリ理系)と進学(理文)と総合の編成がありオレも和倉も“総合”のクラスだ。要するに、受験勉強を特に必要としない専門学校なんかに進むか就職希望のクラスということになる。
和倉と同じクラスになったものの、オレは相変わらず平然と孤立気味に過ごしていた。新しいクラスだとオレの扱いに困るヤツが多いので全くの想定内。別に席が近いヤツらとは会話はするし、避けられているわけでもない。
和倉は和倉で仲の良かった元B組のヤツが1人同じクラスになって、専らそいつと行動を共にしていたけれど、オレと違って1年2年3年とだんだん仲間が増えて行ったのだろう。彼の周りは賑やかなものだった。
それでも同じクラスになった事で、まぁ ”同じ場に居れば少しくらい会話する” そのくらいの距離に変化はした。
「川原おはよ」
「あ、おはよ」
「あれ!?そちらは川原の彼女さん?」
朝の玄関で会った和倉がオレの横に居たリナを覗き込む。
オレが何か言う前に、リナはペコリと頭を下げて「おはようございます!あの、、和倉先輩、私の友だちに先輩のファンの子いるんです!」と、にこやかに応じる。
「ガチ?オレにファンは嬉しいやつ!」
余裕の笑顔をのぞかせて言う和倉と、初対面なのに気さくに話しかけてくれる男の先輩を前にしどろもどろになっているリナを玄関に残して「オレ先行くわ」と声をかけて学校へ入った。
オレより遅れて、いろんな人と話しながらじゃれあいながら教室に入ってきた和倉は、オレの前の席の椅子を引いて後ろ向きに座ると怪訝な顔をする。
「なぁ、川原いつもあんな感じなん?彼女に対して」
「なにが?」
わずかにムッとした口調で返したオレを探るように見てきた。
「ずいぶんそっけないんだなぁって。」
「正確にはリナは彼女じゃないよ」
「公式の彼女候補って言ってたよ?ああ、だからまだ付き合ってないってことか。ってことは、、まだヤってないん?」
和倉の友だちに絡む時に見せる悪戯っ子のような目に胸がチクリと痛む。いや、これはイラついたのかもしれない。
「はぁ?朝からんなこと聞く?」
「ふははっ、男子高校生の興味なんてそんなもんだろ?」
「和倉のファンに聞かせてやりたいな」
呆れた顔をするオレの前で屈託なく笑う和倉はすぐに廊下から友人に呼ばれ慌ただしく立ち去った。
そんな後姿をオレは目で追う。
何の不自由も無く、人気者で活発で、いつも誰かと笑い合っている。男にも女にも人気があって、後輩にも慕われている。
オレはそんな和倉を見るとやっぱり心がザワザワするのだ。
あいつは1人のときどんな顔をしているのか、、。あいつの気持ちの一番底のところは未だに夏と同じなんじゃないだろうか、、と。
また胸がチクリと痛んだ。
オレはその日学校を早退した。
オレと和倉は同じクラスになった。
進学校で、3年進級時にクラス替えがあるのが一般的かどうかわからないが、この高校では3年で特進(バリバリ理系)と進学(理文)と総合の編成がありオレも和倉も“総合”のクラスだ。要するに、受験勉強を特に必要としない専門学校なんかに進むか就職希望のクラスということになる。
和倉と同じクラスになったものの、オレは相変わらず平然と孤立気味に過ごしていた。新しいクラスだとオレの扱いに困るヤツが多いので全くの想定内。別に席が近いヤツらとは会話はするし、避けられているわけでもない。
和倉は和倉で仲の良かった元B組のヤツが1人同じクラスになって、専らそいつと行動を共にしていたけれど、オレと違って1年2年3年とだんだん仲間が増えて行ったのだろう。彼の周りは賑やかなものだった。
それでも同じクラスになった事で、まぁ ”同じ場に居れば少しくらい会話する” そのくらいの距離に変化はした。
「川原おはよ」
「あ、おはよ」
「あれ!?そちらは川原の彼女さん?」
朝の玄関で会った和倉がオレの横に居たリナを覗き込む。
オレが何か言う前に、リナはペコリと頭を下げて「おはようございます!あの、、和倉先輩、私の友だちに先輩のファンの子いるんです!」と、にこやかに応じる。
「ガチ?オレにファンは嬉しいやつ!」
余裕の笑顔をのぞかせて言う和倉と、初対面なのに気さくに話しかけてくれる男の先輩を前にしどろもどろになっているリナを玄関に残して「オレ先行くわ」と声をかけて学校へ入った。
オレより遅れて、いろんな人と話しながらじゃれあいながら教室に入ってきた和倉は、オレの前の席の椅子を引いて後ろ向きに座ると怪訝な顔をする。
「なぁ、川原いつもあんな感じなん?彼女に対して」
「なにが?」
わずかにムッとした口調で返したオレを探るように見てきた。
「ずいぶんそっけないんだなぁって。」
「正確にはリナは彼女じゃないよ」
「公式の彼女候補って言ってたよ?ああ、だからまだ付き合ってないってことか。ってことは、、まだヤってないん?」
和倉の友だちに絡む時に見せる悪戯っ子のような目に胸がチクリと痛む。いや、これはイラついたのかもしれない。
「はぁ?朝からんなこと聞く?」
「ふははっ、男子高校生の興味なんてそんなもんだろ?」
「和倉のファンに聞かせてやりたいな」
呆れた顔をするオレの前で屈託なく笑う和倉はすぐに廊下から友人に呼ばれ慌ただしく立ち去った。
そんな後姿をオレは目で追う。
何の不自由も無く、人気者で活発で、いつも誰かと笑い合っている。男にも女にも人気があって、後輩にも慕われている。
オレはそんな和倉を見るとやっぱり心がザワザワするのだ。
あいつは1人のときどんな顔をしているのか、、。あいつの気持ちの一番底のところは未だに夏と同じなんじゃないだろうか、、と。
また胸がチクリと痛んだ。
オレはその日学校を早退した。
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