捨てたいキミ、拾いたい僕。

ふじのはら

文字の大きさ
上 下
7 / 14

七話 彼女

しおりを挟む
高校3年の春。

オレと和倉は同じクラスになった。
進学校で、3年進級時にクラス替えがあるのが一般的かどうかわからないが、この高校では3年で特進(バリバリ理系)と進学(理文)と総合の編成がありオレも和倉も“総合”のクラスだ。要するに、受験勉強を特に必要としない専門学校なんかに進むか就職希望のクラスということになる。

和倉と同じクラスになったものの、オレは相変わらず平然と孤立気味に過ごしていた。新しいクラスだとオレの扱いに困るヤツが多いので全くの想定内。別に席が近いヤツらとは会話はするし、避けられているわけでもない。
和倉は和倉で仲の良かった元B組のヤツが1人同じクラスになって、専らそいつと行動を共にしていたけれど、オレと違って1年2年3年とだんだん仲間が増えて行ったのだろう。彼の周りは賑やかなものだった。

それでも同じクラスになった事で、まぁ ”同じ場に居れば少しくらい会話する” そのくらいの距離に変化はした。

「川原おはよ」
「あ、おはよ」
「あれ!?そちらは川原の彼女さん?」
朝の玄関で会った和倉がオレの横に居たリナを覗き込む。
オレが何か言う前に、リナはペコリと頭を下げて「おはようございます!あの、、和倉先輩、私の友だちに先輩のファンの子いるんです!」と、にこやかに応じる。
「ガチ?オレにファンは嬉しいやつ!」
余裕の笑顔をのぞかせて言う和倉と、初対面なのに気さくに話しかけてくれる男の先輩を前にしどろもどろになっているリナを玄関に残して「オレ先行くわ」と声をかけて学校へ入った。

オレより遅れて、いろんな人と話しながらじゃれあいながら教室に入ってきた和倉は、オレの前の席の椅子を引いて後ろ向きに座ると怪訝な顔をする。
「なぁ、川原いつもあんな感じなん?彼女に対して」
「なにが?」
わずかにムッとした口調で返したオレを探るように見てきた。
「ずいぶんそっけないんだなぁって。」
「正確にはリナは彼女じゃないよ」
「公式の彼女候補って言ってたよ?ああ、だからまだ付き合ってないってことか。ってことは、、まだヤってないん?」
和倉の友だちに絡む時に見せる悪戯っ子のような目に胸がチクリと痛む。いや、これはイラついたのかもしれない。
「はぁ?朝からんなこと聞く?」
「ふははっ、男子高校生の興味なんてそんなもんだろ?」
「和倉のファンに聞かせてやりたいな」
呆れた顔をするオレの前で屈託なく笑う和倉はすぐに廊下から友人に呼ばれ慌ただしく立ち去った。

そんな後姿をオレは目で追う。

何の不自由も無く、人気者で活発で、いつも誰かと笑い合っている。男にも女にも人気があって、後輩にも慕われている。
オレはそんな和倉を見るとやっぱり心がザワザワするのだ。
あいつは1人のときどんな顔をしているのか、、。あいつの気持ちの一番底のところは未だに夏と同じなんじゃないだろうか、、と。
また胸がチクリと痛んだ。

オレはその日学校を早退した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やくびょう神とおせっかい天使

倉希あさし
青春
一希児雄(はじめきじお)名義で執筆。疫病神と呼ばれた少女・神崎りこは、誰も不幸に見舞われないよう独り寂しく過ごしていた。ある日、同じクラスの少女・明星アイリがりこに話しかけてきた。アイリに不幸が訪れないよう避け続けるりこだったが…。

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

無敵のイエスマン

春海
青春
主人公の赤崎智也は、イエスマンを貫いて人間関係を完璧に築き上げ、他生徒の誰からも敵視されることなく高校生活を送っていた。敵がいない、敵無し、つまり無敵のイエスマンだ。赤崎は小学生の頃に、いじめられていた初恋の女の子をかばったことで、代わりに自分がいじめられ、二度とあんな目に遭いたくないと思い、無敵のイエスマンという人格を作り上げた。しかし、赤崎は自分がかばった女の子と再会し、彼女は赤崎の人格を変えようとする。そして、赤崎と彼女の勝負が始まる。赤崎が無敵のイエスマンを続けられるか、彼女が無敵のイエスマンである赤崎を変えられるか。これは、無敵のイエスマンの悲哀と恋と救いの物語。

青春の初期衝動

微熱の初期衝動
青春
青い春の初期症状について、書き起こしていきます。 少しでも貴方の心を動かせることを祈って。

幼馴染が俺以外の奴と同棲を始めていた.txt

只野誠
青春
 影の薄い正真正銘の陰キャ、冬至唯中(とうじただなか)は幼馴染の春野千春(はるのちはる)に小学生のことからずっと恋をしている。  千春と同じ大学を目指すが冬至だけが大学に落ち浪人する。  翌年、千春と同じ大学に受かるが、千春は同じ大学の人物と既に同棲をしていた。  これはラブコメです。  ラブなコメディですか? 自信はありません。  NTRの要素と言うよりはBSSの要素かな? まあ、あるかもしれませんが、これはラブコメです。  三話まで読めば…… 一部の方は、まあ、うん…… と、なるかもしれませんし、ならないかもしれません。  そんなお話です。  後、大学生のお話で性的なお話が多々でます。まあ、テーマの一つなので。   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  苦手な人は注意が必要です!  ただ、そう言うのことの目的には使えないと思います。  直接的な行為の描写などはありま…… ありません。たぶん。  雰囲気だけにとどめておいていると思います。  ついでにタイトルなどについている.txtはファイル名をタイトルにしてて、それをコピーしたときついてきたので、そのままいろんなところにも採用しただけです。  深い意味はありません。  度々、四回に一回くらいの割合で、全く関係のないような話も入りますが、一服の清涼剤と思って受け入れてください。  最終話までちゃんと書いてからの予約投稿となっています。  誤字脱字チェックで多少予約投稿の時期に誤差はあると思いますが。  とりあえず途中で終わるようなことはないです。  お話の内容はともかく、その点は安心してお読みください。  初回2024/2/3から一日一話ずつ公開します。  最終話まで予約投稿で済みです。

私の隣は、心が見えない男の子

舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。 隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。 二人はこの春から、同じクラスの高校生。 一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。 きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。

恋とは落ちるもの。

藍沢咲良
青春
恋なんて、他人事だった。 毎日平和に過ごして、部活に打ち込められればそれで良かった。 なのに。 恋なんて、どうしたらいいのかわからない。 ⭐︎素敵な表紙をポリン先生が描いてくださいました。ポリン先生の作品はこちら↓ https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911 https://www.comico.jp/challenge/comic/33031 この作品は小説家になろう、エブリスタでも連載しています。 ※エブリスタにてスター特典で優輝side「電車の君」、春樹side「春樹も恋に落ちる」を公開しております。

鍵の海で踊る兎

裏耕記
青春
君の演奏を聴いたから、僕の人生は変わった。でもそれは嬉しい変化だった。 普通の高校生活。 始まりは予定通りだった。 ちょっとしたキッカケ。ちょっとした勇気。 ほんの些細なキッカケは僕の人生を変えていく。 どこにでもある出来事に偶然出会えた物語。 高一になってからピアノなんて。 自分の中から否定する声が聞こえる。 それを上回るくらいに挑戦したい気持ちが溢れている。 彼女の演奏を聴いてしまったから。 この衝動を無視することなんて出来るはずもなかった。

処理中です...