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3 猫飼えますか
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彼女に殴られてふられた日から3週間ほどが過ぎた。
普通に毎日学校に行って、学校が早く終わる月、木と日曜日に居酒屋のバイトに行く。
バイトのない日は友達と遊んでることが多いので夕方に自宅に帰ってくる事はあまり無かった。
ちょうどその日もバイトが終わって夜11時近かっただろう。
なんとあの彼、英司さんと再会したのだ。
まぁ俺の住んでいるマンションの一階に入っている会社の人なのだ。再会したからと言ってそんなに驚くことでも無かったが、その時は再会そのものよりも、、
「なに?仔猫?」
建物の出入り口を入った途端、「ニー」と甲高い仔猫の鳴き声がして驚いた。声のした方へ、一階の廊下へ進むとしゃがみ込むスーツ姿の人がパッと顔を上げた。
「あ!」
「あ、、」
お互いに驚いた声をあげて、その声に被せるように響く仔猫の力強い甲高い声に視線がいく。
しゃがみ込む英司さんの前にダンボール箱が置かれていて、その中に小さな真っ黒い仔猫がいた。
「うわ、小さい!捨て猫ですか?」
「そうみたい。事務所からでたら箱置いてあって、、」
困っている彼の横にしゃがみ込んで俺も仔猫をなでる。動物は大概好きな方だ。
黒い仔猫は俺と英司さんの差し出した手に、まるで抱き上げてくれと言うように前脚をかけてすがってくる。
「どうしよう、、警察、、?じゃないか、、このまま放置は出来ないし、、」
英司さんは途方に暮れたように呟いて、仔猫の小さな頭を撫でている。その手つきがとっても優しい。
「猫、好きなんですか?」
「子供の頃から実家でずっと飼ってて、たぶん好きな方で、、だからずっとここで困ってた。」
こないだは女に殴られた男に足を止め、今日は捨て猫を見捨てられないと足を止めて、どれだけお人好しなのかと苦笑してしまう。
それに猫に気を取られているのか、初対面の前回と違って敬語をつかっていないのが何だか人懐こさを感じさせた。
まぁ、年上の男にそんな感想もどうかと思うけれど、、
「英司さん、、のマンションダメなんですか?連れて行ってあげたら、、里親さがしするとか、、」
「そうしたいけどうちのマンションペット禁止なんだ、、」
猫を見たまま首を横に振る。黒いストレートな髪の毛がサラサラと揺れた。
「英くんは?猫好き?この建物、犬連れてる人見かけるけど、、」
しゃがんで仔猫を見ていた目線をそのまま少し上げて俺の顔を見る。ちょっと上目遣いになった顔はまるで彼自身が捨て猫だとでも言うように心細げだ。
突然名前を呼ばれて俺は驚いたが、そういえば苗字を名乗った覚えも無いし、俺も英司さんと呼んでいるんだ。何の不思議もない。ただ友人は苗字呼びか、親しい人は「エイ」とか「エイくん」とか呼ぶから少し新鮮だった。
「とりあえず部屋に連れて行く事は出来ても、学生だし一人暮らしでペット飼うのは無理があるというか、、」
「俺も手伝う。里親探す間だけでも家に置いてやれない?」
ーーこの人本当に猫すきなんだ、、捉えどころない人だと思ったら真っ直ぐな目で見つめてくるし、、
「えぇっ、、困ったな、、いや、俺も猫好きだし、見捨てる事もしたく無いですよ?でも、、、えぇ、どうしよ、、本当に一緒に面倒見てくれますか?俺普通にこの時間にバイトから帰ってくる日あるんですけど、、」
「家に入っても良いなら、俺仕事の合間とか終わってから見に行けるよ。」
かくして彼の熱い要望に負けて、俺は英司さんと部屋へ子猫を連れて行くことになったのだ。
とは言ってもミルクもご飯も暖かい寝床も用意しなければならない。
俺がとりあえずざっと部屋を片付ける間に、英司さんは近所の夜中までやっているスーパーにいろいろ買い出しに行った。
まさか会って2度目の人をこんな夜中に自分の部屋に招くとは、、なんだか奇妙な縁だなとは思ったけれど、彼が俺の部屋へ出入りするなんて、ちょっと面白いかも、、
その日、英司さんは、しっかりお金をかけて、ペットサークル、ベッドにトイレのセット、ご飯やおもちゃまで買い揃えて帰ってきて黒猫に安心できる環境を提供した。
結局深夜2時頃までいろいろやって今後の世話の相談なんかもしてから解散した。
友人と呼ぶべきなのか何なのか、この日から毎日顔を合わせて、時には一緒にご飯を食べたり「ただいま」「おかえり」「また明日」「おやすみ」なんて挨拶を日常的に交わすような関係に俺たちはなるのだが、、さすがに二人とも気が付いてはいない。親しくなりたいとお互い思っていなければこんな生活を送ったりはしないこと。
隣に居て心地よさを感じ始めた頃にはお互いの存在が不思議と大きくなっていたのだ。
普通に毎日学校に行って、学校が早く終わる月、木と日曜日に居酒屋のバイトに行く。
バイトのない日は友達と遊んでることが多いので夕方に自宅に帰ってくる事はあまり無かった。
ちょうどその日もバイトが終わって夜11時近かっただろう。
なんとあの彼、英司さんと再会したのだ。
まぁ俺の住んでいるマンションの一階に入っている会社の人なのだ。再会したからと言ってそんなに驚くことでも無かったが、その時は再会そのものよりも、、
「なに?仔猫?」
建物の出入り口を入った途端、「ニー」と甲高い仔猫の鳴き声がして驚いた。声のした方へ、一階の廊下へ進むとしゃがみ込むスーツ姿の人がパッと顔を上げた。
「あ!」
「あ、、」
お互いに驚いた声をあげて、その声に被せるように響く仔猫の力強い甲高い声に視線がいく。
しゃがみ込む英司さんの前にダンボール箱が置かれていて、その中に小さな真っ黒い仔猫がいた。
「うわ、小さい!捨て猫ですか?」
「そうみたい。事務所からでたら箱置いてあって、、」
困っている彼の横にしゃがみ込んで俺も仔猫をなでる。動物は大概好きな方だ。
黒い仔猫は俺と英司さんの差し出した手に、まるで抱き上げてくれと言うように前脚をかけてすがってくる。
「どうしよう、、警察、、?じゃないか、、このまま放置は出来ないし、、」
英司さんは途方に暮れたように呟いて、仔猫の小さな頭を撫でている。その手つきがとっても優しい。
「猫、好きなんですか?」
「子供の頃から実家でずっと飼ってて、たぶん好きな方で、、だからずっとここで困ってた。」
こないだは女に殴られた男に足を止め、今日は捨て猫を見捨てられないと足を止めて、どれだけお人好しなのかと苦笑してしまう。
それに猫に気を取られているのか、初対面の前回と違って敬語をつかっていないのが何だか人懐こさを感じさせた。
まぁ、年上の男にそんな感想もどうかと思うけれど、、
「英司さん、、のマンションダメなんですか?連れて行ってあげたら、、里親さがしするとか、、」
「そうしたいけどうちのマンションペット禁止なんだ、、」
猫を見たまま首を横に振る。黒いストレートな髪の毛がサラサラと揺れた。
「英くんは?猫好き?この建物、犬連れてる人見かけるけど、、」
しゃがんで仔猫を見ていた目線をそのまま少し上げて俺の顔を見る。ちょっと上目遣いになった顔はまるで彼自身が捨て猫だとでも言うように心細げだ。
突然名前を呼ばれて俺は驚いたが、そういえば苗字を名乗った覚えも無いし、俺も英司さんと呼んでいるんだ。何の不思議もない。ただ友人は苗字呼びか、親しい人は「エイ」とか「エイくん」とか呼ぶから少し新鮮だった。
「とりあえず部屋に連れて行く事は出来ても、学生だし一人暮らしでペット飼うのは無理があるというか、、」
「俺も手伝う。里親探す間だけでも家に置いてやれない?」
ーーこの人本当に猫すきなんだ、、捉えどころない人だと思ったら真っ直ぐな目で見つめてくるし、、
「えぇっ、、困ったな、、いや、俺も猫好きだし、見捨てる事もしたく無いですよ?でも、、、えぇ、どうしよ、、本当に一緒に面倒見てくれますか?俺普通にこの時間にバイトから帰ってくる日あるんですけど、、」
「家に入っても良いなら、俺仕事の合間とか終わってから見に行けるよ。」
かくして彼の熱い要望に負けて、俺は英司さんと部屋へ子猫を連れて行くことになったのだ。
とは言ってもミルクもご飯も暖かい寝床も用意しなければならない。
俺がとりあえずざっと部屋を片付ける間に、英司さんは近所の夜中までやっているスーパーにいろいろ買い出しに行った。
まさか会って2度目の人をこんな夜中に自分の部屋に招くとは、、なんだか奇妙な縁だなとは思ったけれど、彼が俺の部屋へ出入りするなんて、ちょっと面白いかも、、
その日、英司さんは、しっかりお金をかけて、ペットサークル、ベッドにトイレのセット、ご飯やおもちゃまで買い揃えて帰ってきて黒猫に安心できる環境を提供した。
結局深夜2時頃までいろいろやって今後の世話の相談なんかもしてから解散した。
友人と呼ぶべきなのか何なのか、この日から毎日顔を合わせて、時には一緒にご飯を食べたり「ただいま」「おかえり」「また明日」「おやすみ」なんて挨拶を日常的に交わすような関係に俺たちはなるのだが、、さすがに二人とも気が付いてはいない。親しくなりたいとお互い思っていなければこんな生活を送ったりはしないこと。
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