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17-3.夢1二人羽織
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学校の教室に、斉藤くんが佇んでいる。
「今日も会えたね」
さりげなく羽織を脱いで、台座や座布団、観客用の椅子を消し去り、いつもの教室に変化させる。
「いつもの教室じゃ、つまらないかな。眺めもよくしておこっか」
もう一度手をかざし、全面ガラス張りにして、大きなソファも出現させた。
「桜ちゃん。誤魔化してるよね。思いっきり、誤魔化してるよね」
斉藤くんは、優しい眼差しで私にゆっくりと近づくと、柔らかく頭をなでた。
「本物の斉藤くん?」
ものすごく好かれているような感じがして、つい確認してしまう。
「そうだよ。一緒に図書館デートした俺だよ」
そう言って、私が用意した黄色のソファに座りこんだので、私も隣に座った。
デート!
デートって認識だったんだ。
そういえば、最初にデートをしようって言ってた気もする。
初デートだったのなら、何か考えたほうがよかったのかな。
お菓子とか作ったほうがよかった?
ソファ、もう少し小さくすればよかった。もっとそばに寄りたい。
夢の私は好きだって言ってたし、もうちょっと近寄ってもいいかな。
1人分くらいの距離を、半分くらいじりじりと詰めてじっと様子をうかがう。
嫌がってないし、にこにこしてるし、大丈夫だよね。
「で、今日はどんな妄想を?」
ぐっと言葉に詰まる。
「さ、さすがに本物って知っちゃったら、教えません! それに、してないかもしれないでしょ。決めつけないでよね」
我ながら、嘘っぽい。
斉藤くんも、しらーっとした顔でより距離を詰めると、今度は私の頬をなでた。
「白Tシャツにちゃんちゃんこ着て、教室があの状態。説得力がないな」
至近距離で見つめられると、嘘はつきにくい。
「うう……非日常の学校生活を想像しながら寝ただけかもしれないよ? ほら、今日はちゃんと服着てるでしょ」
「それで? 実際は?」
全く誤魔化されてくれない。
「黙秘します!」
ものすごく悲しそうな顔をされる。まるで、捨てられた子犬のようだ。
「か、仮にしてたとしても、見せません!」
断固たる意思で、はっきりと伝える。
「嫌だ」
じとっとした目で見られる。
斉藤くん、なんか子供っぽくなってない?
「嫌だって……。あのね、私が何を頭の中で考えるのかは私の自由で、人に言うものじゃないの!」
そう言うと、「耐えられない」と辛そうな声を出しながら、ぎゅっと私を抱きしめた。
「ほ、ほだされないんだからね」
なんか、可愛い。
「無理。知りたい。桜ちゃんだったら気にならないの? 俺が意味不明な格好で得体の知れない教室で、あぁいい妄想したーっとか言ってたら気にならない?」
それは、気になるかもしれない。
「頼むよー、桜ちゃん。この通り!」
「そんな拝まれても……」
最初にうっかり妄想なんて見せなきゃよかった。
斉藤くんは、気になる気になるーと言いながら、私の首元に顔を押しつけている。
「なんか、さっきから思ってるんだけど、斉藤くん子供っぽくなってない?」
よしよしと頭をなでる。
なんか、ペットみたい。
「男なんて皆、子供だよ。好きな女の子にくらい、甘えさせてよ」
キャラ違う!
キャラ変わってるよ!?
「好きって、現実で言うって言ってなかった? なんか、おかしいよ。嬉しいけど、大丈夫? 壊れちゃってない?」
もしかして今夜は斉藤くんがラムネを食べ忘れていて、私は自分の夢を見ているだけなのかもしれないと不安になってきた。
「言うよ。でも夢でも言ってもいいかなって。じゃぁ、何か交換条件出してくれない? して欲しいこととか、何でもいいからさ」
しつこすぎて、だんだんと見せてもいいかなという気分になるも、今日の妄想を思い出して、首を振った。
「無理無理、引かれるもん。せっかく仲良くなってきたのに、人としてどうなのとか思われたくない」
「思うわけないだろ。前も言ったけど、ホラー映画好きの奴だって実際には襲われたくないだろうし、恐竜映画好きな奴だって、恐竜に食われたいとは思わないはずだ。別物ってことくらい、ちゃんと分かってる。信じてくれ」
真剣な顔で私の両肩に手を置いて、熱弁をふるわれる。
どうなの、これ……。
「でも、そーゆう妄想する人だったんだって意味で引かれるかもしれないし」
むしろ、斉藤くんの熱い思いに私が引き気味だ。
「それも大丈夫だ。今までの複数、目隠し、百合、野外、人外、触手、どんなプレイでも、引いてない。安心してくれ」
「我ながら、酷い……」
自分自身にも引いてきた。
頭の中だけならまだしも、他人の口から聞くとドン引きすぎてクラクラする。
「空中プレイでも、複数獣姦プレイでも、引かないと約束するよ」
「さすがに、そんなマニアックな趣味は妄想でもないよ」
一体私を何だと思っているんだろう。
「なんか、拒否するのも面倒くさくなってきたな……」
遠い目をしながら、教室から見える夕陽を見つめた。
あれ? 太陽の位置が実際とは違うかも。確か西はあっち……まぁいいか。
「それは、もう一押しってことか」
難しい顔をして悩み始めている。
「今日は、教室が舞台ってことだよな。俺以外のクラスメイトで妄想したとかないよな?」
思いもよらない問いかけに、さぁあっと顔が青ざめるのを感じた。
やばいやばいと汗が吹き出す。
「それはないよ! 架空のキャラだよ! 実際の人での妄想はない!」
「焦りすぎじゃないか? 俺以外の気になってる奴とヤったから、そんなに拒否してるってことか?」
怒っているフリなのか、本当に疑っているのか、分からない。
作戦なんだろうと思いながらも、ものすごく焦る。
「どいつだ? クラスの奴か? 1年の時のクラスメイトか? それとも中学の時の男か? そもそも俺が好きだとか言ってたけど、いつからなんだ? 俺の前は誰が好きだった?」
次から次へと質問が飛んでくる。
こんなに問い詰めてくる斉藤くんは初めてだし、もしかしたら本当に疑っているのかもしれない。
「もー! めんどくさーい! 分かったよ。見せればいいんでしょ。でも、今日だけ。疑いを晴らすだけ。分かった? あとね、実際の人物で妄想したとしても、頭の中だけなんだから、非難されるいわれ、本当はないんだからね!」
返事の代わりに、ちゅっと手の甲にキスをされ、「ありがとう」と耳元で呟かれた。
きっとこれからもお願いする気だ……。でも、これが最後だ。
次は何が何でも断る。
……たぶん。
ふぅとため息をついて、いつものように彼の頭に手を置くと、んーっと念じた。
ピンク色に発光し、次第に光が消えていく。
憎らしいほどに満足した表情の斉藤くんに、わざとらしく深いため息を吐いてみせた。
「今日も会えたね」
さりげなく羽織を脱いで、台座や座布団、観客用の椅子を消し去り、いつもの教室に変化させる。
「いつもの教室じゃ、つまらないかな。眺めもよくしておこっか」
もう一度手をかざし、全面ガラス張りにして、大きなソファも出現させた。
「桜ちゃん。誤魔化してるよね。思いっきり、誤魔化してるよね」
斉藤くんは、優しい眼差しで私にゆっくりと近づくと、柔らかく頭をなでた。
「本物の斉藤くん?」
ものすごく好かれているような感じがして、つい確認してしまう。
「そうだよ。一緒に図書館デートした俺だよ」
そう言って、私が用意した黄色のソファに座りこんだので、私も隣に座った。
デート!
デートって認識だったんだ。
そういえば、最初にデートをしようって言ってた気もする。
初デートだったのなら、何か考えたほうがよかったのかな。
お菓子とか作ったほうがよかった?
ソファ、もう少し小さくすればよかった。もっとそばに寄りたい。
夢の私は好きだって言ってたし、もうちょっと近寄ってもいいかな。
1人分くらいの距離を、半分くらいじりじりと詰めてじっと様子をうかがう。
嫌がってないし、にこにこしてるし、大丈夫だよね。
「で、今日はどんな妄想を?」
ぐっと言葉に詰まる。
「さ、さすがに本物って知っちゃったら、教えません! それに、してないかもしれないでしょ。決めつけないでよね」
我ながら、嘘っぽい。
斉藤くんも、しらーっとした顔でより距離を詰めると、今度は私の頬をなでた。
「白Tシャツにちゃんちゃんこ着て、教室があの状態。説得力がないな」
至近距離で見つめられると、嘘はつきにくい。
「うう……非日常の学校生活を想像しながら寝ただけかもしれないよ? ほら、今日はちゃんと服着てるでしょ」
「それで? 実際は?」
全く誤魔化されてくれない。
「黙秘します!」
ものすごく悲しそうな顔をされる。まるで、捨てられた子犬のようだ。
「か、仮にしてたとしても、見せません!」
断固たる意思で、はっきりと伝える。
「嫌だ」
じとっとした目で見られる。
斉藤くん、なんか子供っぽくなってない?
「嫌だって……。あのね、私が何を頭の中で考えるのかは私の自由で、人に言うものじゃないの!」
そう言うと、「耐えられない」と辛そうな声を出しながら、ぎゅっと私を抱きしめた。
「ほ、ほだされないんだからね」
なんか、可愛い。
「無理。知りたい。桜ちゃんだったら気にならないの? 俺が意味不明な格好で得体の知れない教室で、あぁいい妄想したーっとか言ってたら気にならない?」
それは、気になるかもしれない。
「頼むよー、桜ちゃん。この通り!」
「そんな拝まれても……」
最初にうっかり妄想なんて見せなきゃよかった。
斉藤くんは、気になる気になるーと言いながら、私の首元に顔を押しつけている。
「なんか、さっきから思ってるんだけど、斉藤くん子供っぽくなってない?」
よしよしと頭をなでる。
なんか、ペットみたい。
「男なんて皆、子供だよ。好きな女の子にくらい、甘えさせてよ」
キャラ違う!
キャラ変わってるよ!?
「好きって、現実で言うって言ってなかった? なんか、おかしいよ。嬉しいけど、大丈夫? 壊れちゃってない?」
もしかして今夜は斉藤くんがラムネを食べ忘れていて、私は自分の夢を見ているだけなのかもしれないと不安になってきた。
「言うよ。でも夢でも言ってもいいかなって。じゃぁ、何か交換条件出してくれない? して欲しいこととか、何でもいいからさ」
しつこすぎて、だんだんと見せてもいいかなという気分になるも、今日の妄想を思い出して、首を振った。
「無理無理、引かれるもん。せっかく仲良くなってきたのに、人としてどうなのとか思われたくない」
「思うわけないだろ。前も言ったけど、ホラー映画好きの奴だって実際には襲われたくないだろうし、恐竜映画好きな奴だって、恐竜に食われたいとは思わないはずだ。別物ってことくらい、ちゃんと分かってる。信じてくれ」
真剣な顔で私の両肩に手を置いて、熱弁をふるわれる。
どうなの、これ……。
「でも、そーゆう妄想する人だったんだって意味で引かれるかもしれないし」
むしろ、斉藤くんの熱い思いに私が引き気味だ。
「それも大丈夫だ。今までの複数、目隠し、百合、野外、人外、触手、どんなプレイでも、引いてない。安心してくれ」
「我ながら、酷い……」
自分自身にも引いてきた。
頭の中だけならまだしも、他人の口から聞くとドン引きすぎてクラクラする。
「空中プレイでも、複数獣姦プレイでも、引かないと約束するよ」
「さすがに、そんなマニアックな趣味は妄想でもないよ」
一体私を何だと思っているんだろう。
「なんか、拒否するのも面倒くさくなってきたな……」
遠い目をしながら、教室から見える夕陽を見つめた。
あれ? 太陽の位置が実際とは違うかも。確か西はあっち……まぁいいか。
「それは、もう一押しってことか」
難しい顔をして悩み始めている。
「今日は、教室が舞台ってことだよな。俺以外のクラスメイトで妄想したとかないよな?」
思いもよらない問いかけに、さぁあっと顔が青ざめるのを感じた。
やばいやばいと汗が吹き出す。
「それはないよ! 架空のキャラだよ! 実際の人での妄想はない!」
「焦りすぎじゃないか? 俺以外の気になってる奴とヤったから、そんなに拒否してるってことか?」
怒っているフリなのか、本当に疑っているのか、分からない。
作戦なんだろうと思いながらも、ものすごく焦る。
「どいつだ? クラスの奴か? 1年の時のクラスメイトか? それとも中学の時の男か? そもそも俺が好きだとか言ってたけど、いつからなんだ? 俺の前は誰が好きだった?」
次から次へと質問が飛んでくる。
こんなに問い詰めてくる斉藤くんは初めてだし、もしかしたら本当に疑っているのかもしれない。
「もー! めんどくさーい! 分かったよ。見せればいいんでしょ。でも、今日だけ。疑いを晴らすだけ。分かった? あとね、実際の人物で妄想したとしても、頭の中だけなんだから、非難されるいわれ、本当はないんだからね!」
返事の代わりに、ちゅっと手の甲にキスをされ、「ありがとう」と耳元で呟かれた。
きっとこれからもお願いする気だ……。でも、これが最後だ。
次は何が何でも断る。
……たぶん。
ふぅとため息をついて、いつものように彼の頭に手を置くと、んーっと念じた。
ピンク色に発光し、次第に光が消えていく。
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