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17-1.妄想1二人羽織

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 夜になった。
 いつもの妄想をする夜だ。
 そして、斉藤くんと夢の中で会う夜でもある。

 一体、どうしたらいいの……!?

 今までは、斉藤くんの夢を見るだけだと思っていたから、いつものルーティンである妄想しながらオナニーをして、ほぼほぼ全裸で会っていた気がする。

 さすがに、今日は全裸は避けたい。
 それなら普通に寝ようかと思ったものの、オナニーでイかないと寝れない体質になってしまったのか、一向に寝れない。

 このままじゃ、約束したのに会えずに明日になってしまうか、会えても時間はきっと短い。

 やっぱり、やるしかないか……。

 要は、脱がない妄想にして、今日は妄想しなかったと言い張ればいい。

 よし、そうしよう。

 愛しい彼に会うためにも、いったん彼のことは忘れて、妄想の世界に今日も沈んでいく。

   *

 架空のクラスメイト、平河くんと私は、学祭のクラスでの出し物「二人羽織」の午前の担当だ。
 ペアも担当も、くじ引きで決まった。男女でペアなのはどうかと思ったけれど、クラス内の全員の仲がよく、ノリで混合となってしまった。

 私は、顔が見える人の方だ。
 せめて、後ろから手だけ出す人がよかった。

「あんまり人、いないね」

 積み上げた机に黒い布をかけただけのクラスの舞台袖から、ちらりとクラス内を見る。

「そうだね。あと男しかいないな」

 二人羽織を見て面白がるのは、男の子が多いんだろうか。

「時間だ、行こう」
「うん」

 大きめの羽織の中で、私の背中にしっかりと張りついた彼と、歩調を合わせてクラスの前方に置いた台座に上り、座布団に腰をおろす。

「今日は、お集まりいただき、ありがとうございます。それでは、このクラスの出し物、二人羽織を行いたいと思います」

 パチパチとまばらに拍手がおきる。確かに男子しかいない。

 そう思った瞬間、羽織で外からは見えない私の両手首が後ろでカシャンと拘束された。

 え、何、手錠!?

 何考えてるの、平河くん。
 そんなことしなくても、手なんか出さないのに。

 こちらの焦りは無視で、素早く袖に手を通し直した平河くんの両手が、お盆の上に乗ったお茶入りの紙コップへと伸ばされる。

 このまま続けるしかなさそうだ。

「夏も終わりに近づいていますが、まだ暑いですよね。まずはお茶を一杯いただこうと思います」

 私がそう言うと、紙コップが口にそっと添わされ、傾けられた。

 ゴクゴク。
 ここまでは練習通りだ。

「うーん、美味しい。もう一杯」

 そう言うと、突然大きく傾き、口から溢れ出る。

「んんっ、ぐっ、んっ」

 バシャっと私の来ている白いTシャツにかかった。事前に汚れることを想定してのTシャツだけれど、これは酷い。

 調子に乗って、ウケを狙い始めたんだろうか、勘弁してほしい。

「失敗失敗。大量にこぼしてしまいました。ここは気を取り直して、プリンをいただきましょう」

 まるで想定通りかのように振る舞うも、もうやめたい気持ちでいっぱいだ。

 平河くんの持つプリンとスプーンが目の前に運ばれる。そこで、私の顔は真っ青になった。
 お茶でTシャツが透けて、ブラジャーの形がくっきりと見えてしまっている。

 泣きたい。
 平河くん、分かっててやったの?

 容赦なくプリンは顔付近へと近づいてくる。仕方なく、あむっと口を突き出すように食べた。

「甘くて美味しい。もっともっと食べましょう」

 食べたくないのに、次のプリンが運ばれるので、こぼさないよう夢中で食べる。

 突然、平河くんの右手から、スプーンだけお盆に戻された。

 え、まだプリンあるよ?
 台本と違うよ?

 うまい言葉が出てこずに固まっていると、彼の右手が直接プリンをすくい、私の口に入れられた。

「んんっ? な、んむ!」

 指が口の中を往復した後、またプリンをすくいあげ、口の中へと直接入れられる。

 こちらを見ている観客の男子たちが、前のほうへにじり寄ってきた。
 明らかにエロい目で見られてる。

「あー美味しかった! もうプリンはお終い!」

 無理矢理、後ろの平河くんにアピールするように言うと、残りのプリンが口の少し下で傾けられて、Tシャツの中にまで入ってしまった。

「き、今日は手元が狂う日だなぁ」

 咄嗟に適当なことを言うも、肌についたプリンが気持ち悪い。

 平河くんの右手が、私の口元をぬぐう予定のタオルへと伸ばされる。

 タオルでどうにかなるレベルを超えてるけど……。

 何とかしなければという彼なりの善意かと思いきや、突然左手がTシャツの裾をぎゅっと持ち上げ、ブラジャーが露わになった。

「ふ、ふぇぁ!?」

 タオルでごしごしと身体を拭かれるも、こすられているだけでプリンが広がるだけだ。
 上へ上へと拭かれ、ブラジャーが胸の上へとたくし上がり、乳房が丸見えになった。

「ま、待って! ストップ! やりすぎてるよ!」

 観客の男子の視線が、私の胸に釘付けになっている。
 さすがに私も手を出して止めたいのに、手錠か何かで拘束されて、どうすることもできない。

 私のストップの声でタオルを置いたと思ったら、両手とも私の胸をもみ始めた。

「な、ちょっと、やめっ……」

 カラメルソースがねばっこく私の胸周辺に広がっていく。

「やだって、なにす……っ」

 抗議の声を言い終わらないうちに、彼の指が私の口の中に入れられたと思うと、後ろから平河くんの裏声が教室に響いた。

「汚れすぎちゃったから、見ている皆さん、舐めて綺麗にして下さ~い」
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