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15.図書館
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どういう意味なのかな。
好きだからってこと?
好きかもしれないからってこと?
それとも男性にはしないけど、女性にはってこと?
顔が熱くなりすぎて、目も合わせられない。
こんな顔、見られたくない。
火照りが収まるのを、風景を眺めながらしばらく待った。
降りるべき駅名がアナウンスされたところで、冷静な顔を装ってお返しする。
「私も、だよ。テストまで2週間と迫っているタイミングで人と会うなんて、誰にでもってわけじゃない」
一瞬の間があった後に、彼はぷっと吹き出すと、私の腕をポンポンと触った。
「そうだな。築山さんの知られざる勉強法をチェックする大チャンスだよな、今日は。楽しみだよ」
「えー、見物料取っちゃおうかなー」
「ジュース1本な」
指を1本立てて、彼が人懐っこそうに笑う。
「冗談だよ。そんな見るほどの価値はないって」
「知りたい奴、けっこういると思うよ」
「それは幻滅されるね」
「幻滅される勉強法ってどんななの。逆に楽しみだけど」
少し盛り上がったところで駅に到着した。
人がまばらに散っていく。私たちも図書館に向かって歩き出した。
斉藤くんに触れられた腕に、つい目がいってしまう。
私からも、触りたい。
でも、どうしたらそんな流れになるのか、分からない。
背の高いビルはないけれど、建物だけは続いていく。田舎とも都会ともいえない中途半端な道を歩きながら、本当にさっき、会話をしていたんだろうかと思うような沈黙の中、信号機の押しボタンを押した。図書館はもう目の前だ。
「今日はどの科目の勉強するの?」
目的地はすぐそこだ。すぐに終わりそうな話題をふった。
「社会。暗記系を先に終わらせようと思って」
「今からだと、一部忘れちゃわない?」
「そこを気にしたら、勉強なんてできないよ。ますます、築山さんの勉強法が気になるな」
「たいしたことないって」
話しながら玄関へと向かい、中に入る。
彼が指差す方向へついて行きながら、昼まではもうおしゃべりできないことを残念に思った。
デートしたいなぁ。
いっぱいしゃべりたい。
階段を上がり、彼が開けてくれた扉の中を見ると、たくさんの机と椅子が窓の方角へ向かって並んでいた。
ここが自習室かぁ。
勉強するための場所って感じ。
ここでいいかと彼が指差す席を見ながら、うんと頷く。
私たちは目配せをしながら、お互い無言で席に座った。
先ほど言っていた通り彼は社会の勉強をするようで、教科書と資料集を取り出している。
休日に、彼と一緒にいる。
そのことにもう少し浸りたかったけれど、仕方ない。浮かれて点数は落としたくないし、勉強モードに入ろう。
私も、英語の教科書とテスト用に作成したノート、それから落書き帳を取り出し、隣に彼がいることをできるだけ意識しないようにしながら、集中し始めた。
*
「なるほどね」
図書館を出るなり、彼が呟いた。
「なるほどって、何が?」
お昼になってしまった。
どうしたらいいんだろう。
何かを食べて、午後も一緒に勉強?
それとも、もう帰るつもりなのかな。
「築山さんの英語の点数が、高い理由。なるほどねーって思ってさ」
「あぁ。あれね」
テスト用に、教科書や演習の日本語訳だけを事前に書いておいたノートを見ながら、ひたすら英文を不要紙に書く勉強法だ。教科書は答え合わせのために持ってきた。
「テスト範囲を丸暗記すれば、点数取れるでしょっていう、ただの荒技だよ」
「なるほど」
「1週間前までには何も見なくてもテスト範囲のページは全て書けるようにまでもっていくけど、テストが終わると全部忘れちゃうの」
「それは器用だね」
「器用! 上手い言い方するね。その表現、もらお」
にこにこと笑いあう。
図書館に来た時よりも、距離が近い気がする。
こんなに近くで斉藤くんの顔を見れるなんて、まるで夢の中みたい。
……夢の話は、今日はしなくていいかな。むしろ、仲良くなったという結果だけが残れば、それが1番だ。
「そこの店で、俺は何か頼もうと思ってるけど、一緒に食べる?」
どこに向かっているのか分からないまま斉藤くんについて歩いていたら、小窓から持ち帰り用のお好み焼きや焼きそば、たこ焼きやアイスクリームを売っている店が目の前に見えた。
「うん、そうするー」
お金、持ってきておいて良かった。
「何がいい?」
「たこ焼き! 普段食べられないし」
「たこ焼き器がないと、無理だよなー。俺もそうしよ」
彼は「たこ焼き2つ」と言って財布を出したので、私も慌てて鞄を開けると「いい、いい」と静止され、千円札を彼が出した。
「え、で、でも……」
「昼食べるって、言ってなかったし。いいよ」
「あ、ありがとう」
お店のおばちゃんが「はーい」と言いながら、生暖かい目でこちらを見ている気がする。
こそばゆい。
なんて、こそばゆいやり取りなんだろう。
ただ片想いしているだけじゃ味わえない、こそばゆさだ……!
ぽやぽやと幸せに浸りながら、あつあつのたこ焼きが出来上がるのを待った。
好きだからってこと?
好きかもしれないからってこと?
それとも男性にはしないけど、女性にはってこと?
顔が熱くなりすぎて、目も合わせられない。
こんな顔、見られたくない。
火照りが収まるのを、風景を眺めながらしばらく待った。
降りるべき駅名がアナウンスされたところで、冷静な顔を装ってお返しする。
「私も、だよ。テストまで2週間と迫っているタイミングで人と会うなんて、誰にでもってわけじゃない」
一瞬の間があった後に、彼はぷっと吹き出すと、私の腕をポンポンと触った。
「そうだな。築山さんの知られざる勉強法をチェックする大チャンスだよな、今日は。楽しみだよ」
「えー、見物料取っちゃおうかなー」
「ジュース1本な」
指を1本立てて、彼が人懐っこそうに笑う。
「冗談だよ。そんな見るほどの価値はないって」
「知りたい奴、けっこういると思うよ」
「それは幻滅されるね」
「幻滅される勉強法ってどんななの。逆に楽しみだけど」
少し盛り上がったところで駅に到着した。
人がまばらに散っていく。私たちも図書館に向かって歩き出した。
斉藤くんに触れられた腕に、つい目がいってしまう。
私からも、触りたい。
でも、どうしたらそんな流れになるのか、分からない。
背の高いビルはないけれど、建物だけは続いていく。田舎とも都会ともいえない中途半端な道を歩きながら、本当にさっき、会話をしていたんだろうかと思うような沈黙の中、信号機の押しボタンを押した。図書館はもう目の前だ。
「今日はどの科目の勉強するの?」
目的地はすぐそこだ。すぐに終わりそうな話題をふった。
「社会。暗記系を先に終わらせようと思って」
「今からだと、一部忘れちゃわない?」
「そこを気にしたら、勉強なんてできないよ。ますます、築山さんの勉強法が気になるな」
「たいしたことないって」
話しながら玄関へと向かい、中に入る。
彼が指差す方向へついて行きながら、昼まではもうおしゃべりできないことを残念に思った。
デートしたいなぁ。
いっぱいしゃべりたい。
階段を上がり、彼が開けてくれた扉の中を見ると、たくさんの机と椅子が窓の方角へ向かって並んでいた。
ここが自習室かぁ。
勉強するための場所って感じ。
ここでいいかと彼が指差す席を見ながら、うんと頷く。
私たちは目配せをしながら、お互い無言で席に座った。
先ほど言っていた通り彼は社会の勉強をするようで、教科書と資料集を取り出している。
休日に、彼と一緒にいる。
そのことにもう少し浸りたかったけれど、仕方ない。浮かれて点数は落としたくないし、勉強モードに入ろう。
私も、英語の教科書とテスト用に作成したノート、それから落書き帳を取り出し、隣に彼がいることをできるだけ意識しないようにしながら、集中し始めた。
*
「なるほどね」
図書館を出るなり、彼が呟いた。
「なるほどって、何が?」
お昼になってしまった。
どうしたらいいんだろう。
何かを食べて、午後も一緒に勉強?
それとも、もう帰るつもりなのかな。
「築山さんの英語の点数が、高い理由。なるほどねーって思ってさ」
「あぁ。あれね」
テスト用に、教科書や演習の日本語訳だけを事前に書いておいたノートを見ながら、ひたすら英文を不要紙に書く勉強法だ。教科書は答え合わせのために持ってきた。
「テスト範囲を丸暗記すれば、点数取れるでしょっていう、ただの荒技だよ」
「なるほど」
「1週間前までには何も見なくてもテスト範囲のページは全て書けるようにまでもっていくけど、テストが終わると全部忘れちゃうの」
「それは器用だね」
「器用! 上手い言い方するね。その表現、もらお」
にこにこと笑いあう。
図書館に来た時よりも、距離が近い気がする。
こんなに近くで斉藤くんの顔を見れるなんて、まるで夢の中みたい。
……夢の話は、今日はしなくていいかな。むしろ、仲良くなったという結果だけが残れば、それが1番だ。
「そこの店で、俺は何か頼もうと思ってるけど、一緒に食べる?」
どこに向かっているのか分からないまま斉藤くんについて歩いていたら、小窓から持ち帰り用のお好み焼きや焼きそば、たこ焼きやアイスクリームを売っている店が目の前に見えた。
「うん、そうするー」
お金、持ってきておいて良かった。
「何がいい?」
「たこ焼き! 普段食べられないし」
「たこ焼き器がないと、無理だよなー。俺もそうしよ」
彼は「たこ焼き2つ」と言って財布を出したので、私も慌てて鞄を開けると「いい、いい」と静止され、千円札を彼が出した。
「え、で、でも……」
「昼食べるって、言ってなかったし。いいよ」
「あ、ありがとう」
お店のおばちゃんが「はーい」と言いながら、生暖かい目でこちらを見ている気がする。
こそばゆい。
なんて、こそばゆいやり取りなんだろう。
ただ片想いしているだけじゃ味わえない、こそばゆさだ……!
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