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13-3.夢1異世界召喚・勇者編
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「これは、昨日の夢の続き?」
いきなり誰かに話しかけられた。ぼやけた人型の輪郭が、徐々にはっきりとしていく。
「でも、俺のこの格好、勇者風だよね」
今日もまた、斉藤くんの夢が見られたようだ。勇者の格好なのは、意外だ。てっきり、魔術師あたりかと思った。
「うん。勇者だよ、斉藤くん。似合うね」
「いや、似合ってないでしょ。それより、どんな妄想なの今日は。もう、この姿を見た時から、気になって気になって。頼むから教えてくれよ」
「言いたくありませーん」
「えぇー」
夢の中の斉藤くんとは、だんだんと親密度が上がってきた気がする。お互い、遠慮がなくなってきた。
「それより、私の裸には何も思わないの!?」
あまりにも視線が普通だ。女性として、たとえ夢でもちょっと凹む。
「夢のデフォルトかなって」
「えぇー」
今度は私が抗議の声をあげた。
夢ではもう、あれやこれやは諦めたほうがいいのだろうか。
「頼むよ、気になって仕方ないんだ。目の前に読みたい本があるのに、開かない気分だよ」
「そこまで……。一体、夢の中の斉藤くんは、どうしてそんなキャラに……」
「分かった。俺にも罪悪感ってものは、ある。君にずっと隠していた重大な秘密を教えるよ」
いきなり、驚くようなことを言い始めた。
「んー、夢なんだから、何言われても信憑性薄いし」
「休日に図書館に行くのも当たってただろう? 魔法のラムネなんだから、本当のことだよ」
「あぁー、確かに当たってたけど。でも、夢で秘密を知るのはズルい気もするしなぁ」
「その秘密が分かれば、俺と現実世界でも、めちゃくちゃ仲良くなれるって保証するよ」
「な……」
どうして、夢の中の斉藤くんは、こんなに私の妄想を見たがるんだろう。
「仕方ないなぁ。夢だし、まぁいいか」
秘密が知れるという誘惑には勝てない。
今まで通り、斉藤くんの頭に手をかざし、んーっと念じる。
手の平から光が発光し、満足そうに斉藤くんが笑った。
「だんだんと、君というピンクな本にはまってきた気分だよ」
「それはどうも。それで? 秘密って?」
「うっ」
自分で言い出したくせに、バツの悪そうな顔をして、悩むそぶりを見せている。
「自分から言ったんでしょー」
「そ、そうなんだけど、これを言ったらもう妄想を見せてくれないかもと思うと、なかなか踏ん切れないというか……」
「それなら、言わなくても、もう見せないから安心して?」
そう言うと、諦めたように彼はため息をついて、私に意外なことを聞いた。
「それなら、桜ちゃん。言う前に、抱きしめてもいい?」
「えっ、えっ、もちろんいいけど、どうしたの?」
彼は、思い詰めたような表情で、ぎゅーっと私を抱きしめて、切なそうな声でこう言った。
「言わなきゃとは思ってたんだ。でももしかしたら違うかもって思ってさ。迷って、でも今日学校で確信した。だから言わなきゃいけない。でもきっと、夢の中での君の態度が変わってしまう。それが、たまらなく寂しいんだよ。無理だと思うけど、できれば夢の中では、今まで通りの桜ちゃんでいてほしい」
「う、うん? よく分からないけど、善処するね」
「ありがとう」
そう言うと、彼はゆっくりと私から離れて近くの大きな石に座った。
私も、その隣に腰掛ける。
何だろう、この緊張感は……。
「あのラムネの瓶に、ピンクのラムネを食べた相手に会えると書いてあったのは覚えてる?」
「ん? うん、そうだけど。すごいよね、毎日斉藤くんの夢が見れて」
「相手の夢が見れるとは書いてない。会えると書いてあったはずだよ」
「??? 同じことでしょ?」
そう言うと、続きの言葉を言いにくそうに逡巡しながらも、すぅと息を吸った。
一度目を閉じてから私を見ると、一息に彼は言った。
「俺は、築山さんがいつも学校で会っている、本物の斉藤優馬だ」
意味がよく分からず、じっと顔を覗き込む。
「夜ラムネを食べ、君に会い、その夢の記憶を持ったまま、君にまた学校で会っている。文字通り、会っているんだ」
「え……」
全身に冷水でも浴びせられたかのようなショックが、身体中を駆け巡った。
ぶるぶると身体が震える。
分からない。
意味を、考えたくない。
はっと今の自分の姿に気づいて、すぐに学校の制服を一瞬で身につけた。
じわりの涙が滲んで、拭こうとした手もガクガクと震え、上手くいかない。
「ご、ごめん、今まで言わなくて本当にごめん」
斉藤くんが、私の両手をぎゅっと握った。
「ごめん、反省してる。すまなかった。俺も今まで半信半疑だったのもあるけど、築山さんが可愛いくて、ずっとこのままを望んでしまったんだ」
「あ、んっと……」
言葉が出ない。
しばらくの間、私たちは手をつないだまま、じっと沈黙していた。
きっと、私が落ち着くのを待ってくれたんだと思う。
「斉藤くん、なの? 本当に?」
「ああ、本物だ」
「ここであったこと、全部忘れてほしいんだけど」
「それは無理だな」
「そこは、嘘でも頷くところじゃない?」
そう言うと、斉藤くんは私の手を握りしめたままじっと私を見て、こう言った。
「俺は、たぶん桜ちゃんが好きなんだと思う」
いきなり誰かに話しかけられた。ぼやけた人型の輪郭が、徐々にはっきりとしていく。
「でも、俺のこの格好、勇者風だよね」
今日もまた、斉藤くんの夢が見られたようだ。勇者の格好なのは、意外だ。てっきり、魔術師あたりかと思った。
「うん。勇者だよ、斉藤くん。似合うね」
「いや、似合ってないでしょ。それより、どんな妄想なの今日は。もう、この姿を見た時から、気になって気になって。頼むから教えてくれよ」
「言いたくありませーん」
「えぇー」
夢の中の斉藤くんとは、だんだんと親密度が上がってきた気がする。お互い、遠慮がなくなってきた。
「それより、私の裸には何も思わないの!?」
あまりにも視線が普通だ。女性として、たとえ夢でもちょっと凹む。
「夢のデフォルトかなって」
「えぇー」
今度は私が抗議の声をあげた。
夢ではもう、あれやこれやは諦めたほうがいいのだろうか。
「頼むよ、気になって仕方ないんだ。目の前に読みたい本があるのに、開かない気分だよ」
「そこまで……。一体、夢の中の斉藤くんは、どうしてそんなキャラに……」
「分かった。俺にも罪悪感ってものは、ある。君にずっと隠していた重大な秘密を教えるよ」
いきなり、驚くようなことを言い始めた。
「んー、夢なんだから、何言われても信憑性薄いし」
「休日に図書館に行くのも当たってただろう? 魔法のラムネなんだから、本当のことだよ」
「あぁー、確かに当たってたけど。でも、夢で秘密を知るのはズルい気もするしなぁ」
「その秘密が分かれば、俺と現実世界でも、めちゃくちゃ仲良くなれるって保証するよ」
「な……」
どうして、夢の中の斉藤くんは、こんなに私の妄想を見たがるんだろう。
「仕方ないなぁ。夢だし、まぁいいか」
秘密が知れるという誘惑には勝てない。
今まで通り、斉藤くんの頭に手をかざし、んーっと念じる。
手の平から光が発光し、満足そうに斉藤くんが笑った。
「だんだんと、君というピンクな本にはまってきた気分だよ」
「それはどうも。それで? 秘密って?」
「うっ」
自分で言い出したくせに、バツの悪そうな顔をして、悩むそぶりを見せている。
「自分から言ったんでしょー」
「そ、そうなんだけど、これを言ったらもう妄想を見せてくれないかもと思うと、なかなか踏ん切れないというか……」
「それなら、言わなくても、もう見せないから安心して?」
そう言うと、諦めたように彼はため息をついて、私に意外なことを聞いた。
「それなら、桜ちゃん。言う前に、抱きしめてもいい?」
「えっ、えっ、もちろんいいけど、どうしたの?」
彼は、思い詰めたような表情で、ぎゅーっと私を抱きしめて、切なそうな声でこう言った。
「言わなきゃとは思ってたんだ。でももしかしたら違うかもって思ってさ。迷って、でも今日学校で確信した。だから言わなきゃいけない。でもきっと、夢の中での君の態度が変わってしまう。それが、たまらなく寂しいんだよ。無理だと思うけど、できれば夢の中では、今まで通りの桜ちゃんでいてほしい」
「う、うん? よく分からないけど、善処するね」
「ありがとう」
そう言うと、彼はゆっくりと私から離れて近くの大きな石に座った。
私も、その隣に腰掛ける。
何だろう、この緊張感は……。
「あのラムネの瓶に、ピンクのラムネを食べた相手に会えると書いてあったのは覚えてる?」
「ん? うん、そうだけど。すごいよね、毎日斉藤くんの夢が見れて」
「相手の夢が見れるとは書いてない。会えると書いてあったはずだよ」
「??? 同じことでしょ?」
そう言うと、続きの言葉を言いにくそうに逡巡しながらも、すぅと息を吸った。
一度目を閉じてから私を見ると、一息に彼は言った。
「俺は、築山さんがいつも学校で会っている、本物の斉藤優馬だ」
意味がよく分からず、じっと顔を覗き込む。
「夜ラムネを食べ、君に会い、その夢の記憶を持ったまま、君にまた学校で会っている。文字通り、会っているんだ」
「え……」
全身に冷水でも浴びせられたかのようなショックが、身体中を駆け巡った。
ぶるぶると身体が震える。
分からない。
意味を、考えたくない。
はっと今の自分の姿に気づいて、すぐに学校の制服を一瞬で身につけた。
じわりの涙が滲んで、拭こうとした手もガクガクと震え、上手くいかない。
「ご、ごめん、今まで言わなくて本当にごめん」
斉藤くんが、私の両手をぎゅっと握った。
「ごめん、反省してる。すまなかった。俺も今まで半信半疑だったのもあるけど、築山さんが可愛いくて、ずっとこのままを望んでしまったんだ」
「あ、んっと……」
言葉が出ない。
しばらくの間、私たちは手をつないだまま、じっと沈黙していた。
きっと、私が落ち着くのを待ってくれたんだと思う。
「斉藤くん、なの? 本当に?」
「ああ、本物だ」
「ここであったこと、全部忘れてほしいんだけど」
「それは無理だな」
「そこは、嘘でも頷くところじゃない?」
そう言うと、斉藤くんは私の手を握りしめたままじっと私を見て、こう言った。
「俺は、たぶん桜ちゃんが好きなんだと思う」
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