純愛夢見エロス 〜夢の中で、ヤりましょう〜

10.観念

　まずは、打ち明けていたわけじゃないことを言わないと。

「ま、待って、待って。私、楓に何か言ったことはないんだけど、思うところあった？　私、何かおかしかった？」

　テンパってしまって、少し問い詰めるような言い方になってしまったかもしれない。
　聞きながら反省する。

「おかしいかって聞かれると、いつもおかしいでしょ。桜の家の部屋とか、おかしいとしか言いようが……」
「ま、まぁそこはそうかもしれないけど」
「かもじゃなくて、絶対おかしい」
「えぇぇ。部屋は100歩譲っておかしくても、私自身はおかしくないような」

　なぜか、違う方へ話が進んでいく。
　私の様子を見て、あえてそうしたのかもしれない。

「ふっぅぅぅん？」

　麻衣が私と楓の会話をぶった斬るようにそう言って、にこっと笑った。

「今日は、沙月も顧問の出張で部活が運良くなくなったことだし、4人で帰れるもんね。帰りに詳しく聞こっかな！　こんな場所じゃ、話しにくいこともあるだろうし？」

　確かに、隣でかたまって食べている女子グループが、妙に静かだ。意味ありげにチラチラとこちらをたまに見るところ、今の会話の意味を推測していそうだ。

「今までの会話全て、忘れてくれないかな……」
「とりあえず、桜の部屋の話でも聞こっかな！　そっちも気になる気になる、今度遊びに行かせてー」

　ねだる麻衣に、沙月も同意した。

「私も気になるな。ぽやーっとしているのにやたら頭がいい桜の部屋が、そんなにおかしいのか」
「部屋がおかしいのは否定しないけど、頭はそんなにいいわけじゃないって」
「4月の実力テストで、90点以上の生徒は誰々だーっとか先生が発表する時、ほとんどの科目で名前呼ばれてたじゃないか。一発目のアレで、頭いいキャラって固定されたと思うけど」
「短期の暗記が得意なだけ。中学の時は、楓のが成績よかったし」
「そうなんだ」

　沙月と麻衣の顔が、楓へ向く。
　楓はゴホン、とわざとらしく咳払いをして、こう言った。

「中学3年生になってすぐから、桜の伸びがすごかったよね。みーんな受験に向けて頑張るから、普通は頑張ってもそうそう成績は上がらないのに」

　そうなのかーという顔をする2人に、楓はうんうんと頷きつつ、ゴミをしっかりとビニール袋にまとめてこう言った。

「どんな動機があれば、突然あんなに努力できるのか、教えてほしいわね」
「ぐっ」

　口に入っていた、お弁当のゆかりご飯を丸飲みしてしまった。
　慌てて、お茶をぐいぐい飲む。
　楓は、そんな私を見て、満面の笑みで手の甲に顎を乗せて、こう聞いた。

「なんで、だったの？」

　いい顔でこちらを見る楓に、このやろうと言いたくなる。
　観念した方がいいのかもしれない。

「楓のことが大好きで、同じ高校に行きたかったからかもしれないよ？」

　嘘っぽく聞こえることを分かっていて、そう言う。

「へーぇ、私と？　それなら光栄」
「わ、私の部屋の話でも、しましょうか……」

　負けた気分で、話をかえた。