純愛夢見エロス 〜夢の中で、ヤりましょう〜

秋風いろは

文字の大きさ
上 下
15 / 52

9.友達

しおりを挟む
 12時40分、体育の時間の後の昼食の時間になった。
 友達の近くの机をいつも通り借りて、ガタガタとくっつける。4人のいつものメンツが、いつもの場所に座った。

「持久走の後に昼食って、吐き気もするし最悪だと思うー」

 友達の貝塚麻衣が口をとんがらせて言った。変な顔をしていても、可愛い。ツインテールが似合う小柄な女の子で、実は違うクラスに彼氏がいる。

「でも、お昼の後の体育よりはマシじゃない?」

 私がそう言うと、隣に座る古谷沙月がうんうんと頷いた。

「さすがの私でも昼食べた後は横っ腹痛くなるしな、昼前は慌ただしくて嫌いだけど、まだマシだ。それにしても、吐き気がするほど頑張らなくてもいいんじゃないか?」
「沙月はバレー部で鍛えてるから、手を抜いても速いんだよ。私は頑張らないと、ドベだよ。ドベちん!」

 麻衣が恨めしそうに、沙月に文句を言う。
 沙月は高身長でスラっとしていて、何でもそつなくこなすタイプだ。短髪のカッコいい女子で、持久走の後なのに爽やかだ。
 多少手を抜いていたからこその、余裕のある爽やかさだったのか……。

 コンビニのパンの袋を開けようとしていた目の前の柚木楓が、手を止めて麻衣を睨んだ。

「麻衣ー、ドベちんの私の前で、よくそんなことが言えるわね」

 癖っ毛の楓の髪が、汗のせいか風のせいか、ぐりんぐりんになっている。ワンちゃんにするように、ぐしゃぐしゃーっと撫でたくてうずうずする。

「ごめん、ごめん。楓、疲れたら悠々と歩いてるし、気にしてるとは思わなくて」
「うん、私もある意味カッコいいなって思ってたよ」

 麻衣に続けて私もそう言うと、楓がぎゅっと顔をしかめた。

「無理はしない主義だし、それでいいって思ってるけど、ドベちんって言われると気分悪い!」

 そこまで言った後に、得意げに人差し指を立てて、こう続けた。

「でも直す気もない。人間とはそういうものよ」

 楓らしい。沙月と比べて、楓は運動全般が苦手だ。でも卑屈にはならず、我が道を進む楓を羨ましいとすら思う。私や麻衣はほとんど手を抜かず、それでも真ん中周辺だ。

「ところで、桜に聞きたいことがあるんだけど」

 むっふっふという含み笑いをしながら麻衣に聞かれた。嫌な予感しかしない。

「きょ、拒否権を発動します!」
「まだ、何も聞いてなーい!」

 どうしたどうしたといった顔で、楓と沙月がこちらを見る。

「昨日、私たちと一緒に帰るはずだったところを、図書室に寄りたいからって断ったわよね」
「う、うん。そうね」

 何も悪いことはしていないのに、冷や汗が出る。

 私たち、とは麻衣と楓のことだ。沙月はバレー部があって、週一の休み以外は一緒に帰らない。
 高校の近所に住んでいる帰宅部の麻衣とは坂の下まで一緒で、幼馴染の楓とは同じ美術部所属でもあり、自宅も近いから電車も一緒だ。
 駄菓子屋さんに寄った日は、たまたま楓が乗り換え駅近くのゲーム屋さんに行くと言うので、興味のない私とは別行動だった。

「その、昨日のたった1日でね」

 言いながら、麻衣は自分の机の中から筆箱を取り出し、鉛筆で薄く『Sくん』と書いた。

「仲良く、なってない?」

 目ざとい。彼氏持ちは洞察力が違うのだろうか。

「そ、そうかな。気のせいじゃない?」

 引きつった笑顔で否定するも、沙月が小声で「だれ、だれ? エス……」と言いながらクラスを見渡し始めた。
 王子キャラなのに、恋愛ごとはやっぱり気になるらしい。

「よかったじゃない」

 ちらりとも周りを見渡さず、楓が言った。

「ぇ」

 今までの会話の中で一番ドクンと心臓が鳴った。
 気づかれていた?
 もしかして、中学生の時から?

「なになに? もしかして『そう』、なの?」

 麻衣が身を乗り出して聞くも、楓はちらりと私を見て、おにぎりの袋を開けながら素知らぬ顔で言った。

「さぁ。ただ、よかったねって思っただけ」

 シーン。

 4人の間に静寂が訪れる。
 楓のおにぎりを頬張るもぐもぐ音だけが続いて、誰も言葉を発しない。
 まずい。まだ同じクラスになって1ヶ月程度だ。私が楓にだけ内緒で昔から相談していたとか思われちゃう。
 何とかしなくては。

 私は焦りながら、次の言葉を探した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...