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第2話
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次の日の朝。目が覚めると、部屋の隅には昨日の医務官が座っていた。
「やあ、おはよう。って、もうすぐ昼だけどね。何か食べられそう?」
私が小さく頷くと、一度部屋から出て粥の様なものを持ってきた。米を更に潰したのかドロドロしている。ほとんど動けない私は、食べさせて貰うよりなかった。
「すみません」
顔を赤らめながら、ルークが口に運んでくれる粥を食べる。
「気にすることはないよ。それより、昨日カーテンを開けたのはアメリア様かな?」
「はい。魔力は、問題ないみたいです」
「そうか。日常生活的な事は、怪我が治ったら大丈夫そうだね」
「ええ」
距離が近くて恥ずかしくなり、俯いてしまう。いくら何でも近すぎではないだろうか? ルークは俯いている私を見ると、苦笑しながら午後に国王が訪ねて来ると教えてくれた。
「私に会いに来るのですか?」
「『まだ、そんな状態ではない』って、言ったんだけどね‥‥‥どうしても顔が見たいと陛下が仰ったんだよ」
「‥‥‥私、覚えてません」
「そうだろう。ただ、お見舞いに来て顔を見るだけだと思うし、そんなに気負わなくても大丈夫だよ」
「私は、王の‥‥‥陛下の婚約者候補だったのですか?」
「うん‥‥‥今も候補だよ。あ‥‥‥えっと、言いづらいんだけど、候補といってもたくさんいてね。そのうちの1人だったんだ。爵位の順番でいくと、候補としては4番目くらいだったかな?」
婚約者候補だったのに、何故私は戦争へ行ったのだろうか? 分からないことだらけだ。
「やはり、会わなければなりませんか? 知らない人に、この顔や身体の傷を見せなければならないのは、恥ずかしい‥‥‥です」
やっとの思いでそう言うと、ルークは私の手を取って頷いた。
「大丈夫。ちゃんと断ってくるよ‥‥‥そうか、そうだよね。その調子だと僕の事も覚えてないみたいだね」
「‥‥‥すみません」
「いや、謝らなくていいよ。僕は、君の幼なじみのルーク・ヴァイオレット。ヴァイオレット伯爵家の跡取り息子だよ。小さい頃、一緒に木登りして遊んだ仲だから、そんなに気を使わなくても大丈夫」
「ありがとう‥‥‥ございます」
「ちょっと待ってて。陛下に伝えてくるから」
そう言って、ルークは部屋から出ていった。
「やあ、おはよう。って、もうすぐ昼だけどね。何か食べられそう?」
私が小さく頷くと、一度部屋から出て粥の様なものを持ってきた。米を更に潰したのかドロドロしている。ほとんど動けない私は、食べさせて貰うよりなかった。
「すみません」
顔を赤らめながら、ルークが口に運んでくれる粥を食べる。
「気にすることはないよ。それより、昨日カーテンを開けたのはアメリア様かな?」
「はい。魔力は、問題ないみたいです」
「そうか。日常生活的な事は、怪我が治ったら大丈夫そうだね」
「ええ」
距離が近くて恥ずかしくなり、俯いてしまう。いくら何でも近すぎではないだろうか? ルークは俯いている私を見ると、苦笑しながら午後に国王が訪ねて来ると教えてくれた。
「私に会いに来るのですか?」
「『まだ、そんな状態ではない』って、言ったんだけどね‥‥‥どうしても顔が見たいと陛下が仰ったんだよ」
「‥‥‥私、覚えてません」
「そうだろう。ただ、お見舞いに来て顔を見るだけだと思うし、そんなに気負わなくても大丈夫だよ」
「私は、王の‥‥‥陛下の婚約者候補だったのですか?」
「うん‥‥‥今も候補だよ。あ‥‥‥えっと、言いづらいんだけど、候補といってもたくさんいてね。そのうちの1人だったんだ。爵位の順番でいくと、候補としては4番目くらいだったかな?」
婚約者候補だったのに、何故私は戦争へ行ったのだろうか? 分からないことだらけだ。
「やはり、会わなければなりませんか? 知らない人に、この顔や身体の傷を見せなければならないのは、恥ずかしい‥‥‥です」
やっとの思いでそう言うと、ルークは私の手を取って頷いた。
「大丈夫。ちゃんと断ってくるよ‥‥‥そうか、そうだよね。その調子だと僕の事も覚えてないみたいだね」
「‥‥‥すみません」
「いや、謝らなくていいよ。僕は、君の幼なじみのルーク・ヴァイオレット。ヴァイオレット伯爵家の跡取り息子だよ。小さい頃、一緒に木登りして遊んだ仲だから、そんなに気を使わなくても大丈夫」
「ありがとう‥‥‥ございます」
「ちょっと待ってて。陛下に伝えてくるから」
そう言って、ルークは部屋から出ていった。
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