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ジーク視点 見つけた
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「フォード家が盗賊たちに殺害された」
一瞬、父上から何を言われたのかわからなかった。驚きに包まれ、皆が固まる中、一番最初に戻ったのは母上だった。
「フォード家ということは、子爵だけでなく、アイリスやアリシアもですか?」
「アイリス様は残念ながら、だが、アリシア嬢は見逃されたらしく、傷一つなかったようだ」
良かった、というべきなのだろうか。俺はアイリスが生きていてくれるだけで嬉しいが、彼女は目の前で、両親が殺されていた可能性がある。彼女が受けたショックは想像を絶するものだろう。
「とりあえず、今はフォード家の元長男がいるらしいから、挨拶に行く。…ジーク、お前も来るか?」
「行く」
今すぐに彼女に会いたい。そんな期待を胸に、父上とともにフォード家に向かったが、俺の期待は打ち砕かれた。出て来たのはフォード子爵とは似ても似つかない、知性も感じないような人物だった。
「誰だ、お前たちは?」
「シルバー商会と言えばお分かりになるでしょうか。以前、フォード子爵にお世話になっており、今回の悲報を受け、駆けつけた次第です。ところで、アリシア嬢はお元気でしょうか?」
「商人ごときが偉そうに、あの娘なら家を出ていった。もうここにはいない。次に来るなら、高価なものでも献上してから来い!俺は忙しいんだ!」
俺たちは門前払いを受けた。アリシア嬢が出ていった?ありえない。ここは彼女の家だ。出て行くというのはおかしな話だ。たぶん、あいつに追い出されたんだ。
「…父上」
「…わかってる。アリシア嬢を捜索するぞ」
父上は今まで聞いたことのない、静かな声で言った。俺もそれに頷く。たぶん、この国からは出てはいないだろう。すぐに帰って、探す準備をしないと…
「お待ちください!」
屋敷の奥から、メイドが出てくる。少し警戒しながら対応をする。
「お嬢様はスラム街の方に捨てられた可能性があります。私たちはあの者達からあまり離れることができず、少人数で捜索して、残念ながらまだ発見できていません。申し訳ありませんが、お嬢様をよろしくお願いいたします」
「…あなた達は何を?」
「…あの者たちの不正の数々を探しております。旦那様や奥様が亡くなったタイミングと、来た時がおかしいのです」
「わかりました。アリシア嬢のことは任せてください」
探し始めてから3日間が経つが、まだ彼女は見つけることができていない。
「ジーク、今日も行くのか?」
「雨が降っています。気をつけるのですよ」
俺はうなずいて、家を出る。俺の服装はスラムでは目立つため、金を欲しがる奴が群がってくるが、構ってはいられない。
雨の中走り回り、スラムでは絶対に見ない、赤いドレスを着た少女を見つける。あれは俺が彼女に見繕ったドレスである。見間違えるはずがない。
見つけた!
だから、俺は彼女が怯えないように近づき、声をかける。
「大丈夫?」
一瞬、父上から何を言われたのかわからなかった。驚きに包まれ、皆が固まる中、一番最初に戻ったのは母上だった。
「フォード家ということは、子爵だけでなく、アイリスやアリシアもですか?」
「アイリス様は残念ながら、だが、アリシア嬢は見逃されたらしく、傷一つなかったようだ」
良かった、というべきなのだろうか。俺はアイリスが生きていてくれるだけで嬉しいが、彼女は目の前で、両親が殺されていた可能性がある。彼女が受けたショックは想像を絶するものだろう。
「とりあえず、今はフォード家の元長男がいるらしいから、挨拶に行く。…ジーク、お前も来るか?」
「行く」
今すぐに彼女に会いたい。そんな期待を胸に、父上とともにフォード家に向かったが、俺の期待は打ち砕かれた。出て来たのはフォード子爵とは似ても似つかない、知性も感じないような人物だった。
「誰だ、お前たちは?」
「シルバー商会と言えばお分かりになるでしょうか。以前、フォード子爵にお世話になっており、今回の悲報を受け、駆けつけた次第です。ところで、アリシア嬢はお元気でしょうか?」
「商人ごときが偉そうに、あの娘なら家を出ていった。もうここにはいない。次に来るなら、高価なものでも献上してから来い!俺は忙しいんだ!」
俺たちは門前払いを受けた。アリシア嬢が出ていった?ありえない。ここは彼女の家だ。出て行くというのはおかしな話だ。たぶん、あいつに追い出されたんだ。
「…父上」
「…わかってる。アリシア嬢を捜索するぞ」
父上は今まで聞いたことのない、静かな声で言った。俺もそれに頷く。たぶん、この国からは出てはいないだろう。すぐに帰って、探す準備をしないと…
「お待ちください!」
屋敷の奥から、メイドが出てくる。少し警戒しながら対応をする。
「お嬢様はスラム街の方に捨てられた可能性があります。私たちはあの者達からあまり離れることができず、少人数で捜索して、残念ながらまだ発見できていません。申し訳ありませんが、お嬢様をよろしくお願いいたします」
「…あなた達は何を?」
「…あの者たちの不正の数々を探しております。旦那様や奥様が亡くなったタイミングと、来た時がおかしいのです」
「わかりました。アリシア嬢のことは任せてください」
探し始めてから3日間が経つが、まだ彼女は見つけることができていない。
「ジーク、今日も行くのか?」
「雨が降っています。気をつけるのですよ」
俺はうなずいて、家を出る。俺の服装はスラムでは目立つため、金を欲しがる奴が群がってくるが、構ってはいられない。
雨の中走り回り、スラムでは絶対に見ない、赤いドレスを着た少女を見つける。あれは俺が彼女に見繕ったドレスである。見間違えるはずがない。
見つけた!
だから、俺は彼女が怯えないように近づき、声をかける。
「大丈夫?」
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