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嫌な想像
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Side:クリスティーナ
リリアの勇士を見届けたクリスティーナは学園の校門付近に停めていた馬車に乗り込む。
「どうだった?」
「ロイの言う通り何も心配なかった」
「そうか。よかったな」
「うん!」
今日の出来事はゲームの強制イベントだった。クリスティーナは第一王子に勉強させるために賢い人が好きだと言った。それに対して第一王子はある約束をする。その内容は必ず50位以内に入ることだった。
第一王子が順調に勉強をしていれば何も起こらず、クリスティーナとお祝いをする。しかし、圧倒的に知力が足りていなかった場合、教師を買収しテストの改ざんを行った。そのことに気づいたリリアがその行為を止めさせ、なぜかリリアが悪者扱いされる。そんなストーリーだった。
確かあの時のクリスティーナのセリフは「お姉様っ!確かに殿下は悪い事をしました。ですが、一度だけで殿下を悪いように言わないであげてください!」だったような気がする。
確かにクリスティーナからすればアレの努力を見てきたのでしょう。けれど、悪いことで済まされるレベルでない事をもっと理解するべきだった。
――今回、私はアレとは約束していない。だからイベントが起こっているか気になっていたけど……
ロイには護衛を、アインには無茶を言って学園に入らせてもらった。そこで見た現実でイベントと同じように駄々をこねているアレは酷く滑稽に思ってしまった。それに……
「ぷっ」
「どうした?」
「あそこで面白い光景があったの」
私がお姉様にしたアドバイス。自分が上だと思うと調子に乗ること。そのことを伝えたお姉様は私には思いつかない誘導をしていた。
「まさか自分の悪事を言うように命令させるなんて……さすがお姉様!」
「……そんなこと本当にできるのか?」
「相手がアレだったからというのもあるとは思うよ。思うけど、あえて主語を抜いたりしてまるで自白ショーだったの!」
まだ半信半疑のロイ。私も実際に見ていなかったり、ゲームでアレの本質を知らなかったら信じられないと思う。
「……それより、ローズ様が第一王子の剣を持って不思議そうにしていたってのは本当?」
「うん。その後、騎士の人とコソコソ何か話してたし、その時に騎士の人も剣を触ってたから何かおかしかったんじゃないかな?」
「……そうか」
今度は考え込むようにするロイ。たぶん何か知っている。
「何か知ってるの?」
「……いや、だが第一王子に真剣を持たせるのはどうなのかという話題が上がっていたのは事実だ。だが護衛を増やすわけでもなく、武器を弱くするとは考えられな……! ティア!」
気づかれた。けどあくまでもアレは第一王子。慕っている人は誰もいないけれど、居なくなるのは困るみたい。
「でも気づかないものなの? お姉様なんて見ただけで気づいていたみたいだし……持っていたら気づくんじゃ……?」
「……確かに……いや、それでは……。ごめん話はここまでにしよう。これは俺たちだけで終わる話ではなさそうだ。わかったな?」
「そんなに釘を刺さなくても……それに、アインがいても?」
「殿下がいても……だ」
「……わかった」
アインなら良いけど、ロイを困らせたいわけじゃない。だから大人しく返事をする。
だけど、剣を持った時に気が付かない? それってつまり最初から替えられていなかったってこと? それができるのって……。
嫌な想像をしてしまう。本当だ。私たちでは手が負えないかも……。
ロイの忠告通り私は大人しくしようと思う。私に何かできるとも思わないし、以前の事を考えると、関わろうとする事で面倒な奴に関わってしまう気がする。
正直、アレに何かあれば良い事づくめなのではないかとさえ思ってしまう。言わないけど……
「……第一王子に何かあれば、それこそ良い事づくめじゃない」
「どうしてそれを!? もしかして口に出してた!?」
慌てながら口に手を当てるクリスティーナに、ロイは思わず笑顔を浮かべる。
「どっち!? ねえ、私言ってた? 言ってたよね!」
「言ってないよ。ただそう思ってそうだな~って顔をしてただけ」
「それなら……、それも良くないよ! どんな顔?」
「秘密……かな?」
「なっ!? 教えてよ!」
珍しく、クリスティーナの言うことを聞かないロイに、口では怒りながらもクリスティーナも楽しんでいた。
そんな2人のやりとりは、ローズ家の屋敷に着くまで続けられた。
リリアの勇士を見届けたクリスティーナは学園の校門付近に停めていた馬車に乗り込む。
「どうだった?」
「ロイの言う通り何も心配なかった」
「そうか。よかったな」
「うん!」
今日の出来事はゲームの強制イベントだった。クリスティーナは第一王子に勉強させるために賢い人が好きだと言った。それに対して第一王子はある約束をする。その内容は必ず50位以内に入ることだった。
第一王子が順調に勉強をしていれば何も起こらず、クリスティーナとお祝いをする。しかし、圧倒的に知力が足りていなかった場合、教師を買収しテストの改ざんを行った。そのことに気づいたリリアがその行為を止めさせ、なぜかリリアが悪者扱いされる。そんなストーリーだった。
確かあの時のクリスティーナのセリフは「お姉様っ!確かに殿下は悪い事をしました。ですが、一度だけで殿下を悪いように言わないであげてください!」だったような気がする。
確かにクリスティーナからすればアレの努力を見てきたのでしょう。けれど、悪いことで済まされるレベルでない事をもっと理解するべきだった。
――今回、私はアレとは約束していない。だからイベントが起こっているか気になっていたけど……
ロイには護衛を、アインには無茶を言って学園に入らせてもらった。そこで見た現実でイベントと同じように駄々をこねているアレは酷く滑稽に思ってしまった。それに……
「ぷっ」
「どうした?」
「あそこで面白い光景があったの」
私がお姉様にしたアドバイス。自分が上だと思うと調子に乗ること。そのことを伝えたお姉様は私には思いつかない誘導をしていた。
「まさか自分の悪事を言うように命令させるなんて……さすがお姉様!」
「……そんなこと本当にできるのか?」
「相手がアレだったからというのもあるとは思うよ。思うけど、あえて主語を抜いたりしてまるで自白ショーだったの!」
まだ半信半疑のロイ。私も実際に見ていなかったり、ゲームでアレの本質を知らなかったら信じられないと思う。
「……それより、ローズ様が第一王子の剣を持って不思議そうにしていたってのは本当?」
「うん。その後、騎士の人とコソコソ何か話してたし、その時に騎士の人も剣を触ってたから何かおかしかったんじゃないかな?」
「……そうか」
今度は考え込むようにするロイ。たぶん何か知っている。
「何か知ってるの?」
「……いや、だが第一王子に真剣を持たせるのはどうなのかという話題が上がっていたのは事実だ。だが護衛を増やすわけでもなく、武器を弱くするとは考えられな……! ティア!」
気づかれた。けどあくまでもアレは第一王子。慕っている人は誰もいないけれど、居なくなるのは困るみたい。
「でも気づかないものなの? お姉様なんて見ただけで気づいていたみたいだし……持っていたら気づくんじゃ……?」
「……確かに……いや、それでは……。ごめん話はここまでにしよう。これは俺たちだけで終わる話ではなさそうだ。わかったな?」
「そんなに釘を刺さなくても……それに、アインがいても?」
「殿下がいても……だ」
「……わかった」
アインなら良いけど、ロイを困らせたいわけじゃない。だから大人しく返事をする。
だけど、剣を持った時に気が付かない? それってつまり最初から替えられていなかったってこと? それができるのって……。
嫌な想像をしてしまう。本当だ。私たちでは手が負えないかも……。
ロイの忠告通り私は大人しくしようと思う。私に何かできるとも思わないし、以前の事を考えると、関わろうとする事で面倒な奴に関わってしまう気がする。
正直、アレに何かあれば良い事づくめなのではないかとさえ思ってしまう。言わないけど……
「……第一王子に何かあれば、それこそ良い事づくめじゃない」
「どうしてそれを!? もしかして口に出してた!?」
慌てながら口に手を当てるクリスティーナに、ロイは思わず笑顔を浮かべる。
「どっち!? ねえ、私言ってた? 言ってたよね!」
「言ってないよ。ただそう思ってそうだな~って顔をしてただけ」
「それなら……、それも良くないよ! どんな顔?」
「秘密……かな?」
「なっ!? 教えてよ!」
珍しく、クリスティーナの言うことを聞かないロイに、口では怒りながらもクリスティーナも楽しんでいた。
そんな2人のやりとりは、ローズ家の屋敷に着くまで続けられた。
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