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勘違いの原因は
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恥ずかしい話だが、あの時の笑顔はなんだったのか気になってしまい、アイリスに俺が勘違いしたルーカスとのやり取りを聞いてみた事がある。
すると彼女は苦笑いしながら、ポツリポツリと答えてくれた。
「あの日はアイン様が城下町へ視察に行くと聞きまして……その……なんでもない日にアイン様に会えると思うとなんだか嬉しくなりまして……」
チラリチラリと俺の様子を伺うように話し始めるアイリス。今更俺に引かれると思っているのだろうか? 俺は既にその様子に惹かれているというのに。
そんな俺の心情を知ってか知らずか、話してもらった内容は単純だった。
・俺に会えるかもと思って急いで町に出る。
・ただあまりにも嬉しすぎて、いつもより表情が緩んでいた。
・そんな時に偶然ルーカスがやって来た。
・護衛もいなかったため、馬鹿が単独行動していると思い、そろそろ俺が来るのではないかと直ぐに推測。
・馬鹿を邪険に扱っている様子を見られたら嫌われてしまうのではないかと思い、仕方なしに対応。
・それを俺に見られてしまった。
「――という事であっているのか?」
「はい。その通りです」
「……一ついいか?」
「? はい。構いませんよ?」
「アイリスは俺がそんな理由で嫌うと思っていたのか?」
ニヤけているのを見られたら嫌われるであったり、弟を邪険にしているのを見られたら嫌われるであったり。いや、後者はなんとなくわかるが。
「アイン様は可愛いと言われるのがお嫌いですよね」
「あ、ああ。だが、それが一体……」
「どちらかといえば、弟のようになりたいとずっと思っていましたよね?」
「それは……そうだな」
低い身長、女性のような白い肌、肉付きの悪い身体。そして何よりも母に似た顔のせいで、服装によっては女性と間違えられる。いや、男物の服を着ていたとしても間違えられる。だからこそ、パッと見でもわかる男らしいルーカスに憧れていた。
「アイン様が少なからず目指している人を悪く言っているのですよ。嫌な女だと思いませんか?」
「………………思う……かもしれない」
「そのかもしれない。が、ずっと怖かったのです」
これは俺が原因だな。このすれ違いは俺がアイリスに自分の気持ちを素直に伝えていなかったからだ。
「アイリス、すまな……!」
謝ろうとしたところ、アイリスが人差し指を俺の唇に当てる。
「謝らないでください。私は今、幸せなのですから」
「……ああ、そうだな」
俺はこれからもアイリスと共に歩み続ける。
「では、これを着て視察に行くとしましょう!」
アイリスがどこからともなく出して来たのは、今アイリスが着ているのと同じ色……いや、デザインも全く同じドレスだった。
「ア、アイリス……」
俺の引き攣った顔とはまったく正反対のニッコリとした笑顔で俺に詰め寄ってくるアイリス。すかさず逃げようとするが、後ろからマリーに捕まれた。
「おいっマリー! お前の主人は俺だろう! なぜ俺を捕まえる!」
「私は専属は殿下ですが、主人は殿下ではありませんので。だからじっとしていてください」
しれっと服を脱がされ、ドレスを着せられる。アイリスの前で……
「いつまでしょげているんですか?」
「誰のせいだと思っているんだ!」
「元気そうですね。アイリスお嬢様、準備が整いました」
「ふふっ、ありがとう、マリー。ではいきましょうかアイン様」
アイリスと共に馬車に乗り込み、目的の場所へと向かう。アイリスが楽しそうにしているのはいいが、俺の心の奥底に不安が生じていた。
――俺はこれからもアイリスと共に歩み続けれるのか……?
俺の不安とは関係なく、馬車は進み続ける。その間、俺とアイリスの手は繋いだまま離れる事はなかった。
すると彼女は苦笑いしながら、ポツリポツリと答えてくれた。
「あの日はアイン様が城下町へ視察に行くと聞きまして……その……なんでもない日にアイン様に会えると思うとなんだか嬉しくなりまして……」
チラリチラリと俺の様子を伺うように話し始めるアイリス。今更俺に引かれると思っているのだろうか? 俺は既にその様子に惹かれているというのに。
そんな俺の心情を知ってか知らずか、話してもらった内容は単純だった。
・俺に会えるかもと思って急いで町に出る。
・ただあまりにも嬉しすぎて、いつもより表情が緩んでいた。
・そんな時に偶然ルーカスがやって来た。
・護衛もいなかったため、馬鹿が単独行動していると思い、そろそろ俺が来るのではないかと直ぐに推測。
・馬鹿を邪険に扱っている様子を見られたら嫌われてしまうのではないかと思い、仕方なしに対応。
・それを俺に見られてしまった。
「――という事であっているのか?」
「はい。その通りです」
「……一ついいか?」
「? はい。構いませんよ?」
「アイリスは俺がそんな理由で嫌うと思っていたのか?」
ニヤけているのを見られたら嫌われるであったり、弟を邪険にしているのを見られたら嫌われるであったり。いや、後者はなんとなくわかるが。
「アイン様は可愛いと言われるのがお嫌いですよね」
「あ、ああ。だが、それが一体……」
「どちらかといえば、弟のようになりたいとずっと思っていましたよね?」
「それは……そうだな」
低い身長、女性のような白い肌、肉付きの悪い身体。そして何よりも母に似た顔のせいで、服装によっては女性と間違えられる。いや、男物の服を着ていたとしても間違えられる。だからこそ、パッと見でもわかる男らしいルーカスに憧れていた。
「アイン様が少なからず目指している人を悪く言っているのですよ。嫌な女だと思いませんか?」
「………………思う……かもしれない」
「そのかもしれない。が、ずっと怖かったのです」
これは俺が原因だな。このすれ違いは俺がアイリスに自分の気持ちを素直に伝えていなかったからだ。
「アイリス、すまな……!」
謝ろうとしたところ、アイリスが人差し指を俺の唇に当てる。
「謝らないでください。私は今、幸せなのですから」
「……ああ、そうだな」
俺はこれからもアイリスと共に歩み続ける。
「では、これを着て視察に行くとしましょう!」
アイリスがどこからともなく出して来たのは、今アイリスが着ているのと同じ色……いや、デザインも全く同じドレスだった。
「ア、アイリス……」
俺の引き攣った顔とはまったく正反対のニッコリとした笑顔で俺に詰め寄ってくるアイリス。すかさず逃げようとするが、後ろからマリーに捕まれた。
「おいっマリー! お前の主人は俺だろう! なぜ俺を捕まえる!」
「私は専属は殿下ですが、主人は殿下ではありませんので。だからじっとしていてください」
しれっと服を脱がされ、ドレスを着せられる。アイリスの前で……
「いつまでしょげているんですか?」
「誰のせいだと思っているんだ!」
「元気そうですね。アイリスお嬢様、準備が整いました」
「ふふっ、ありがとう、マリー。ではいきましょうかアイン様」
アイリスと共に馬車に乗り込み、目的の場所へと向かう。アイリスが楽しそうにしているのはいいが、俺の心の奥底に不安が生じていた。
――俺はこれからもアイリスと共に歩み続けれるのか……?
俺の不安とは関係なく、馬車は進み続ける。その間、俺とアイリスの手は繋いだまま離れる事はなかった。
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