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父と母
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父たちを閉じ込めている部屋へと案内してくれるジャンの後を追う。だけど、止まったのはお姉様の部屋にされそうな押し入れだった。
もしかして、ここ?お姉様を閉じ込めようとしていた部屋に閉じ込められるなんて、皮肉なものね。だけど、この部屋では…
「手足を縛ってあるので、内側から開けられることはありません。それに、開けられたとしても、自分たちが見張っていますので問題ありません」
私の疑問に答えるように、扉の前に立っていた二人の騎士の内、一人が声をかけてくる。でもこの人、団長さんなんじゃ…
「あの時は失礼しました。私はジャン団長から指名され、団長をしております、アルフレッドと申します。以後お見知り置きを」
「私はアリシアと申します。覚えておく必要はありませんが、よろしくお願いしますね」
「…アリシア様、こちらにはどのような御用件で?後ろにも大勢ついて来ているみたいですが…?」
「少し、両親と話したい事があって、扉の前からでも良いから少しだけ時間をくださらない?」
アルフレッドはちらっとジャンのことを見て、ため息をつく。彼はそのまま持ち場に戻る。良いってことかしら?
「どうぞ。ですが、不審な動きをしたら…」
「分かっているわ。ありがとう」
ふぅ。息を少し吐き、扉にそっと手をつける。
「お父さん、お母さん、ここにいるの?」
「おお、シアか! 無事か!?」
「シア? シアなの!?」
「ええ、無事…ではないわ。今も囲まれているもの」
嘘は言っていない。ただ、多くの人に見守られているだけですけど。
「…そうか」
「ねぇ、お父さん。捕まった経緯は聞いたわ。どうして、部屋に入ろうとしたの?」
「…それは」
「それは、お姉様、シェリア・アースベルトを殺そうとしたから。その理由は、お姉様が唯一、前アースベルト侯爵の血を継いでいて、お父さんの血は必要なんてないから。お姉様がいる限り、お父さんがこの家を継ぐことはできないから。違う?」
「なっ!?」
何を今更驚いているのだろうか。本当に私が何も知らないとでも思っているのか。
「ねぇ、お母さん、一つ、聞きたいことがあるの…」
「な、何かしら?」
何をそんなに怯えているのかわからない。人を殺すことに怯えなくて、どうして娘に怯えるのでしょうか?
「私にどうして、字を教えてくれなかったの?お母さんが字をかけるなんて、私、知らなかった」
「ど、どうしてそれを」
「教えて? それとも、言えない? 私が字を読めることで不都合なことがある?あるよね。だって、あんなにいっぱい家にお父さんを応援している紙があるんだもの。お父さんが何をしようとしているかを知った上で…。私に読まれることを嫌がったのでしょう?」
「シア、違うの! 私とオスカー様は本当に愛し合っていたの。なのに、あの女が! あの女が無理矢理私たちを引き裂こうとしてきたの!」
「それはアーシャ先生のせいではなく、お父さんの家の問題でしょう。駆け落ちでもなんでもすればよかったじゃない!それに、アーシャ先生を殺して、お姉様を殺そうとして、愛してるとか言いながら未だ貴族に拘っているんでしょう! そうじゃなきゃ、あの生活で満足しているはずなんだもの…私はあの時が一番幸せだったのに!」
アーシャ先生だって、父との婚約なんて望んでいなかったはずなのに、どうして、この人たちは自分たちを被害者だと言うの?
「違うんだ、シア! 俺はただ、三人で幸せに「それなら、どうしてこの家を乗っ取ろうとしているんですか?」それは…」
「もう良いです。お父さんがアーシャ先生をニール草で毒殺したのでしょう?」
「…どうしてそれを、まさか! 家に行ったのか!?」
やはり、家に置いてあったのはニール草だったのですね…結果を待たずとも話してくれましたが、結果もすぐ出るでしょう。
「早くて明日、あなたたちを捕らえる人たちをエヴァンス公爵が連れて来てくれるはずです。詳細はそこで話して、罪を償ってください」
「なっ、俺は父だぞ。俺を売るつもりか!?」
「そうよ、シア。考え直してちょうだい!」
「売る?いえ、償ってもらうんですよ。それに、お母さんも他人事だけど、あなたもよ?この家を乗っ取ろうとしたんだもの。重罪に決まっているじゃない」
「そんな!?」
聞きたいこと、言いたいことは言えたかな?…もう言える機会はもうこないかもしれない。
……最後に言いたいこと
「お父さん、お母さん。優しい二人が…大好きでした。…さようなら」
おかしいな、最近の二人は嫌いだったはずなのに、涙が止まらない。
もしかして、ここ?お姉様を閉じ込めようとしていた部屋に閉じ込められるなんて、皮肉なものね。だけど、この部屋では…
「手足を縛ってあるので、内側から開けられることはありません。それに、開けられたとしても、自分たちが見張っていますので問題ありません」
私の疑問に答えるように、扉の前に立っていた二人の騎士の内、一人が声をかけてくる。でもこの人、団長さんなんじゃ…
「あの時は失礼しました。私はジャン団長から指名され、団長をしております、アルフレッドと申します。以後お見知り置きを」
「私はアリシアと申します。覚えておく必要はありませんが、よろしくお願いしますね」
「…アリシア様、こちらにはどのような御用件で?後ろにも大勢ついて来ているみたいですが…?」
「少し、両親と話したい事があって、扉の前からでも良いから少しだけ時間をくださらない?」
アルフレッドはちらっとジャンのことを見て、ため息をつく。彼はそのまま持ち場に戻る。良いってことかしら?
「どうぞ。ですが、不審な動きをしたら…」
「分かっているわ。ありがとう」
ふぅ。息を少し吐き、扉にそっと手をつける。
「お父さん、お母さん、ここにいるの?」
「おお、シアか! 無事か!?」
「シア? シアなの!?」
「ええ、無事…ではないわ。今も囲まれているもの」
嘘は言っていない。ただ、多くの人に見守られているだけですけど。
「…そうか」
「ねぇ、お父さん。捕まった経緯は聞いたわ。どうして、部屋に入ろうとしたの?」
「…それは」
「それは、お姉様、シェリア・アースベルトを殺そうとしたから。その理由は、お姉様が唯一、前アースベルト侯爵の血を継いでいて、お父さんの血は必要なんてないから。お姉様がいる限り、お父さんがこの家を継ぐことはできないから。違う?」
「なっ!?」
何を今更驚いているのだろうか。本当に私が何も知らないとでも思っているのか。
「ねぇ、お母さん、一つ、聞きたいことがあるの…」
「な、何かしら?」
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「私にどうして、字を教えてくれなかったの?お母さんが字をかけるなんて、私、知らなかった」
「ど、どうしてそれを」
「教えて? それとも、言えない? 私が字を読めることで不都合なことがある?あるよね。だって、あんなにいっぱい家にお父さんを応援している紙があるんだもの。お父さんが何をしようとしているかを知った上で…。私に読まれることを嫌がったのでしょう?」
「シア、違うの! 私とオスカー様は本当に愛し合っていたの。なのに、あの女が! あの女が無理矢理私たちを引き裂こうとしてきたの!」
「それはアーシャ先生のせいではなく、お父さんの家の問題でしょう。駆け落ちでもなんでもすればよかったじゃない!それに、アーシャ先生を殺して、お姉様を殺そうとして、愛してるとか言いながら未だ貴族に拘っているんでしょう! そうじゃなきゃ、あの生活で満足しているはずなんだもの…私はあの時が一番幸せだったのに!」
アーシャ先生だって、父との婚約なんて望んでいなかったはずなのに、どうして、この人たちは自分たちを被害者だと言うの?
「違うんだ、シア! 俺はただ、三人で幸せに「それなら、どうしてこの家を乗っ取ろうとしているんですか?」それは…」
「もう良いです。お父さんがアーシャ先生をニール草で毒殺したのでしょう?」
「…どうしてそれを、まさか! 家に行ったのか!?」
やはり、家に置いてあったのはニール草だったのですね…結果を待たずとも話してくれましたが、結果もすぐ出るでしょう。
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聞きたいこと、言いたいことは言えたかな?…もう言える機会はもうこないかもしれない。
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