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事実

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お姉様に謝れる意味がわからない。謝らないといけないのは私の方なのに…

「ごめんなさい、アリシア。私、あなたに何かしちゃった?私の何が悪かったの?お姉ちゃんと呼ばせたのが嫌だった?なんでも言って。私、全部直すから!」

「お姉様、落ち着いてください。お姉様に悪いとことなんてありません。悪いのは全部私なのですから」

「そうです!お嬢様は何も悪い所なんてありません。例え演技だとしても、別の提案が『生きたお人形』ですか?やっぱりこの子も「アン!」…なんですか、マリアさん。私はあなたのことも信じられなくなっているのですが、何か言い分があるのですか?」

「はぁ、あなたは物事をもっと先まで見えるようにしないとダメね」

「どういう意味ですか!」

「そのままの意味よ。あの時、アリシア様があんなことを言わなかったらどうなっていたと思う?」

「どうなっていたって、それは…」

 さっき私が言ったように、あの父なら、私がお姉様に何かを言われ、泣かせたという理由で幽閉するでしょう。それは私がどんなに説得したとしても覆すことができなかったでしょう。

「嬉々として幽閉するでしょう。私に殺しても良いと言うくらいですし、閉じ込める方が色々と言い訳が聞きますからね。例えば、母の死のショックで部屋から出て来なくなってしまったとか」

「それは…」

「それに、今のままではお嬢様は何もできません。家にいたとして、あの男がお嬢様に何かする可能性は大いにあります」

 そうね。今まで使用人たちに無視するように命令していたみたいだし、それがお姉様に通じていないと分かれば次に何をするかはわからない。

「だからと言って、お嬢様を人形などと!」

「そうですか?私はいい表現だと思ったのですが」

「あなたは「…アン」…お嬢様!」

「マリアはアリシアが私を害そうとしているのではなく、私のためだと言うのね」

「はい。少なくとも私をお嬢様の見張りにしたのですから、その意図はあったと思います」

 マリアの言う通り、私がマリアをお姉様の監視役にしたのは、そのままの意味ではなくお姉様を守ってくれる人を近くに置きたかったから。それを理解してくれ、彼女は父に取り入って私の望む立ち位置に来てくれた。

「そうです。マリアにはお姉様の監視ではなく、守ってくれる人として推薦しました。アンだと父が受け入れないでしょうしね。それに、人形と表現したのはそれだけではありません。お姉様の自由を得るためです」

「どうやって自由を得ると言うんですか!」

「そうね。アンの言う通り自由とは言い切れないでしょう。でも、いつ父に見つかるかわからずに出歩くよりも、私が一緒という足枷がありますが、お姉様も自由に行動できるはずです。だって、私はお人形を連れてお散歩と表現できますから」

「なっ」

「それだけではありません。ああ言ったことで、お姉様にこの部屋を返すことができましたから」

 私がいてしまいますけどね。だから、できるだけお姉様の邪魔にならないように部屋の隅っこに私の場所、あのソファーを置いてもらったんだから、家の布団よりもふかふかで気持ち良さそうだし、たぶん問題ないでしょう。

「アリシアはそこまで…」

「ははは、お嬢はすごいな」

「…私なんて、すごくありませんよ。ただお姉様の居場所を奪い、足枷をつけ、自由を奪った、悪魔の娘ですよ」
 
 そう、私はただ元あった場所に返そうとしただけ。何もすごいことなんて…

「それでもだ。親がなんであろうと、誰であろうと関係ねぇよ。お嬢はお嬢だ。その考えはお嬢のものだろう?その歳で先のことまで、頑張ったな」

 そう言って、ジャンに頭を撫でられる。父や母とは違う。優しさはなく、むしろガシガシと撫でられるせいで少し痛くも感じるが、それ以上に褒められたこと、頭に伝わる暖かさが嬉しく感じる。

 あの人たちに頭を撫でられた気持ち悪さは一切感じなかった。
 
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