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第四十七話
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一週間の謹慎後、私はお姉様と共に王城での謁見するはずだったのですが……
何故だか晩餐に誘われる事になり、王城の食事室に案内される。そこにはすでに、リオン様が席についていました。そして、その隣を見て背筋が凍るのを感じる。
リオン様の隣に座っているのは男女の二人。そして、この場でリオン様と共に座れる人物も二人。陛下と王妃様の他にありえません。
リオン様は間違っていませんでした。確かに、私は陛下と王妃様に会っていました。
「……アリシア、どうしたの!?」
おそらく、私の顔は真っ青になっていたのではないでしょうか。お姉様が慌てて小声で声をかけてくれる。
「ごめんなさい、お姉様。私……お二人に会っていました」
「えっ!?」
驚きますよね。私は会っていないと言い張っていた訳ですし……ですが、私だって驚いているのです。
だって王族の方が変装してまで態々会いに来ていたなんて思わないじゃないですか!?
陛下は私が保護されている間の試験官をしていた人でした。あの時は、結果を残さなければいけないと思い、試験に集中していたため、どんな人がいたかなんてことは正直な所、記憶に残っていません。
ですが、陛下にお会いして、思い出したことがあります。それは、一度だけ、王族以外にも黒髪がいるんだと、絶対に有り得ないのに思ってしまった事があった事です。
その時には気にも留めなかったのですが、その事自体忘れていた事を後悔しています。
けれど、それ以上に厄介、というよりもやらかしてしまったのが、私の目の前でニコニコとしている王妃様の存在です。
王妃様は、私に監視兼メイドとして、保護されている間、ほぼ常にと言っていいほどずっと一緒にいた方でした。その人の名前はセレナ……
「おお、そうだ。これからは家族になるんだ。他人行儀でなく、私のことはルドルフと呼んでくれ」
「私はセレナーデと申します。呼ぶ時はセレナとお呼びください♪」
まるで、自分がした悪戯を種明かしする子供のように嬉しそうに話す王妃様。
「ルドルフ様、セレナーデ様、私はアリシアと申します。よ、よろしく、お願いいたします」
「もう、緊張しなくてもいいのに。それとセ レ ナですよ。アリシアちゃん。いいえ、それともアリシア様と言った方が呼んでくれるのかしら?」
「も、申し訳ありませんでした。あの時はお二人に気づかず、無礼な事を……」
「別に怒っている訳じゃないの。あなたの境遇はわかっているつもりよ。アリーシャも態々あなたに私たちの事を話すはずもないし、言っていたところでわからないでしょうから。けどね、私……結構、あなたと仲良くやれてたと思うの。それなのに、全然以前のように接してくれないんだもの」
不貞腐れたようにおっしゃる王妃様。しかし、言っていることは無茶にも程があります。そもそも、私の境遇云々の前に、王妃様がメイドをしていると誰がわかるというのでしょうか?
――チラチラと見ないでください。正体が分かった上で、以前のように接する事ができる訳ないじゃないですか!
「王妃様、ご冗談もそれくらいにして、本題に入らせてもらえますでしょうか?」
困っている私を見かねて、すかさずお姉様がフォローを入れてくれる。本当に心強い。
「冗談ではないのですけどね……シェリアちゃんも呼んでくれてもいいのよ? 分かったわ。そんな目で見ないで。でもせめて、セレナーデと。それ以上は妥協しないわ」
「……セレナーデ様。これでよろしいでしょうか?」
「そうねぇ。まぁ、それでいいわ。それで、本題はアリシアちゃんとリオンの婚約の話よね。分かっているとは思うけど、私たちは初めから認めているわ。もともと、リオンが小さい頃から心に決めた人がいると私たちに言い続けていたからね。よっぽどでない限り認めるつもりだったのよ。幸い、リオンは五男だから、それほど気を使う必要はなかったのもあるけど」
ふと、リオン様の方を見てみると、少し頬が赤くなって、照れているのがわかる。その様子が、王妃様の話が事実であると肯定している。
リオン様は小さい頃から私の事を陛下たちに話してくれていた。その事実を嬉しく感じる。
「うふふ、若いっていいわね。二人とも、照れるのはそのくらいにして、まずは食事にしましょう。話はその後で。ねっ?」
その言葉の後、次々と豪華な食事が並べられる。
「それじゃあ、いただこうか」
陛下の掛け声に、私とお姉様は用意された料理を口に運ぶ。
何故だか晩餐に誘われる事になり、王城の食事室に案内される。そこにはすでに、リオン様が席についていました。そして、その隣を見て背筋が凍るのを感じる。
リオン様の隣に座っているのは男女の二人。そして、この場でリオン様と共に座れる人物も二人。陛下と王妃様の他にありえません。
リオン様は間違っていませんでした。確かに、私は陛下と王妃様に会っていました。
「……アリシア、どうしたの!?」
おそらく、私の顔は真っ青になっていたのではないでしょうか。お姉様が慌てて小声で声をかけてくれる。
「ごめんなさい、お姉様。私……お二人に会っていました」
「えっ!?」
驚きますよね。私は会っていないと言い張っていた訳ですし……ですが、私だって驚いているのです。
だって王族の方が変装してまで態々会いに来ていたなんて思わないじゃないですか!?
陛下は私が保護されている間の試験官をしていた人でした。あの時は、結果を残さなければいけないと思い、試験に集中していたため、どんな人がいたかなんてことは正直な所、記憶に残っていません。
ですが、陛下にお会いして、思い出したことがあります。それは、一度だけ、王族以外にも黒髪がいるんだと、絶対に有り得ないのに思ってしまった事があった事です。
その時には気にも留めなかったのですが、その事自体忘れていた事を後悔しています。
けれど、それ以上に厄介、というよりもやらかしてしまったのが、私の目の前でニコニコとしている王妃様の存在です。
王妃様は、私に監視兼メイドとして、保護されている間、ほぼ常にと言っていいほどずっと一緒にいた方でした。その人の名前はセレナ……
「おお、そうだ。これからは家族になるんだ。他人行儀でなく、私のことはルドルフと呼んでくれ」
「私はセレナーデと申します。呼ぶ時はセレナとお呼びください♪」
まるで、自分がした悪戯を種明かしする子供のように嬉しそうに話す王妃様。
「ルドルフ様、セレナーデ様、私はアリシアと申します。よ、よろしく、お願いいたします」
「もう、緊張しなくてもいいのに。それとセ レ ナですよ。アリシアちゃん。いいえ、それともアリシア様と言った方が呼んでくれるのかしら?」
「も、申し訳ありませんでした。あの時はお二人に気づかず、無礼な事を……」
「別に怒っている訳じゃないの。あなたの境遇はわかっているつもりよ。アリーシャも態々あなたに私たちの事を話すはずもないし、言っていたところでわからないでしょうから。けどね、私……結構、あなたと仲良くやれてたと思うの。それなのに、全然以前のように接してくれないんだもの」
不貞腐れたようにおっしゃる王妃様。しかし、言っていることは無茶にも程があります。そもそも、私の境遇云々の前に、王妃様がメイドをしていると誰がわかるというのでしょうか?
――チラチラと見ないでください。正体が分かった上で、以前のように接する事ができる訳ないじゃないですか!
「王妃様、ご冗談もそれくらいにして、本題に入らせてもらえますでしょうか?」
困っている私を見かねて、すかさずお姉様がフォローを入れてくれる。本当に心強い。
「冗談ではないのですけどね……シェリアちゃんも呼んでくれてもいいのよ? 分かったわ。そんな目で見ないで。でもせめて、セレナーデと。それ以上は妥協しないわ」
「……セレナーデ様。これでよろしいでしょうか?」
「そうねぇ。まぁ、それでいいわ。それで、本題はアリシアちゃんとリオンの婚約の話よね。分かっているとは思うけど、私たちは初めから認めているわ。もともと、リオンが小さい頃から心に決めた人がいると私たちに言い続けていたからね。よっぽどでない限り認めるつもりだったのよ。幸い、リオンは五男だから、それほど気を使う必要はなかったのもあるけど」
ふと、リオン様の方を見てみると、少し頬が赤くなって、照れているのがわかる。その様子が、王妃様の話が事実であると肯定している。
リオン様は小さい頃から私の事を陛下たちに話してくれていた。その事実を嬉しく感じる。
「うふふ、若いっていいわね。二人とも、照れるのはそのくらいにして、まずは食事にしましょう。話はその後で。ねっ?」
その言葉の後、次々と豪華な食事が並べられる。
「それじゃあ、いただこうか」
陛下の掛け声に、私とお姉様は用意された料理を口に運ぶ。
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