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第四十二話
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私の事を気にせず、二人は手紙について話し合いを続けています。
「……それは本当か?」
「はい。手紙を受け取る時には私も一緒にいましたから。それに、中身を見ていただけますか?」
「これは……」
「はい。皆様、リオン様のお気持ちを良く分かっている方達だと思います。少なくとも、敵対関係ではなく、仲良くする事を選んだようですから」
「そうか。一番最初に動いたのは誰だ?」
「この方です。次にこの方。順番通りに並べております」
「それは助かる。という事は、そっちの手紙は周りがやっているからした者か」
「はい。紙も先程までと違い、学園の紙であり、内容も名前のみでした。おそらく、誰かが、用意してないことに気づいて、教えたのだと思われます」
「…………」
話についていけず、黙っていても気にも留めてくれません。ですが、お二人の話を邪魔する訳にもいきません。私にはこのように黙っているしかできません。
「そうか。それにしても、よくまとめてくれた。報告も的確だ。君も彼女たちと同じように狙っているのか?」
「そうですね。欲を言えば……ですが。それ以上に、私はお二人を応援したいのです。今も、これからも。私が今のようになれたのも皆様のお陰ですから」
「ああ、本当に逞しくなったな」
「私にはこの学園の令嬢の代表と言っていいほどの友人が二人もいますから」
「そうだったな。それに、その二人なら納得だ。これからもよろしく頼む」
「はいっ!」
リオン様がリリア様を褒めて、リリア様が元気よく返事をする。その光景に心がざわつきます。そしてら気づいてしまいました。今回の手紙が、リオン様の婚約者の選定に関係している事を……
「お二人は仲が良くていいですね」
気がついた時には、思ってもいない事を口走っていた。いいえ、心の奥底では思っていたのでしょう。二人だけがわかるお話をしているのが、とても羨ましくなった。
慌てて口を両手で塞ぐけれど、口に出した言葉は戻ってくる事も、聞こえなくなることもありません。
「……アリシア」
この場にはリオン様と私の二人しかいない訳じゃない。リリア様もいる。だから、リオン様は私を愛称で呼ばなかった。それだけ……
頭では分かっています。それなのに、心はわかってくれない。私の言葉で、リオン様が離れてしまった。いえ、そもそも本当に近づいていたのでしょうか? 全ては私の……思い違いだったのではないでしょうか?
そう思うと、この場にはいられませんでした。リオン様の顔を見れない。私を見る目が変わってしまったのを見たくない。あの優しい目以外で見られるのが怖い。
私は急いで教室から出る。リオン様とリリア様が何か叫んでいるのが聞こえて来ますが、私は止まる事はありませんでした。
近頃の私はおかしい。小さい頃は出来たことが、感情を殺して、ただ言われた事をこなすことができなくなってしまっている。
急いで使われていない教室に入り、息を殺す。追いかけては来ていないのが分かり、ホッと一息ついた。
「……どうして、あんな事を言ってしまったのでしょうか?」
メイドとして、主人の会話に入ってはならない。そんな当たり前のことでさえ、私はできなくなってしまっている。あの時、私は疎外感を感じてしまった。メイドとして、リオン様の周りにいるのではなく、前にいるリリア様に嫉妬してしまった。
私はメイドとしてでも、リオン様の側にいたいと思っているのに、こんな気持ちではやっていく事なんてできない。
「……私には……ダメなのかな……」
リオン様の側にいたい。けれど、その場所はとても高く、私がどれだけ手を伸ばそうとも届かない。よじ登ろうとすれば、父と母が私の足を掴む。「お前のせいで」「お前も一緒に」そんな言葉が聞こえてくる。
私は犯罪者の娘です。本当は孤児になるはずだった女です。王族であるリオン様には到底釣り合う事ができません。
ですが、私は……私の話を信じて両親を捕らえてくれた貴方が、居場所のない私を匿ってくれた貴方が、お姉様と一緒に居場所をくれた貴方が、私をリーアと呼んでくれた貴方が……好きなのです。
蓋をしていた気持ちが溢れ出し、涙がポロポロと溢れてくる。今まで誤魔化して来た、考えないようにしていた気持ちを止める事ができない。
ダメなのに、隠さないといけないのに、もう以前のように抑えることが出来ない。
「リオ……ン……様」
途切れ途切れになりながらも、私は想い人の名前を呼んだ。
「……それは本当か?」
「はい。手紙を受け取る時には私も一緒にいましたから。それに、中身を見ていただけますか?」
「これは……」
「はい。皆様、リオン様のお気持ちを良く分かっている方達だと思います。少なくとも、敵対関係ではなく、仲良くする事を選んだようですから」
「そうか。一番最初に動いたのは誰だ?」
「この方です。次にこの方。順番通りに並べております」
「それは助かる。という事は、そっちの手紙は周りがやっているからした者か」
「はい。紙も先程までと違い、学園の紙であり、内容も名前のみでした。おそらく、誰かが、用意してないことに気づいて、教えたのだと思われます」
「…………」
話についていけず、黙っていても気にも留めてくれません。ですが、お二人の話を邪魔する訳にもいきません。私にはこのように黙っているしかできません。
「そうか。それにしても、よくまとめてくれた。報告も的確だ。君も彼女たちと同じように狙っているのか?」
「そうですね。欲を言えば……ですが。それ以上に、私はお二人を応援したいのです。今も、これからも。私が今のようになれたのも皆様のお陰ですから」
「ああ、本当に逞しくなったな」
「私にはこの学園の令嬢の代表と言っていいほどの友人が二人もいますから」
「そうだったな。それに、その二人なら納得だ。これからもよろしく頼む」
「はいっ!」
リオン様がリリア様を褒めて、リリア様が元気よく返事をする。その光景に心がざわつきます。そしてら気づいてしまいました。今回の手紙が、リオン様の婚約者の選定に関係している事を……
「お二人は仲が良くていいですね」
気がついた時には、思ってもいない事を口走っていた。いいえ、心の奥底では思っていたのでしょう。二人だけがわかるお話をしているのが、とても羨ましくなった。
慌てて口を両手で塞ぐけれど、口に出した言葉は戻ってくる事も、聞こえなくなることもありません。
「……アリシア」
この場にはリオン様と私の二人しかいない訳じゃない。リリア様もいる。だから、リオン様は私を愛称で呼ばなかった。それだけ……
頭では分かっています。それなのに、心はわかってくれない。私の言葉で、リオン様が離れてしまった。いえ、そもそも本当に近づいていたのでしょうか? 全ては私の……思い違いだったのではないでしょうか?
そう思うと、この場にはいられませんでした。リオン様の顔を見れない。私を見る目が変わってしまったのを見たくない。あの優しい目以外で見られるのが怖い。
私は急いで教室から出る。リオン様とリリア様が何か叫んでいるのが聞こえて来ますが、私は止まる事はありませんでした。
近頃の私はおかしい。小さい頃は出来たことが、感情を殺して、ただ言われた事をこなすことができなくなってしまっている。
急いで使われていない教室に入り、息を殺す。追いかけては来ていないのが分かり、ホッと一息ついた。
「……どうして、あんな事を言ってしまったのでしょうか?」
メイドとして、主人の会話に入ってはならない。そんな当たり前のことでさえ、私はできなくなってしまっている。あの時、私は疎外感を感じてしまった。メイドとして、リオン様の周りにいるのではなく、前にいるリリア様に嫉妬してしまった。
私はメイドとしてでも、リオン様の側にいたいと思っているのに、こんな気持ちではやっていく事なんてできない。
「……私には……ダメなのかな……」
リオン様の側にいたい。けれど、その場所はとても高く、私がどれだけ手を伸ばそうとも届かない。よじ登ろうとすれば、父と母が私の足を掴む。「お前のせいで」「お前も一緒に」そんな言葉が聞こえてくる。
私は犯罪者の娘です。本当は孤児になるはずだった女です。王族であるリオン様には到底釣り合う事ができません。
ですが、私は……私の話を信じて両親を捕らえてくれた貴方が、居場所のない私を匿ってくれた貴方が、お姉様と一緒に居場所をくれた貴方が、私をリーアと呼んでくれた貴方が……好きなのです。
蓋をしていた気持ちが溢れ出し、涙がポロポロと溢れてくる。今まで誤魔化して来た、考えないようにしていた気持ちを止める事ができない。
ダメなのに、隠さないといけないのに、もう以前のように抑えることが出来ない。
「リオ……ン……様」
途切れ途切れになりながらも、私は想い人の名前を呼んだ。
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