上 下
28 / 43

16 全部第一王子が悪い

しおりを挟む
 今日はこれからクリス様が我が家にやってきます。私はどんな顔をして、彼に会えばいいのでしょうか。いいえ、不安に思ってはいけません。お母様も言っていたではありませんか!全て第一王子が悪いのです!
 ええ、あの人の話を全く聞かず、何もしないのに自分が偉いと思っており、婚約者がいるにも関わらず、平気で浮気をしながら、冤罪をかけてくる、頭の中身が全くない方が悪いのです!

 ふぅ、少し、落ち着きました。さすがお母様ですね。クリス様と会うのは嬉しいことなのです。ですから、不安なことは考えないようにしましょう。

「お嬢様、クリス殿下が参りました」
「ありがとう、サリー。すぐに行くわ」

 侍女と共に応接間に行くと、部屋にはお兄様がいて、会っていたのにとても懐かしく感じるクリス様、ニア、それに…

「アメリアさん?確か、孤児院の子で私に会いに来てくれた…」

 孤児院の横領を知るきっかけになった女の子。なんとなく、面影を感じるような…えっ、泣いて…

「ごめんなさい。私、何か悪いことを言ったみたいで…」
「…違うんです。私のことを…覚えてくれていたのが…嬉しくて…」
「彼女はあの時、君に助けられてからずっと君のことを思っていてな、君に使えたいと今はニアの直属のもと、影として任務に励んでくれていた」
「そうだったんですか。アメリアさん、ありがとう。私とこの国のために大変なことをさせてしまってごめんなさい…」

 確か、彼女は私と同じ歳だったはずだ。それなのに…

「…お気になさらないでください、ソフィア様、これは私が望んだことです」
「望んで?」
「はい。ソフィア様のお役に立てるのであればどんなことでもしたいと。ソフィア様の命を守れるならその方法も教えて欲しいと頼んだのです」
「私のために…ありがとう」
「お礼を言うのは私の方です。あの時、汚かった私の手を握って、孤児院をよくしてくれたことは忘れることができません…なのに、私は…私はソフィア様に…」
「?」
「すまない。私が彼女に頼んでいたんだ。全ての責任は命令した私にある」
「クリス様?いったい何を…」
「私が!私がメアリーなのです。ソフィア様。…私が、ソフィア様を第一王子から引き離したくて、ソフィア様に冤罪を…そのせいで、あの無能からソフィア様が謂れもない罵倒を。全て、全て私のせいなのです!」

 彼女がメアリーと名乗って、第一王子に近づいた。その理由が、私を第一王子から引き離すためと。つまり、彼女は私を助けてくれたのですよね。

「あなたは陰で私を助けてくれていたのですね」
「ですが、私のせいで、ソフィア様は悪役令嬢と呼ばれました!私のせいでソフィア様は死のうとして…」
「死のうとしたのは私が悪かったわ。影がついていることは知っていたから大丈夫だと思っていたのよ。今は反省しているし、もうそんなことはしないわ。それと、悪役令嬢のことだけど、誰が言っていたの?」
「えっ、第一王子とその取り巻きの三人が…それと、それと…」
「そうなのよね。私誰からも言われてないのよ。だから、アメリアが気にすることはないわ。私を助けたという事実だけを覚えておいて。それともう一つ、全部第一王子が悪いということだけ覚えておいて」
「「ブフッ」」

 私が大事な話をしているのに、お兄様もクリス様もどうして笑っているのでしょうか?失礼ですよ!私が睨んだら、クリス様は少し耐えようとしていますが、横で気にせず笑っているお兄様のせいで、耐えるのは難しいみたいです。あとでお母様に言って、お兄様には罰を受けてもらわないと…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘を囁いた唇にキスをした。それが最後の会話だった。

わたあめ
恋愛
ジェレマイア公爵家のヒルトンとアールマイト伯爵家のキャメルはお互い17の頃に婚約を誓た。しかし、それは3年後にヒルトンの威勢の良い声と共に破棄されることとなる。 「お前が私のお父様を殺したんだろう!」 身に覚えがない罪に問われ、キャメルは何が何だか分からぬまま、隣国のエセルター領へと亡命することとなった。しかし、そこは異様な国で...? ※拙文です。ご容赦ください。 ※この物語はフィクションです。 ※作者のご都合主義アリ ※三章からは恋愛色強めで書いていきます。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました

神村 月子
恋愛
 貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。  彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。  「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。  登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。   ※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています

【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く

とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。 まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。 しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。 なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう! そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。 しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。 すると彼に 「こんな遺書じゃダメだね」 「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」 と思いっきりダメ出しをされてしまった。 それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。 「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」 これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。 そんなお話。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…

西東友一
恋愛
私の妹は昔から私の物をなんでも欲しがった。 最初は私もムカつきました。 でも、この頃私は、なんでもあげるんです。 だって・・・ね

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

処理中です...