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第二王子・クリス視点
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愚兄が恥を晒しなが帰ってきた後、僕はその報告を連れ帰ってきた本人であるローアから直接話を聞いている。だが、当の本人はあまり話すつもりはないようだ。
「で、普通に連れて帰ってこれなかったのか、ローア?」
「普通とはどのようなものでしょうか?私は平民なので高貴な方の考えはよくわかりませんな」
「お前…、もしかして怒っているのか?」
「…なんのことやら」
これは僕が舐められているのだろう。影の主人は父上である陛下であり、僕は数人借りているに過ぎない。認めさせてみせよとは、父上の言葉だが、いまだにうまくいってはいない。
「お前たちはいつになったら僕を認めてくれるんだ?」
「さあ、それを私たちに聞くあたり、まだまだとだけ言っておきます」
「はぁ、それはお前も一緒か?ニア」
「私は主人を決めているのでお好きにしてください」
「それを堂々と僕の前で言うか?それで、お前は?」
ニアの回答に呆れながらも彼女の主人は想像できるので、僕は少女に話しかける。彼女は影の中では最年少であり、ある日、急にニアが連れてきた少女だ。今はある計画のために別行動をしていて普段はここには来ないのだが、今日は珍しい。
「…私は貴族も王族もあの方以外は嫌いです。あなたはただ、ソフィア様を助けてくれると言っていただけたので従っているだけです」
「お前も何か怒っているのか?」
「私はソフィア様が死のうとしていたなんて知らなかったのですが」
「ぐっ、それは…」
「別にいいです。僕もそこまで想像していなかったとか言うんでしょうが、別にどうでもいいです。先生が守ってくれたおかげで、ソフィア様は生きていますから」
僕も予想外だった。フィーア姉様がそこまでショックを受けることになるとは。分かっていれば、あの愚兄を喋る暇もないぐらいに忙しくしてやったものを…
「ああ、ソフィア様もかわいそうなものです。婚約者はあんなにも愚か者で、その弟である腹黒にはコソコソ狙われているなんて」
「お前、不敬罪という言葉を知っているか?」
「言葉としては、知っていますよ?ですが、ヘタレに何も言われたくはありません」
「おい!」
「ソフィア様に思い出してもらえないくせに…」
「……」
「私は今でもあれを許していませんから、失礼します」
フィーア姉様が昔のことを忘れている理由、それは子供の頃の稽古の時にある。あの愚兄よりもフィーア姉様の方が遥かに強かった。それを許せなく思った愚兄は庭の土を持ち出し、フィーア姉様の目に投げつけ、模擬刀を頭に叩き込んだ。
木製であり、子供の力だったとはいえ、打ちどころが悪く、フィーア姉様は生死を彷徨った。幸いなことに生きてくれていたのはいいのだが、僕のことを含める過去のことは忘れてしまっていた。忘れてしまったと言うよりは混濁したと言うのが正しいのだろうか。
僕と話したことと、愚兄と話していたことが混ざっているらしい。もう僕のことはクリスとは呼んでもらえず、第二王子殿下としか呼ばれなくなってしまった。
僕も許してはいないさ。だから君に頼んでいるのだから。
「で、普通に連れて帰ってこれなかったのか、ローア?」
「普通とはどのようなものでしょうか?私は平民なので高貴な方の考えはよくわかりませんな」
「お前…、もしかして怒っているのか?」
「…なんのことやら」
これは僕が舐められているのだろう。影の主人は父上である陛下であり、僕は数人借りているに過ぎない。認めさせてみせよとは、父上の言葉だが、いまだにうまくいってはいない。
「お前たちはいつになったら僕を認めてくれるんだ?」
「さあ、それを私たちに聞くあたり、まだまだとだけ言っておきます」
「はぁ、それはお前も一緒か?ニア」
「私は主人を決めているのでお好きにしてください」
「それを堂々と僕の前で言うか?それで、お前は?」
ニアの回答に呆れながらも彼女の主人は想像できるので、僕は少女に話しかける。彼女は影の中では最年少であり、ある日、急にニアが連れてきた少女だ。今はある計画のために別行動をしていて普段はここには来ないのだが、今日は珍しい。
「…私は貴族も王族もあの方以外は嫌いです。あなたはただ、ソフィア様を助けてくれると言っていただけたので従っているだけです」
「お前も何か怒っているのか?」
「私はソフィア様が死のうとしていたなんて知らなかったのですが」
「ぐっ、それは…」
「別にいいです。僕もそこまで想像していなかったとか言うんでしょうが、別にどうでもいいです。先生が守ってくれたおかげで、ソフィア様は生きていますから」
僕も予想外だった。フィーア姉様がそこまでショックを受けることになるとは。分かっていれば、あの愚兄を喋る暇もないぐらいに忙しくしてやったものを…
「ああ、ソフィア様もかわいそうなものです。婚約者はあんなにも愚か者で、その弟である腹黒にはコソコソ狙われているなんて」
「お前、不敬罪という言葉を知っているか?」
「言葉としては、知っていますよ?ですが、ヘタレに何も言われたくはありません」
「おい!」
「ソフィア様に思い出してもらえないくせに…」
「……」
「私は今でもあれを許していませんから、失礼します」
フィーア姉様が昔のことを忘れている理由、それは子供の頃の稽古の時にある。あの愚兄よりもフィーア姉様の方が遥かに強かった。それを許せなく思った愚兄は庭の土を持ち出し、フィーア姉様の目に投げつけ、模擬刀を頭に叩き込んだ。
木製であり、子供の力だったとはいえ、打ちどころが悪く、フィーア姉様は生死を彷徨った。幸いなことに生きてくれていたのはいいのだが、僕のことを含める過去のことは忘れてしまっていた。忘れてしまったと言うよりは混濁したと言うのが正しいのだろうか。
僕と話したことと、愚兄と話していたことが混ざっているらしい。もう僕のことはクリスとは呼んでもらえず、第二王子殿下としか呼ばれなくなってしまった。
僕も許してはいないさ。だから君に頼んでいるのだから。
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