上 下
5 / 9

私の本性は…

しおりを挟む
 あの後私は部屋に引きこもった。部屋の電気もつけず、ベッドにダイブして目を瞑る。するとすぐに思い浮かぶ。
 昨日まではあんなに優しかったゆずねぇが、今すぐ私を殺したい。そう思っているかのように睨みつけてきたあの目を。
 
 優馬の事を誰かが話したのだろうか? それとも優馬が何かを残していたのか。少なくとも昨日、私が眠ってしまっていた間に何かがあったんだと思う。
 
 優馬は私をもっと苦しめたいらしい。それは私が優馬をこれまで苦しめ続けた分の仕返しなのだろう。

「明美……少し話があるの」
「どうしたの? 話ならここでも「いいから! 下に来て頂戴」……? わかった」

 母の後を付いて行き、いつものリビングにたどり着く。席には既に父が座っていた。

「単刀直入に聞くわ。あなた、優馬君にどんなひどい事を言ったの?」

 言ったのか、言ってないのかではなく、何を言ったのか。つまり、お母さんは私が優馬にした仕打ちを全部分かった上で私の話を聞こうとしてくれている。
 不謹慎だけど、そんな家族の行動に少し元気づけられた。

「……そう」

 私が優馬にやってしまったことを全て両親に話した後に母がそれだけ呟いてまた深刻そうな顔をする。
 私は胸の内を全部吐露できたからか、以前よりも気持ちが軽く感じていた。

「やはり、それがあなたの本性みたいね」
「! ゆずねぇ……」
「そう呼ばないでって言ってるでしょう。おじさんとおばさんが話をするって言うから聞かせてもらっていたけど、やっぱりあなたは優くんの事なんてなんとも思っていない」
「そんなことありません!」

 そんなことはない。私はずっと優馬の事を……
 
「ならどうして、今ホッとしたような顔をしたの? あなたのせいで優くんが自殺したの。わかってる? あなたが追い詰めたの。それを……」

 確かにずっと重圧に感じてた事が少し軽くなった気がする。けど! それは誰かに話せたからであって、優馬の事を考えてない訳じゃない! このことに関しては相手がゆずねぇでも譲れなかった。

「何か言いたい事がありそうな顔ね。じゃあこれを読んでもう一度聞こうかしら。あなたが私に言いたい事を」

 そう言ってゆずねぇから渡されたのは、表紙がマーカーで真っ黒に塗りつぶされたノート。

 私はそのノートを開き、吐いた。目を背け続けていたものが一斉に襲いかかってきた感覚だった。

「それで? もう一度聞いてあげる。さあどうぞ?」

 吐き続ける私を見下ろすようにゆずねぇは続ける。

「あなたは優くんの事なんてなにも考えてない。自分のことだけ。この時も、今も。それを自覚した?」

 違う……私はただ……怖くて……優馬の事が……

「そのノートは1日貸してあげる。読むのも読まないのもあなたの自由。ただ汚さないでよね」

 そう言ってゆずねぇが帰っていく背中を見上げることしかできなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

本当の春

あおなゆみ
青春
僕たちは、自分を何と呼べば良いのかも分からない曖昧な存在で、それでも、出会いたいと願う一人がいて、それなのに、出会ってしまえば臆病になって手放す始末だーーー 高校入学に合わせて東京から引っ越してきた西山くんと、クラスに馴染めない浅田さんは、お互いの優しさを頼りに親しくなる。 北海道の本当の春の中、自然と始まった二人の下校時間は、穏やかで、優しい時間だった。 でも、恋とか友情だと断定しない、曖昧な関係を続ける二人には、当たり前のように噂が流れ始めてしまう。 本当の自分が何なのかも分からない不安定さは、穏やかな青春さえも奪ってゆく。

オサナナ日々と空色キセツ

蓬莱(ほうらい)
青春
静かな山里で暮らすアキラとユウナは幼なじみ。 二人で同じ景色を眺めながら通学し、取り留めの無い会話を交わしてゆく。 水田を渡る春風の匂い、梅雨の紫陽花、夏空の青さと真っ白な入道雲―― いつかどこかでみたような、懐かしい二人の日々を季節のイラストとともに紡ぎます。

女子高生のワタクシが、母になるまで。

あおみなみ
青春
優しくて、物知りで、頼れるカレシ求む! 「私は河野五月。高3で、好きな男性がいて、もう一押しでいい感じになれそう。 なのに、いいところでちょいちょい担任の桐本先生が絡んでくる。 桐本先生は常識人なので、生徒である私にちょっかいを出すとかじゃなくて、 こっちが勝手に意識しているだけではあるんだけれど… 桐本先生は私のこと、一体どう思っているんだろう?」 などと妄想する、少しいい気になっている女子高生のお話です。 タイトルは映画『6才のボクが、大人になるまで。』のもじり。

先輩は卒業する

高鍋渡
青春
生徒会長は式典ではっちゃけるものという伝統のある高校の卒業式にて、生徒会長の一条歩は思いを寄せていた前生徒会長の姫野椛へ告白をする決意をしていた。 大勢の出席者が見守る中、歩は送辞という名の愛のメッセージを読み上げる。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

シュガーグライダーズ

もっちり羊
青春
 友情、恋愛、部活動。青春の熱であるはずのそれらすべてが退屈に感じられる高校生、『折節イチハ』。  楽しい青春を探すため、彼女は奔走し、学校から、そして世界の理から外れていく。

君に会うため僕は君の

石田空
青春
これは、間違った恋の話。 小さい頃から繰り返し見る夢。 入江満は、高校二年生の夏に、ポニーテールの少女に殺されるという夢を繰り返し見続けていた。 なんとか夢を回避しようと行動してみても、着々と夢のとおりに時は過ぎていく。 そんな中、遂に自分を殺す少女、海鳴なぎさと出会う。 「あなたがいると、わたしの好きな人が死んじゃうの」 そんなことを言われても、満には心当たりがない。 部活にまで追いかけてこられ、彼女と不本意な交流を深めていくものの、傍若無人なはずのなぎさがだんだんと壊れていくことに気付く。 満は彼女を放っておくことができなくって。 僕は君に会うため、君の──。

友情と青春とセックス

折り紙
青春
「僕」はとある高校に通う大学受験を 終えた男子高校生。 毎日授業にだるさを覚え、 夜更かしをして、翌日の授業に 眠気を感じながら挑むその姿は 他の一般的な高校生と違いはない。 大学受験を終えた「僕」は生活の合間に自分の過去を思い出す。 自分の青春を。 結構下品な下ネタが飛び交います。 3話目までうざい感じです 感想が欲しいです。

処理中です...