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a②
しおりを挟むソードの蹴りをマトモに受けたのだ、ダメージは大きいはず。
遠くまで逃げ切るのは難しいだろう。
ソードの示した方角を走っていくと、男の後ろ姿を見つけた。
ソードの蹴りを食らっている男は、中腰で腹を抱え、フラフラと歩いていた。
男は思った以上の痛みに苦しんでいるのかもしれない、ソードは闘犬。
脚力、腕力、咬合力が優れる鍛え方をして育った犬族。
闘いのプロとも言われる闘犬のライセンスを持っているのだが……少し詰めが甘いのは、性格だと思われる。
けれど、ソードに怪我をさせたことは許せるものではない。
俺は腰に携えている剣を鞘から抜いた。
姿勢を低く構え、男の脚に刃を通す。
「うぐああああッ!!」
男は痛みに苦しむ。
その隙に、男の両手を掴み紐で巻きつけ、目隠しをした。
胸元やポケットなどに手を突っ込み、解毒剤らしき物を探したが、見当たらなかった。
解毒剤を持ち歩いていないということは、即効性であるが、短時間で麻痺が切れる麻痺弾だったのかもしれない。
男の脚からは血が出てきており、このまま放置すると死ぬだろう。
死人になると、俺たちの報酬が減ってしまうので、脚に布をグルグルに巻き付け止血する。
これなら、銃を打つことも逃げることも難しいだろう。
俺は、紹介屋の使い鳩を呼んで、男を引き取りに来てもらうよう頼み、ソードの元へと走った。
ソードは、壁にもたれていた。
「大丈夫かい?ソード」
「うん。だんだん動くようになってきた」
撃たれた箇所は、ソードが自分で応急処置をしたのだろう、包帯が巻いてあった。
「即効性で短時間の麻痺薬だと思うが、いちおう診てもらおう」
ソードが蹴飛ばした男の小型二丁拳銃を腰に刺して、ソードに肩を貸した。
「ソード、痛くないかい?」
「大丈夫。ありがとう、コウ」
「俺の方こそ。
ソードが、すぐに窓から男を追いかけ、
蹴りをいれてくれたお陰で、
男を捕まえられた」
にへらあーと笑うソード。
「こういう時、お姫様抱っこって言うやつで運んでくれるってレストーナから聞いた」
「いや、無理。そんな筋力ないから」
「くうぅぅぅん」
ソードの尻尾がゆっくり揺れた。
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