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2.5章
その7
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学校に特別な思い入れはない。
“勉強が出来る場”と思えば好きな方だと言えるし、
“他人がいて居心地が悪い”と思えば、嫌いまではなくとも、比較的苦痛に感じる。
俺にとってそこは、生物的な本能の間に入ってきた義務的行為を受ける場所という認識でしかないのだ。
だから俺は、友達は作らないようにしている。ただ、"この場にいなければいけない"という事実は変えられないので、最低限の事務的なやり取りはちゃんとする。それ以上のことはしない。
賛否分かれそうな意見だが、勉強の時間を削ってまでクラスの人間と一緒にいる光景は、はっきり言ってどうかしている。
いつ"冷たい人間"と揶揄されても仕方がない。これは『呪い』を背負った結果に俺が選んだことなのだから。
ただ、クラスメイトと話さないかと言われれば、そんなこともなく。
「よっ! おはよ、紘一」
俺の姿を見るなり、男子が駆け寄ってきた。
名前は確か……#込堂久___こめどうひさ__#……だったはずだ
席は俺の右斜め後方。なんかの部活動に入っていた気がする。
自己紹介でやたら声がデカかったのと、俺が出会った人間の中で珍しい名前だったから憶えている。
自己紹介や授業の説明など一通りのオリエンテーションを終えたクラス初日。ホームルーム後に話しかけてきたのがコイツだ。
なんか「クラス全員と仲良くなるのが目標」とかなんとか言ってた気がする。
まあ校内の規模からするとそれくらいが妥当なのだろう。
メンドウなことになりそうだなと適当にその場を流そうとして帰ろうとしたが、次々に繰り出される質問に成す術がなかった。
とは言え途中で切り上げてしまうのも人間関係の構築上、よろしくない。
俺は適当に答え、その場を切り抜けることに成功した。
──そういえば帰り際に、おかしなことを言っていた気がする。忘れたが。
しかしコイツ、俺と話していてよく飽きないな。やたら馴れ馴れしいし。
最初は正直うっとうしく思っていたが
あまりにも毎日話しかけてくるものだから、俺の方が根負けして、今では普通に話している。
「おはよ、久くん」
俺は右手に持っていたペンを止め、久の方を向き、いつものちゃんとした声と表情で応える。
「なあ~、いい加減その『くん』ってのやめてくれよ~」
どうやら何かが不満らしい。
「なんで?」
「なんでってそりゃあ……ガキっぽいじゃねえか。
しかも俺たち友だちだろ? にしちゃあよそよそしすぎねえ?」
変なとこをこだわるな。名前を呼んでいる事には変わりないだろう。
「じゃあ……おはよう。久」
「おう! ……って、今更呼び捨てにされると寒気がするな。
もういいよ、そのままで」
一体どっちなんだ。……ったく、今ので時間を無駄にしたな
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ、久くん」
「それはそうとお前、まーた勉強してるのか?
どうせ今回もクラス2位なんだから、少しぐらい休んでもいいんじゃねーの?
どう考えてもお前を超すヤツなんてこのクラスに一人しかいねえよ」
コイツ、自虐のつもりでいっているのだろうか。
「ハハ、そうだといいんだけどね。でも万が一ってこともあるでしょ?
気なんか緩められないよ。それより、久くんこそ勉強しなくていいの?
この前の小テスト、結構危なかったよね?」
しばしの沈黙。
まずい。間違えたか?
「おっと。その話はナシだぜ紘一。この前のは小テストだ。
本番で赤点さえ取らなきゃいいのさ」
なんだ。いつも通りか。というか何を言ってるんだコイツは
まあ、それはそうなんだが。
“勉強が出来る場”と思えば好きな方だと言えるし、
“他人がいて居心地が悪い”と思えば、嫌いまではなくとも、比較的苦痛に感じる。
俺にとってそこは、生物的な本能の間に入ってきた義務的行為を受ける場所という認識でしかないのだ。
だから俺は、友達は作らないようにしている。ただ、"この場にいなければいけない"という事実は変えられないので、最低限の事務的なやり取りはちゃんとする。それ以上のことはしない。
賛否分かれそうな意見だが、勉強の時間を削ってまでクラスの人間と一緒にいる光景は、はっきり言ってどうかしている。
いつ"冷たい人間"と揶揄されても仕方がない。これは『呪い』を背負った結果に俺が選んだことなのだから。
ただ、クラスメイトと話さないかと言われれば、そんなこともなく。
「よっ! おはよ、紘一」
俺の姿を見るなり、男子が駆け寄ってきた。
名前は確か……#込堂久___こめどうひさ__#……だったはずだ
席は俺の右斜め後方。なんかの部活動に入っていた気がする。
自己紹介でやたら声がデカかったのと、俺が出会った人間の中で珍しい名前だったから憶えている。
自己紹介や授業の説明など一通りのオリエンテーションを終えたクラス初日。ホームルーム後に話しかけてきたのがコイツだ。
なんか「クラス全員と仲良くなるのが目標」とかなんとか言ってた気がする。
まあ校内の規模からするとそれくらいが妥当なのだろう。
メンドウなことになりそうだなと適当にその場を流そうとして帰ろうとしたが、次々に繰り出される質問に成す術がなかった。
とは言え途中で切り上げてしまうのも人間関係の構築上、よろしくない。
俺は適当に答え、その場を切り抜けることに成功した。
──そういえば帰り際に、おかしなことを言っていた気がする。忘れたが。
しかしコイツ、俺と話していてよく飽きないな。やたら馴れ馴れしいし。
最初は正直うっとうしく思っていたが
あまりにも毎日話しかけてくるものだから、俺の方が根負けして、今では普通に話している。
「おはよ、久くん」
俺は右手に持っていたペンを止め、久の方を向き、いつものちゃんとした声と表情で応える。
「なあ~、いい加減その『くん』ってのやめてくれよ~」
どうやら何かが不満らしい。
「なんで?」
「なんでってそりゃあ……ガキっぽいじゃねえか。
しかも俺たち友だちだろ? にしちゃあよそよそしすぎねえ?」
変なとこをこだわるな。名前を呼んでいる事には変わりないだろう。
「じゃあ……おはよう。久」
「おう! ……って、今更呼び捨てにされると寒気がするな。
もういいよ、そのままで」
一体どっちなんだ。……ったく、今ので時間を無駄にしたな
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ、久くん」
「それはそうとお前、まーた勉強してるのか?
どうせ今回もクラス2位なんだから、少しぐらい休んでもいいんじゃねーの?
どう考えてもお前を超すヤツなんてこのクラスに一人しかいねえよ」
コイツ、自虐のつもりでいっているのだろうか。
「ハハ、そうだといいんだけどね。でも万が一ってこともあるでしょ?
気なんか緩められないよ。それより、久くんこそ勉強しなくていいの?
この前の小テスト、結構危なかったよね?」
しばしの沈黙。
まずい。間違えたか?
「おっと。その話はナシだぜ紘一。この前のは小テストだ。
本番で赤点さえ取らなきゃいいのさ」
なんだ。いつも通りか。というか何を言ってるんだコイツは
まあ、それはそうなんだが。
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