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国土想像
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もしも自分が日本国土だったらなと、とんでもない表現の想像をした。
「国土」なんて言葉の響きが、えらく政治的で壮大でおかしかった。
国土になった私はベッドに仰向けに転がった。
頭がかゆくなった。頭は北海道だなと想像した。だから北海道がかゆいのだ。
北海道で何が起こっているのか想像した。
これは人が騒いでいるのだと想像してしばらくかゆみを味わっていたが、あまりにかゆいのでボリボリかいた。
するとフケがポロポロ落ちて来た。
警察が鎮圧に乗り出して逃亡者が出たんだと想像した。頭の横に落ちたフケをフッと吹いた。国土は静かになった。
静かになった国土を眺めてみた。眺めるのは目だから私は北海道にいることになる。
白い肌着に覆われた東北地方から関東、中部地方があり、カジュアルだかフォーマルだか分からないしわしわの黒ズボンが続く辺りは東海、近畿、中国地方で、指をさらけ出している足先は九州、沖縄地方といったところか。素足だけにその肌色がなんだか九州の火山を思わせる。そしてだらんと伸びた両腕の左側は位置的に四国で、右側は少しいい加減だが対馬や隠岐島、佐渡島といったところか。
「沖縄、また行きたいな」
そう呟いて足の指でグーパーをする。北海道から見る沖縄は遠い。
「しかし暇だな」
国土が静かだと暇だ。なんとなく腰に右手をやる。この辺りは私が住む近畿地方だ。お尻を触りながら、これは京都の東山の山並みだなと思う。その形といいなだらかさといいそんな感じだ。
と、東山の先を越えてそのまた先の逢坂山を越えたら滋賀県だ。私の勤務地だ。
「明日は月曜日か」
会社行くのいやだ。
さっきまで東山にいた右手、つまり対馬や隠岐島や佐渡島が北海道の後ろに回った。その時だけ対馬や隠岐島や佐渡島は私の右手に戻っていた。私の右手の5本の指はひとりの男になった。中指が頭で、人差し指と薬指が手で、親指と小指が足の男、それはつまり私自身だ。私自身は北海道の地面の奥底、つまり頭の下の洞窟に身を潜めている。
私は滋賀県から遠く離れた北海道の地底、ここでしばらくじっとする。明日になっても動かない。明日出社しなければどうなるだろう?明後日も出社しなければ騒ぎになるだろう。明々後日になれば捜索願が出るだろう。そうなれば警察が私を探すだろうと考えていたら、なんだかムズムズして私は洞窟から飛び出した。そして近畿地方から北を動き回った。つまり胸を掻きむしっていた。そのうち逃亡に疲れ果てた。
「あーあ」
結局右手は対馬や隠岐島や佐渡島に戻って、国土の夜はまた静かになった。
「行きたくない」
そう呟きながら私は眠ったようだ。
どれくらい経ったろうか、左手の先がなんだか変だ。何かを触っているか何かに触られている。
左手?そうだ私は国土だった。左手といえば四国だ。その遠い先端なら高知県か。高知県で何が起こっているのだ?
なんだか人がトコトコ歩いているような感触。俺の高知県を勝手に歩かないでくれ、と思った途端に目が開いた。ここは北海道だ。え?目の前に島がある。
「起きた?よく寝てたわね」
島は大きな横向きの顔になった。
「おかえり」
妻が旅行から帰って来たのだ。どこかの国土旅行から。
「よく寝てたから遊んでた」
妻は右手の人差し指と中指でチョキを作って動かした。人が歩く格好。そうか高知県を歩いていたのはこれだったのか。というか、高知県を旅していたのは妻だったのか。
「疲れた」
妻は服を脱いで私の隣に横になった。日本の隣に新しい国土が出来た。それは私の日本より起伏があった。それに温暖だし土も柔らかい。この感触なら作物もよく育つだろう。風光明媚だしなかなか住みやすそうだ。位置からするとアジア大陸だろうか。大陸からは対馬や隠岐島や佐渡島に向かって温暖な高気圧が張り出して来る。
「暑い」
対馬や隠岐島や佐渡島が高気圧を乗せて滋賀県方向に行く。
「今日は会社休もっ」
高気圧は東海、近畿、中国地方の黒雲を九州の先に追いやり、ついでに中部、関東、東北地方にかかっていた白雲も北海道の上に引き上げた。つまり私は右手で着ていたものを脱いだのだ。
私は原始人の姿になって、アジア大陸に上陸した。
「名前は知っていたけど、アジア大陸の細かな所って知らないんだよな」
私は改めてアジア大陸との交流再開の使命を感じた。
「国土」なんて言葉の響きが、えらく政治的で壮大でおかしかった。
国土になった私はベッドに仰向けに転がった。
頭がかゆくなった。頭は北海道だなと想像した。だから北海道がかゆいのだ。
北海道で何が起こっているのか想像した。
これは人が騒いでいるのだと想像してしばらくかゆみを味わっていたが、あまりにかゆいのでボリボリかいた。
するとフケがポロポロ落ちて来た。
警察が鎮圧に乗り出して逃亡者が出たんだと想像した。頭の横に落ちたフケをフッと吹いた。国土は静かになった。
静かになった国土を眺めてみた。眺めるのは目だから私は北海道にいることになる。
白い肌着に覆われた東北地方から関東、中部地方があり、カジュアルだかフォーマルだか分からないしわしわの黒ズボンが続く辺りは東海、近畿、中国地方で、指をさらけ出している足先は九州、沖縄地方といったところか。素足だけにその肌色がなんだか九州の火山を思わせる。そしてだらんと伸びた両腕の左側は位置的に四国で、右側は少しいい加減だが対馬や隠岐島、佐渡島といったところか。
「沖縄、また行きたいな」
そう呟いて足の指でグーパーをする。北海道から見る沖縄は遠い。
「しかし暇だな」
国土が静かだと暇だ。なんとなく腰に右手をやる。この辺りは私が住む近畿地方だ。お尻を触りながら、これは京都の東山の山並みだなと思う。その形といいなだらかさといいそんな感じだ。
と、東山の先を越えてそのまた先の逢坂山を越えたら滋賀県だ。私の勤務地だ。
「明日は月曜日か」
会社行くのいやだ。
さっきまで東山にいた右手、つまり対馬や隠岐島や佐渡島が北海道の後ろに回った。その時だけ対馬や隠岐島や佐渡島は私の右手に戻っていた。私の右手の5本の指はひとりの男になった。中指が頭で、人差し指と薬指が手で、親指と小指が足の男、それはつまり私自身だ。私自身は北海道の地面の奥底、つまり頭の下の洞窟に身を潜めている。
私は滋賀県から遠く離れた北海道の地底、ここでしばらくじっとする。明日になっても動かない。明日出社しなければどうなるだろう?明後日も出社しなければ騒ぎになるだろう。明々後日になれば捜索願が出るだろう。そうなれば警察が私を探すだろうと考えていたら、なんだかムズムズして私は洞窟から飛び出した。そして近畿地方から北を動き回った。つまり胸を掻きむしっていた。そのうち逃亡に疲れ果てた。
「あーあ」
結局右手は対馬や隠岐島や佐渡島に戻って、国土の夜はまた静かになった。
「行きたくない」
そう呟きながら私は眠ったようだ。
どれくらい経ったろうか、左手の先がなんだか変だ。何かを触っているか何かに触られている。
左手?そうだ私は国土だった。左手といえば四国だ。その遠い先端なら高知県か。高知県で何が起こっているのだ?
なんだか人がトコトコ歩いているような感触。俺の高知県を勝手に歩かないでくれ、と思った途端に目が開いた。ここは北海道だ。え?目の前に島がある。
「起きた?よく寝てたわね」
島は大きな横向きの顔になった。
「おかえり」
妻が旅行から帰って来たのだ。どこかの国土旅行から。
「よく寝てたから遊んでた」
妻は右手の人差し指と中指でチョキを作って動かした。人が歩く格好。そうか高知県を歩いていたのはこれだったのか。というか、高知県を旅していたのは妻だったのか。
「疲れた」
妻は服を脱いで私の隣に横になった。日本の隣に新しい国土が出来た。それは私の日本より起伏があった。それに温暖だし土も柔らかい。この感触なら作物もよく育つだろう。風光明媚だしなかなか住みやすそうだ。位置からするとアジア大陸だろうか。大陸からは対馬や隠岐島や佐渡島に向かって温暖な高気圧が張り出して来る。
「暑い」
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「今日は会社休もっ」
高気圧は東海、近畿、中国地方の黒雲を九州の先に追いやり、ついでに中部、関東、東北地方にかかっていた白雲も北海道の上に引き上げた。つまり私は右手で着ていたものを脱いだのだ。
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