98 / 367
非行機
しおりを挟む
「高飛びしようぜ」
それが彼の口癖だ。
彼は非行機と言って、まともに飛ばない飛行機だ。
いつも街の低空を飛んでは金品を風圧で巻き上げる。
そのまま高飛びをしては海外で豪遊している。
豪遊しては違う国に行きそこでまた金品を巻き上げる。
そして高飛びしては豪遊している。
とは言っても彼は飛行機だから人間のような豪遊はしない。
空から金品をまき散らすだけだ。飛行機界ではこれが豪遊らしい。
おかげで世界の経済状況は安定している。
人間はみんな喜んでいるが彼は自分は悪い奴だと思い込んでいる。
彼は飛んでばかりもいられない。たまには休む。休んで食べる。
彼の食事は人間だ。シレっと空港に停まって、シレっと乗って来る人間でお腹を膨らませる。
シレっと乗って来た人間を積んだ彼は、またシレっと空港を離陸する。
海を越え、山脈を超えて遠い国に着いた彼は、例によってシレっと空港に着陸して人間を降ろす。
これは残酷な話ではない。だから人間は咀嚼され消化されてはいない。ちゃんと生きていてちゃんと歩く。
空港で彼が降ろしたのは、高飛びしたかった人間たちだ。
でも彼らは悪人ではない。日常から高飛びしたかった人間たちだ。
仕事に疲れた人間、恋愛に破れた人間、学校が嫌になった人間、自分を変えたい人間、そんな人間たちを彼は非日常になった景色の中に解き放つ。
人間はみんな喜んでいるが彼は自分は悪い奴だと思い込んでいる。
今のところここまで書いた。
僕は知らない街のホテルでこの話を書いている。
僕も非行機が非行して運んでくれた人間のひとりだ。
新しい街、新しい景色の中で非行機に感謝しながらこれを書いているが、そんな景色の空をさっき非行機が、自分は悪い奴だと思い込んで飛んでいた。
いい奴だと書くと、僕は飛行機で連れ戻されるから。
それが彼の口癖だ。
彼は非行機と言って、まともに飛ばない飛行機だ。
いつも街の低空を飛んでは金品を風圧で巻き上げる。
そのまま高飛びをしては海外で豪遊している。
豪遊しては違う国に行きそこでまた金品を巻き上げる。
そして高飛びしては豪遊している。
とは言っても彼は飛行機だから人間のような豪遊はしない。
空から金品をまき散らすだけだ。飛行機界ではこれが豪遊らしい。
おかげで世界の経済状況は安定している。
人間はみんな喜んでいるが彼は自分は悪い奴だと思い込んでいる。
彼は飛んでばかりもいられない。たまには休む。休んで食べる。
彼の食事は人間だ。シレっと空港に停まって、シレっと乗って来る人間でお腹を膨らませる。
シレっと乗って来た人間を積んだ彼は、またシレっと空港を離陸する。
海を越え、山脈を超えて遠い国に着いた彼は、例によってシレっと空港に着陸して人間を降ろす。
これは残酷な話ではない。だから人間は咀嚼され消化されてはいない。ちゃんと生きていてちゃんと歩く。
空港で彼が降ろしたのは、高飛びしたかった人間たちだ。
でも彼らは悪人ではない。日常から高飛びしたかった人間たちだ。
仕事に疲れた人間、恋愛に破れた人間、学校が嫌になった人間、自分を変えたい人間、そんな人間たちを彼は非日常になった景色の中に解き放つ。
人間はみんな喜んでいるが彼は自分は悪い奴だと思い込んでいる。
今のところここまで書いた。
僕は知らない街のホテルでこの話を書いている。
僕も非行機が非行して運んでくれた人間のひとりだ。
新しい街、新しい景色の中で非行機に感謝しながらこれを書いているが、そんな景色の空をさっき非行機が、自分は悪い奴だと思い込んで飛んでいた。
いい奴だと書くと、僕は飛行機で連れ戻されるから。
1
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
追っかけ
山吹
ホラー
小説を書いてみよう!という流れになって友達にどんなジャンルにしたらいいか聞いたらホラーがいいと言われたので生まれた作品です。ご愛読ありがとうございました。先生の次回作にご期待ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる