刺朗

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気の抜けた解決

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後藤の目は凄まじい速さで文字を読んだ。
「これは…!」
後藤は絶句した。
「画面を見てみろ」
刺朗がパソコンを指差した。

【「これは…!」
後藤は絶句した。
「画面を見てみろ」
刺朗がパソコンを指差した】

画面にはつい今し方の会話の文字が流れている。

「ここはUSBの中なんだよ!」
刺朗が怒鳴る。
「すると私と平井君は…?」
後藤がぼんやりと呟いた。
「川原ろくろの作り物さ!」
刺朗が吐き捨てるように言った。
一瞬何事か分からなかった。
「オレも川原ろくろの創作なんだよ!!」
刺朗がまた怒鳴る。
後藤は唖然としたが、ならばあの奇妙な現象もようやく理解出来た。
物語の中の人間に、物語で書かれない部分の記憶などあるはずがない。
そんなふたりの会話と同時に画面に文字が流れて行く。

【「ここはUSBの中なんだよ!」
刺朗が怒鳴る。
「すると私と平井君は…?」
後藤がぼんやりと呟いた。
「川原ろくろの作り物さ!」
刺朗が吐き捨てるように言った。
一瞬何事か分からなかった。
「オレも川原ろくろの創作なんだよ!!」
刺朗がまた怒鳴る。
後藤は唖然としたが、ならばあの奇妙な現象もようやく理解出来た。
物語の中の人間に、物語で書かれない部分の記憶などあるはずがない。
そんなふたりの会話と同時に画面に文字が流れて行く】

「じゃ、川原は創作の中で死んだのか?」
「あぁ、そうだ。だからオレがどうやって奴を殺したかなんて場面はないんだよ!んー!だから!犯行も記憶もこれっぽっちも無いんだよ!」
画面はまた会話の通りの文字を打って行く。
刺朗は画面に向かって叫ぶ。
「おい!ろくろ!おまえはなんのためにオレを作ったんだ!」

【あぁ、そうね、タイトルのためだ。なかなかいいタイトルだと思ったんで、それらしいことをする奴がいいと思ったんでね】

画面に答えが流れた。
後藤が画面に向かって問いかける。
「君はなぜ、あんな不可解な死に方をした?」

【あとのストーリーと整合させるためだね。いろいろ奇怪な事件があったからね。そっちが先に浮かんでね、それに相応しい冒頭にしたんだ。どう?なかなかいいかな?】

平井が聞く。
「君は作家か?」

【そうさ、健全な生活をしている作家だよ。どうかな?この推理小説】

後藤が首をひねりながら刺朗に聞く。
「ところで君はなんでここがUSBの中だと分かったんだ?USBはついさっきまで私らが持っていたんだぞ」
「オレに思考があると思うか?」
刺朗は吐き捨てる。

【なんでだろうねー、とりあえず書いてみたけどってところかな?しかしそうだね、刺朗はどこで知ったことにしようかなぁ…】

画面が答えた。そして言葉を続けた。

【いや、独りで物語を書いているとね、面白いのかどうなのか分からなくなってね、ま、気分転換に登場人物に感想を聞こうかなと思ってね。どうかなこの先、どうしたらいいだろうね?頭がこんがらがってるんだ】

「ところで私らはあなたですか?」
平井が気の抜けた言葉を吐いた。

【ま、そうだね。あー、こんなことしてても答えは出ない!さ、落書きは消そう】
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