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対決①
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川原宅に着いた。
仏壇の前の祭壇には、川原の遺影と遺骨が置かれていた。
幸恵がお茶を持って来た。
後藤は「恐縮です」と断り、傍の風呂敷包みを卓上に置いた。
「少しは落ち着かれましたか?」
後藤は幸恵を気遣った。
「はい、なんとか」
幸恵は言い、川原の遺影に目をやった。
「今日は、こちらをお返しに参りました。捜査には大変役立ちました。ありがとうございました」
後藤は風呂敷包みに両手を添えて言った。
結び目を解きながら後藤は
「ただひとつ、まだ開いていないものがあるのです」
と言い、中の荷物とは別に、背広の内ポケットに入れていたUSBメモリを出した。
荷物の上にそれを載せて
「ろくろさんは明らかに自殺です。それはこれらのノートや本が証明してくれました。ただ私とこの平井は、ここに記されていた過去の事件についても明確にしないと、ろくろさんの一件は本当に解決したとは言えないと思っています。奥さんにとっては大変辛い部分があるのは十分承知の上でお願いします。このUSBを私たちにお貸し下さい」
と、USBの貸借を願い出た。
幸恵はじっと荷物を見ていた。特に感情の動きは伺えなかった。
それを見て後藤は言葉を続けた。
「この中のノートの末尾には、奥さんについてのことが書かれています。ただそれは、何かを言い残したまま終わっているようなのです。私は、言い残したことがUSBの中にあるのではないかと思っています。そしてそこに、ろくろさんの自殺の真意が記されているように思うのです。どうでしょうか奥さん、それを解明させていただけませんか?」
後藤が再度願い出ると、黙って聞いていた幸恵はゴクリと唾を飲み込んでから
「川原はもうおりません。ですからこれが何を明かそうとも、もう私にはどうでもいいことです。ただ、刑事さんには河原だけでなく私もいろいろお世話になりました。この荷物はそのお礼としてすべて差し上げます。どうぞお持ち下さい」
と言った。
河原宅を辞した後藤と平井は、幸恵からもらう形になった荷物を携えて署に戻った。
2人はさっそく新たな事件を担当させられていた。川原のことなど、何もなかったかのような署内の雰囲気だった。
担当事件の聞き込みから帰ると、平井は自分のノートパソコンに、例のUSBを差し込んだ。USBは入口だけ突破出来たが、後はフォルダが無限に開くまま放棄された状態だった。
USB担当だった刑事から、入口の突破方法は教えてもらっていた。
平井はその方法でUSBのロックを外した。するとフォルダが1つ出て来た。担当の話では、これを開くパスワードの解明に難儀し、ようやく見つけたパスワードで開いてもまたフォルダが出て、そこにもまたパスワードがあり…の無限ループだったということだ。
平井は最初のパスワードを打つためにフォルダをダブルクリックした。話ではそこで「パスワードを入れて下さい」と出るらしい。
ところが…
「後藤さん!」
平井は自席に座っている後藤に叫んだ。
仏壇の前の祭壇には、川原の遺影と遺骨が置かれていた。
幸恵がお茶を持って来た。
後藤は「恐縮です」と断り、傍の風呂敷包みを卓上に置いた。
「少しは落ち着かれましたか?」
後藤は幸恵を気遣った。
「はい、なんとか」
幸恵は言い、川原の遺影に目をやった。
「今日は、こちらをお返しに参りました。捜査には大変役立ちました。ありがとうございました」
後藤は風呂敷包みに両手を添えて言った。
結び目を解きながら後藤は
「ただひとつ、まだ開いていないものがあるのです」
と言い、中の荷物とは別に、背広の内ポケットに入れていたUSBメモリを出した。
荷物の上にそれを載せて
「ろくろさんは明らかに自殺です。それはこれらのノートや本が証明してくれました。ただ私とこの平井は、ここに記されていた過去の事件についても明確にしないと、ろくろさんの一件は本当に解決したとは言えないと思っています。奥さんにとっては大変辛い部分があるのは十分承知の上でお願いします。このUSBを私たちにお貸し下さい」
と、USBの貸借を願い出た。
幸恵はじっと荷物を見ていた。特に感情の動きは伺えなかった。
それを見て後藤は言葉を続けた。
「この中のノートの末尾には、奥さんについてのことが書かれています。ただそれは、何かを言い残したまま終わっているようなのです。私は、言い残したことがUSBの中にあるのではないかと思っています。そしてそこに、ろくろさんの自殺の真意が記されているように思うのです。どうでしょうか奥さん、それを解明させていただけませんか?」
後藤が再度願い出ると、黙って聞いていた幸恵はゴクリと唾を飲み込んでから
「川原はもうおりません。ですからこれが何を明かそうとも、もう私にはどうでもいいことです。ただ、刑事さんには河原だけでなく私もいろいろお世話になりました。この荷物はそのお礼としてすべて差し上げます。どうぞお持ち下さい」
と言った。
河原宅を辞した後藤と平井は、幸恵からもらう形になった荷物を携えて署に戻った。
2人はさっそく新たな事件を担当させられていた。川原のことなど、何もなかったかのような署内の雰囲気だった。
担当事件の聞き込みから帰ると、平井は自分のノートパソコンに、例のUSBを差し込んだ。USBは入口だけ突破出来たが、後はフォルダが無限に開くまま放棄された状態だった。
USB担当だった刑事から、入口の突破方法は教えてもらっていた。
平井はその方法でUSBのロックを外した。するとフォルダが1つ出て来た。担当の話では、これを開くパスワードの解明に難儀し、ようやく見つけたパスワードで開いてもまたフォルダが出て、そこにもまたパスワードがあり…の無限ループだったということだ。
平井は最初のパスワードを打つためにフォルダをダブルクリックした。話ではそこで「パスワードを入れて下さい」と出るらしい。
ところが…
「後藤さん!」
平井は自席に座っている後藤に叫んだ。
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