終末を執行します

キクイチ

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ネゴシエーターの候補者を見繕ってくれる?

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 ルディーがラジコンのタイヤとホイールを瞬間接着剤で貼り付ける作業に精を出していたら、エレノアがやってきた。

「局長、各国上層部が、利益配分の更なる高効率化を望んでいます」

「現状、証拠隠滅のために特殊部隊ホークアイに費用を割いてるから難しいね」

漆黒の獣ルガル 対策兵器の実験と称して、各国で持て余してる旧式の破壊兵器を獣化現場に打ち込むという提案がありますが……」

「それやったら、世論の矛先がラプトルに向いて開発計画が終了に追い込まれるよね?
 うーん……でも、破壊兵器を打ち込んで一緒にインフラも破壊すれば復興事業で金が循環しやすくなるから喜ばれるのか。人手もいい感じに減るから雇用も拡大するね。その方向で進めたい需要があるんだね。
 ただ、漆黒の獣ルガル 対策兵器の実験を理由にするのは危険すぎる。
 違う理由で新フェーズに移行させるほうが建設的で支持されやすいだろうね」

「では、どういった理由で破壊兵器を利用いたしましょうか?」

「自称『正義のテロリスト』でいこうか。研究所長に詳細を練らせよう。
 獣化関連の過激派なんていくらでもいるだろうし、そろそろ不満が爆発してもいい頃合いだ。
 ついでに、特殊部隊ホークアイを再編成してラプトルに出資していない国の新型兵器を盗ませて各国に配れば、各国上層部も喜ぶね。古い兵器も処分できるし。
 犯行はテロリストになすりつければいいね。
 諜報部隊ストリクスには、テロリストに仕立て上げた過激派連中を捕まえさせて、点数稼ぎをさせてあげればいいだろう。
 情報操作は、特殊部隊ホークアイに任せればいいか。
 そんな感じにすれば、すこしは利益還元できるんじゃないかな?
 ただし、兵器を使うのは、烙印者ネフィリム刻印者エクスシアがいない時がいいね。
 彼女達を下手に刺激するわけには行かないからね」

「かしこまりました。早速、調整致します」


 ……


 ザウエル連邦のとある田舎町で破壊兵器によるテロが発生した。

 一人で現場に急行したウォードはテロリストに射殺されて死んでいた。

 現場に遅れて到着したリカルドは思った。

<間一髪だった。
 あのバカについて行ってたら、俺も死んでたな。
 あいつ、やっぱりバカだったな。
 現場に急行したら、テロに巻き込まれるだろうが……。
 だから止めたのに。
 別の支部でテロリストを何人か検挙して点数稼いだ奴らがいたものだから、欲を出しすぎたな>


 ……

 
 ルディーがラジコンの引きダンバー作りに精を出していたら、エレノアがやってきた。

「局長、各国上層部がお喜びの様です」

「それはよかった」

諜報部隊ストリクスの支持率も上がった様で大幅な予算の増加が見込めるそうです」

「でも、諜報部隊ストリクスには還元されないのでしょ?」

「ええ、もちろんです。各国上層部が潤うようですね。
 おかげで当社への予算枠も増加していただけそうです。
 ところで、そろそろ仮面舞踏会マスカレードが始まりそうですが、
 刻印者エクスシアの対策はいかが致しましょうか?」

烙印者ネフィリムが動く様なら、烙印者ネフィリムと交渉して見たいね。
 刻印者エクスシアより自由そうだし。
 運が良ければ、ラプトルの研究成果ってことにできるかもしれないしね。
 交渉人ネゴシエーターの候補者を見繕ってくれる?
 あと、監視カメラの設置台数も増やそうか」

「かしこまりました」


 ……

 
 仮面舞踏会マスカレードは、カナンへの移住権の争奪戦だ。

 漆黒の獣ルガルから採取できる浄化の欠片ウルズをいかにたくさん集めたかで、勝敗が決まる。一番たくさん集めた者しか移住はできない。


 刻印者エクスシアは、人の状態の漆黒の獣ルガルを察知でき、人の額にτタウの刻印を人差し指の爪にはめた特殊なナイフで刻み付けることで、人から漆黒の獣ルガルへと解放できる。
 浄化の欠片ウルズは獣化した漆黒の獣ルガルを倒さないと入手できない。そして獣化した漆黒の獣ルガルは、人の姿には戻れないのだ。


 『最初の審判』でカナンへ連れて行けなかった〝憂い嘆く者〟たちが漆黒の獣ルガルになる。心を罪人に傷つけられ、ノドにつなぎ止められている、救済されるべき人々だ。
 彼らが漆黒の獣ルガルになるのは、傷ついた心の断末魔だ。
 獣化し、断末魔を上げて、穢れを振りほどき、カナンへと誘われるのである。


 上位存在にも罪人は多い。
 刻印者エクスシア烙印者ネフィリムも上位存在の罪人である。

 彼女達は浄化の欠片ウルズを集めて、自らを浄化させる術を持っている。
 仮面舞踏会マスカレードの敗者達は、漆黒の獣ルガルを倒し続けることで、気が遠くなるほど遠くにあるカナンへの道を模索しているのだ。

 刻印者エクスシアにはツガイの人間がいる。
 今回の仮面舞踏会マスカレード7thセブンスと呼ばれることになる、ノナという刻印者エクスシアと、クロトという青年もそうだ。

 仮面舞踏会マスカレードは罪人の救済措置でもあるのだ。
 勝利した一組のみが、共にカナンへと行けるのだ。

 しかし、刻印者エクスシアとツガイの人間は魂が入れ替わっている。
 元に戻ることはない。

 上位存在は、自らの意思で仮面舞踏会マスカレードへの参加を表明し、ツガイとなる人間を指名し、その人間に受け入れられる必要がある。

 人間となった上位存在は、負ければ、仮面舞踏会マスカレードに関する記憶が消され、普通の人間としての記憶だけ残され、ノドで人間として生涯を終えるのだ。しかし、刻印者エクスシアとなった人間は、記憶を失わないまま、ノドで生き続ける。ただし、人間に認識されず干渉もできない幽霊の様な存在として。

 ツガイ達は心の底で、深く繋がりあっている。
 ゆえに、敗者となった刻印者エクスシアには、あまりにも残酷な現実が待っているのだ。
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