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バーバリアン
暗中模索#3
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────ミユキ(アラクネ種、ニダヴェリール宮廷特務機関、第一補佐官)
研究本部の転生者の対応が、ひと段落した。
すでに、かなり前に転生を終えたおカルさんを本部長として、新体制が稼働している。
研究者の評価に厳しいゼディーさんですら、かなりの高評価だ。
私だけでなく、長年ゼディーさんから苦情をいわれてきたルフィ姉とルナ姉も、ようやく安心することができたようだ。
コウメイ以外の研究者は皆、イサナミ自治区のキヨスミ学園の卒業生らしく、後進の育成について、学園の指導方針を取り入れることが検討されている。
リシアさんは、学園の卒業生の受け入れにも積極的なようだ。
イサナミ自治区は、人材の育成機関として十分すぎる信頼を獲得したらしい。
イサナミ自治区の最高評議会は、人材の質の向上を中心とした政策を推し進める方針に舵を切ったそうだ。
私は、ククリンの執務室で、たまった仕事を片付けている。
アカネとユキナには、ミヅキの応援でニブルヘイムの各種族のコロニーの指導者の育成をお願いした。
やっぱり、ここが一番落ち着く。
「ミユキ、ブリュンヒルデの噂聞いてる?」
「うん、クーデター起こすのでしょ?」
「なにそれ? 初耳」
「え? じゃ、なんの噂?」
「とりあえず、そっち教えて」
「なんか、派閥のメンバーがすごいらしい。それで種族長が大挙して鞍替えしてるんだって。しかもしっかりサポートしてくれるから、コロニーの情勢も回復してきたってさ。でも、議席が過半数を超えないように引き抜き行為が増えて、伸び悩んでるんらしい。すでに大勢力で、ニーヴェルング鉱床の主導権もあるから、独立でもするんじゃないかって噂されてる」
「あははは。クーデターなんて、ヴェルキエーレ数名で鎮圧できちゃうからありえないよ。ブリュンヒルデ本人が一番わかってる」
「じゃ、ククリンの情報は?」
「似た感じだけど、ちょっとちがうね。
偶然が重なって、ブリュンヒルデの派閥ができちゃったらしい。
なぜか派閥もないのに種族長が会いにきて傘下にしてほしいというから、何も考えずにOKだしてたら、大変な数になってヒルデブラントさんに相談したんだって」
「ひどいね。ブリュンヒルデって馬鹿なの?」
「いちおう天才肌の知略家だよ。馬鹿だけど」
「あはは。それでどうなったの?」
「第6席にいたフレドライヒさんが、全部仕切ってくれてる。
そういうの一番得意な人だからね。
ただ、数が多いから、派閥と関係ない上位席にいたアースバインダーに声をかけて種族の面倒を見させてるんだって」
「そっか、それで、さらに勢力が増えたのか。待遇もいいならさらに人気が出るよね」
「うん。ただ、引き止めも、勧誘もしないから、今の議席数で均衡してるみたいだけどね」
「クーデターは、敵対勢力が流したデマ?」
「どうかな? ブリュンヒルデは何もせず普段通りだし、フレドライヒさんたちは種族のコロニーの面倒しかみないから、気味が悪くて仕方ないのかも?」
「ある意味、欲のない人たちが一番怖いよね」
「そうだね。しかもフレドライヒさんたちは、ブリュンヒルデの紹介で、ティフォーニアが主催してるイサナギの修練に参加し始めちゃったから、他のアースバインダーは、かなり焦ってるみたい」
「あはは。もう、わけわかんないだろうね。
ガイゼルヘルの一派はどうしてるの?」
「わけがわからず放心状態みたい。ガイゼルヘルさんに聞いてもわからないだろうし」
「ガイゼルヘルは一派をティフォーニア主催の修練には誘わないの?」
「そういうの気が回らない人だから、相手から求められない限り誘わない」
「エキドナうざいんでしょ? ティフォーニア主催の修練に混ぜちゃえば?」
「エキドナは、すでに参加してる」
「ほんと?」
「ニダヴェリールから正式なクレームを出したら、ティフォーニアが自分で面倒を見ることにしたの。エキドナの特性は水面だし、水面はティフォーニア以外、ブリュンヒルデしかいなかったみたいだから、相手にちょうどいいって思ったらしい」
「それって、ブリュンヒルデに丸投げしただけだよね?
あとブリュンヒルデの相手が面倒になっただけだよね?」
「うん、そうだろうね。ティフォーニアらしいね」
「じゃ、しばらく静かになりそうだね」
「うん」
研究本部の転生者の対応が、ひと段落した。
すでに、かなり前に転生を終えたおカルさんを本部長として、新体制が稼働している。
研究者の評価に厳しいゼディーさんですら、かなりの高評価だ。
私だけでなく、長年ゼディーさんから苦情をいわれてきたルフィ姉とルナ姉も、ようやく安心することができたようだ。
コウメイ以外の研究者は皆、イサナミ自治区のキヨスミ学園の卒業生らしく、後進の育成について、学園の指導方針を取り入れることが検討されている。
リシアさんは、学園の卒業生の受け入れにも積極的なようだ。
イサナミ自治区は、人材の育成機関として十分すぎる信頼を獲得したらしい。
イサナミ自治区の最高評議会は、人材の質の向上を中心とした政策を推し進める方針に舵を切ったそうだ。
私は、ククリンの執務室で、たまった仕事を片付けている。
アカネとユキナには、ミヅキの応援でニブルヘイムの各種族のコロニーの指導者の育成をお願いした。
やっぱり、ここが一番落ち着く。
「ミユキ、ブリュンヒルデの噂聞いてる?」
「うん、クーデター起こすのでしょ?」
「なにそれ? 初耳」
「え? じゃ、なんの噂?」
「とりあえず、そっち教えて」
「なんか、派閥のメンバーがすごいらしい。それで種族長が大挙して鞍替えしてるんだって。しかもしっかりサポートしてくれるから、コロニーの情勢も回復してきたってさ。でも、議席が過半数を超えないように引き抜き行為が増えて、伸び悩んでるんらしい。すでに大勢力で、ニーヴェルング鉱床の主導権もあるから、独立でもするんじゃないかって噂されてる」
「あははは。クーデターなんて、ヴェルキエーレ数名で鎮圧できちゃうからありえないよ。ブリュンヒルデ本人が一番わかってる」
「じゃ、ククリンの情報は?」
「似た感じだけど、ちょっとちがうね。
偶然が重なって、ブリュンヒルデの派閥ができちゃったらしい。
なぜか派閥もないのに種族長が会いにきて傘下にしてほしいというから、何も考えずにOKだしてたら、大変な数になってヒルデブラントさんに相談したんだって」
「ひどいね。ブリュンヒルデって馬鹿なの?」
「いちおう天才肌の知略家だよ。馬鹿だけど」
「あはは。それでどうなったの?」
「第6席にいたフレドライヒさんが、全部仕切ってくれてる。
そういうの一番得意な人だからね。
ただ、数が多いから、派閥と関係ない上位席にいたアースバインダーに声をかけて種族の面倒を見させてるんだって」
「そっか、それで、さらに勢力が増えたのか。待遇もいいならさらに人気が出るよね」
「うん。ただ、引き止めも、勧誘もしないから、今の議席数で均衡してるみたいだけどね」
「クーデターは、敵対勢力が流したデマ?」
「どうかな? ブリュンヒルデは何もせず普段通りだし、フレドライヒさんたちは種族のコロニーの面倒しかみないから、気味が悪くて仕方ないのかも?」
「ある意味、欲のない人たちが一番怖いよね」
「そうだね。しかもフレドライヒさんたちは、ブリュンヒルデの紹介で、ティフォーニアが主催してるイサナギの修練に参加し始めちゃったから、他のアースバインダーは、かなり焦ってるみたい」
「あはは。もう、わけわかんないだろうね。
ガイゼルヘルの一派はどうしてるの?」
「わけがわからず放心状態みたい。ガイゼルヘルさんに聞いてもわからないだろうし」
「ガイゼルヘルは一派をティフォーニア主催の修練には誘わないの?」
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「エキドナは、すでに参加してる」
「ほんと?」
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「それって、ブリュンヒルデに丸投げしただけだよね?
あとブリュンヒルデの相手が面倒になっただけだよね?」
「うん、そうだろうね。ティフォーニアらしいね」
「じゃ、しばらく静かになりそうだね」
「うん」
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