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アースバインダーの帰還#3
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────シンリック=メイリン=ミルファ(人狼ベスティア種、ヘルヘイム宮廷司祭、アースバインダー)
アースバインダーが3割ほど帰還を果たした頃、赤色のホムンクルスに関する情報が意外なところから出て来た。
イサナミ自治区のアースバインダー、エイヴヘルが、ヒューマノイドの欠陥を補う方法をヨトゥンヘイムに発注していたらしいのだ。
ガイゼルヘルを通さず、直接交渉していたため、ガイゼルヘルの耳には届いていなかったらしい。
エイヴヘルと仲が良かった、王侯第21席、リックヘルトの証言だった。
空色のホムンクルスという擬似生命体で、ヒューマノイドの遺伝子に根付かせて共生させることで、一定の個体数を自然に紛れ込ませ、ヒューマノイドの精神状態の安定化を図りヒューマノイドの社会レベルを一定以上に保つための技術らしい。
遺伝子への定着方法は、まさに赤色のホムンクルスのものと同じだった。
シルフィードという名の、存在が曖昧な擬似生命体をヒューマノイドに定着させ、遺伝子情報を書き換えるそうだ。
また、脳に刺激を与え、空色のホムンクルスに近い行動を取れるようにサポートするらしい。
先走って実験用のシルフィードが数千体納品済みで、ガイゼルヘルの許可を取ってから実験を開始する予定だったそうだ。
しかし、その前に大崩落が起きたため、その影響で実験用のシルフィードが異常な事態で起動して逃げてしまったのではないか、とのことだった。ハウントはシルフの成れの果てではないかという見解らしい。
ゼディーに相談したところ、早速、ヨトゥンヘイムと調整してくれた。
エオリアン=ユーフィリアは、最近機嫌が良いらしく、無償で開発資料を提供してくれたそうだ。生命の根源体の状態がかなり改善していることが機嫌の良い理由らしい。
ゼディーは、その開発資料をデネブに精査してもらい、赤色のホムンクルスとの関連性を検証してもらった。
デネブの話では、実験用のシルフィードの起動装置には調整機能がついているので、現地のヒューマノイドを使って、どの程度のサポートが必要かを調整する必要があったはずだという見解を示した。
設計と真逆の結果になったのは、大崩落の際に初期設定値がおかしな状態にでもなっていたのではないか、と推測したそうだ。
ゼディーは、デネブに低次元世界でも開発可能なシルフィードを再設計してもらい、その開発資料をニダヴェリールに新設された研究所に持ち込み、イサナミ自治区の研究者が理解できるレベルまでわかりやすく書き直すように依頼した。
呪いの発端は、善意だったらしい。
傍迷惑な善意だ。
被害者の一人としては、とても複雑な気分だった。
アースバインダーが3割ほど帰還を果たした頃、赤色のホムンクルスに関する情報が意外なところから出て来た。
イサナミ自治区のアースバインダー、エイヴヘルが、ヒューマノイドの欠陥を補う方法をヨトゥンヘイムに発注していたらしいのだ。
ガイゼルヘルを通さず、直接交渉していたため、ガイゼルヘルの耳には届いていなかったらしい。
エイヴヘルと仲が良かった、王侯第21席、リックヘルトの証言だった。
空色のホムンクルスという擬似生命体で、ヒューマノイドの遺伝子に根付かせて共生させることで、一定の個体数を自然に紛れ込ませ、ヒューマノイドの精神状態の安定化を図りヒューマノイドの社会レベルを一定以上に保つための技術らしい。
遺伝子への定着方法は、まさに赤色のホムンクルスのものと同じだった。
シルフィードという名の、存在が曖昧な擬似生命体をヒューマノイドに定着させ、遺伝子情報を書き換えるそうだ。
また、脳に刺激を与え、空色のホムンクルスに近い行動を取れるようにサポートするらしい。
先走って実験用のシルフィードが数千体納品済みで、ガイゼルヘルの許可を取ってから実験を開始する予定だったそうだ。
しかし、その前に大崩落が起きたため、その影響で実験用のシルフィードが異常な事態で起動して逃げてしまったのではないか、とのことだった。ハウントはシルフの成れの果てではないかという見解らしい。
ゼディーに相談したところ、早速、ヨトゥンヘイムと調整してくれた。
エオリアン=ユーフィリアは、最近機嫌が良いらしく、無償で開発資料を提供してくれたそうだ。生命の根源体の状態がかなり改善していることが機嫌の良い理由らしい。
ゼディーは、その開発資料をデネブに精査してもらい、赤色のホムンクルスとの関連性を検証してもらった。
デネブの話では、実験用のシルフィードの起動装置には調整機能がついているので、現地のヒューマノイドを使って、どの程度のサポートが必要かを調整する必要があったはずだという見解を示した。
設計と真逆の結果になったのは、大崩落の際に初期設定値がおかしな状態にでもなっていたのではないか、と推測したそうだ。
ゼディーは、デネブに低次元世界でも開発可能なシルフィードを再設計してもらい、その開発資料をニダヴェリールに新設された研究所に持ち込み、イサナミ自治区の研究者が理解できるレベルまでわかりやすく書き直すように依頼した。
呪いの発端は、善意だったらしい。
傍迷惑な善意だ。
被害者の一人としては、とても複雑な気分だった。
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