上 下
144 / 259
イサナミ自治区

雪のカケラ#6

しおりを挟む
────キサ=カザマ(ヒューマノイド、イサナミ自治区、流水りゅうすい・家元)


 待ち合わせ場所に到着したら、近くのアパートメントから、ユキヒラの気配がした。

 見上げたら、ベランダから手を振っていた。
 下に降りる合図をして、アパートメントのエントランスから出てきた。
 
「おまたせ、着替え持ってきてくれた?」

「なにやってたの? 誰も殺してないよね?」

「まだ」

「まだって、どういうことよ?」

「とりあえず、あそこに車を隠して、一緒にきてくれる?」

 ユキヒラに案内されて、アパートメントに入って行った。

 ユキヒラが手を振っていた部屋に入ると、若い男性が倒れていた。
 ユキヒラに体の動きを封じられてしまったようだ。


「キサ=カザマ? え? 君たちイサナミ?」
 男がしゃべった。
 こいつ私をしってるのか。
 まあ、しかたないか。

「姉さん、これみてよ」
 ユキヒラは、コンソールを指差した。
 生物兵器か。この街の学者の本業ってところね。

「で、どうするの?」

「エージェントと明日会うらしいよ、エージェントをお土産にしたい」

「叔父様よろこびそうね。で、ここに泊まるの?」

「ヤニ臭いのどうにかならないかな?」

「これだけひどいと無理でしょ?」

「じゃ、下の部屋でも見て来る」

 私は、ユキヒラの腕を掴んだ。

「なに?」

「なにって、下の部屋で何するつもり?」

「ヤニ臭くないか確認に」

「あきらかに誰か住んでるわよね?」

「うん。でなければ泊まれないじゃん」

「住人をどうする気?」

「その人次第かなー」

「イサナミ以外の人を人間扱いしないのはやめなさい!」

「ちゃんと区別してるさ。クソ野郎は殺すけど、善良な人は放置する。気流を見ればいっぱつさ。本当に確認行くだけだよ。気配を消して確認するからばれないよ」

「だめ」

 私は、倒れている男に話しかけた。

「あんた、学者なんでしょ? ヤニ臭いの簡単に除去できないの?」

「え? あー、できます、すぐやります、なので命だけは助けてください」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Re:D.A.Y.S.

結月亜仁
ファンタジー
足音、車のエンジン音、カラスの鳴き声。草の匂い、魚の焼けた匂い、香水の香り。 体を包む熱、服がこすれ合う感触、肌を撫でる風。電柱を照り付ける夕日、長く伸びた影、 闇に染まっていく空。そのすべてが調和したこの平凡な世界に、自分という人間は存在する。 今日も何事も無く、家へ帰り、風呂に入って、飯を食べて、寝るのだろう。 それは、もう決まりきったことだ。だから、今日という日が何か特別な意味を持っているというわけではない。たぶん明日だって、明後日だって、一か月後だって、一年後、三年後だって、自分を取り囲む環境や状況は変わったとしても、本質は変わることは無いと思う。それが良いことなのか、悪いことなのかは分からない。ただ、この世界が、そういう風に出来ているだけのことだ。そんなこと、当たり前で、何気ない普通の出来事だと、そう思っていた。 はずだった。 気が付くと、そこは森の中。何故か記憶喪失となって目覚めたユウトは、どこか見覚えのある仲間と共に、自分は剣士として行動していた。わけも分からず付いて行くと、未知の化物と遭遇し、ユウトたちは危機に瀕してしまう。なんとか切り抜けることができたものの、ユウトは気を失ってしまった。 次に目が覚めた時は、いつもの教室。何事も無く笑い合う仲間を前に、ユウトは違和感を覚えるが…? それは、これから始まる物語の、序章にすぎなかった。 これは、二つの世界が交錯する、たった一人の少女を救うための異世界ファンタジー。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

移転した俺は欲しい物が思えば手に入る能力でスローライフするという計画を立てる

みなと劉
ファンタジー
「世界広しといえども転移そうそう池にポチャンと落ちるのは俺くらいなもんよ!」 濡れた身体を池から出してこれからどうしようと思い 「あー、薪があればな」 と思ったら 薪が出てきた。 「はい?……火があればな」 薪に火がついた。 「うわ!?」 どういうことだ? どうやら俺の能力は欲しいと思った事や願ったことが叶う能力の様だった。 これはいいと思い俺はこの能力を使ってスローライフを送る計画を立てるのであった。

流れ者のソウタ

緋野 真人
ファンタジー
神々が99番目に創ったとされる世界――ツクモ。 "和"な文化と思想、感性が浸透したその異世界には、脈々と語り継がれている、一つの伝承があった。 『――世、乱れる時、光の刀持ちて、現れる者、有り。 その者、人々は刀聖と呼び、刀聖、振るう刀は、乱れを鎮め、邪を滅し、この地を照らす、道しるべを示さん――』 ――その、伝承の一節にある、光の刀を持つ旅の青年、ソウタ。 彼が、ひょんなコトから関わったある出来事は、世界を乱す、大戦乱への発端となる事件だった。 ※『小説家になろう』さんにて、2016年に発表した作品を再構成したモノであり、カクヨムさんでも転載連載中。 ――尚、作者構想上ですら、未だ完結には至っていない大長編となっておりますので、もしも感想を頂けるのでしたら、完結を待ってではなく、章単位や話単位で下さります様、お願い申し上げます。

婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。 我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。 その為事あるごとに… 「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」 「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」 隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。 そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。 そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。 生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。 一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが… HOT一位となりました! 皆様ありがとうございます!

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...