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ラグ=ナ=ローク
GÖTTERDÄMMERUNG#1
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────ククリ(人狼ガルダーガ種、ルーノ族・長老、ニダヴェリール宮廷特別顧問)
新種族達の孵化ラッシュが始まり、アストレアが大忙しのころ、ルナディアとルカティアが私のところに相談にきた。
「ククリさん、今大丈夫?」
「うん、大丈夫。
あれ? 二人で来るなんて珍しいね。嫌な予感しかしないのだけれど……。
姉妹喧嘩の仲裁は私の仕事じゃないからルフィリアに頼んでね?」
「勝手に決めつけないでよ」
ルカティアが否定した
「ルフィ姉は、うちで預かってる4人が孵化したから、その対応で忙しいのよ」
ルナディアは否定していないようだ。
「4人とも孵化したの? あとで挨拶に行かなきゃ」
「ひと段落したら、ルフィ姉がここに連れてくるっていってたよ?」
「そっか、じゃあ、おとなしく待っていた方がいいね。楽しみだ。
で、どんな喧嘩したの?」
「だから、喧嘩じゃないってば」
ルカティアが否定した
ルナディアが口を開いた。
「あのね、和声干渉と干渉防御の攻防だと物足りなくなってきたから、もっと実践的な訓練をしたいなって思ったの。でも、いいのが思いつかなくて、殺し合いみたいになっちゃいそうだから、ククリさんなら、シルバーリングがやってる訓練とか詳しそうだから教えてもらいに来たの」
「なるほど、危険性のすくない姉妹ゲンカのやり方を聞きにきたってことだね?」
「喧嘩じゃないわよ」
ルカティアが否定した
「まぁ、そんなところかな?」
ルナディアは肯定した。
ルカティアは不満なようだ。
「私が幼少の頃に両親に稽古をつけてもらっていた時は、爪と急所に接触センサーをつけて、爪には緩衝材、急所側は緩衝材とオリハルコンを貼り付けて安全を確保して、一度でも触れられたら負けっていうゲームをやっていたよ。
急所全部につけるのは大変だし無理があるから、お互いに自分が狙いやすい急所を何箇所か指定できるんだ。
両親はハンデをつけてくれて、私の急所は1つだけ、しかも私が指定していい。両親の急所は10箇所で私が指定していいってルールでやっていた。
でも、一度も勝てなかったら、罰ゲームばかりさせられていたね」
「罰ゲーム? 」
「シルバーリングの組合が、生物研究所の実験動物の処分を引き受けていたんだ。自分達の子供の育成用に、強さごとに檻を分けて、人狼に敵意剥き出しの獣を大量に飼育していたんだ。両親が任務で留守になるときはそこに放り込まれて、帰ってきたら出してもらえるのだけれど、罰ゲームのときは、いつもより強力な獣がいる檻に放り放り込まれるんだよ。倒すとかそういうレベルじゃなくて、生き残るのに必死な状況だったから、今生きているのが不思議なくらいだよ。しかもその獣たち、特殊言語で吠えるから、本能的に強力な法術式をつかえるんだ。文字通りバケモノの巣窟で何日も逃げ回ってたね……」
「ククリさんが、別格なのわかった気がする」
ルカティアが半分呆れながらいった。
「そうでもないよ。シルバーリングの子はそうやって育った後、シルバーリングの育成機関の入所試験受けて絞り込まれて、その先に待っているのが、それ以上の過酷な訓練だからね。私はその前に両親を失って親戚に引き取られることになったから離脱したけど、別格といえるのはその先に進んだ子たちだろうね。すくなくとも戦闘や殺戮については」
「ガルダーガって、すごいこと平気でやってるのね。信じられない」
ルカティアは完全に呆れていた。
「シルバーリングの育成方法は異常だから気にしない方がいいよ。
シルバーリングの相手なんか、ヴェルキエーレやケルベロスに任せておけばいいと思う。長期間の血の滲むような殺戮ための訓練が無意味に思えるくらいに、あっさり殺されるからね。
さて、さっき言ったゲームくらいしか、危険性のすくなそうな姉妹ゲンカのやり方はおもいつかないけどどうかな?」
「たしかにそれなら、和声干渉と干渉防御の実践的な攻防になるわよね?」
ルナディアは興味を持ったようだ。
「和声干渉の技術は、通常の法術式の破壊や改変にも応用できるから、和声干渉意外は特殊言語にこだわる必要はないしね。
ルールやハンデを工夫すれば、別の種族とだってできるゲームだね。筋力が桁違いに異なるケルベロスとドラッケン、アースバインダー達は例外だけど。
二人で試してルールを考えてみたら?
君たちの弟子の育成にも応用できるかもしれないよ?」
「そうね、ためしてみるわ。とても参考になった。ありがとね」
ルナディアはそういうと部屋を後にした。
……
トントン……。
嫌な予感がする。
「失礼しまーす。ククリさん、いまよろしいですか?」
ルナディアとルカティアだ。
「忙しいけど、べつにいいよ。手短に終わらせてね」
「じゃ、遠慮なく」
ルナディアの唯我独尊は健在だ。
「ごめんね、本当にいいの?」
ルカティアは私に対してはいつも謙虚でいい子だ。
「姉妹ゲンカのこと?」
「まぁ、そんなかんじ」
「で、どうなったの?」
ルナディアが口を開いた
「いろいろ試行錯誤してみたの。これみてよ」
ルナディアがテーブルの上に特殊な機材をたくさんならべた。
「これ、どうしたの?」
二人が作れるレベルの品ではないのは明らかだった。
「すごいでしょ! ゼディーさんが作ってくれたの!」
「ルシーニアに話は通したの?」
「うん。ゼディーさんからね」
「普通、逆だからね?」
「わかってるって、たまたま宮殿に来てたから、相談したらすごーく興味持ってくれたの。そしたら、翌日にこれ持って来てたのよ? 驚いちゃった」
「ゼディーのツボはよくわからないな……。運がよかったね。ちゃんとお礼しておきなよ?」
「もちろん」
「で、私に見せびらかしにきたの?」
「んー、それもあるけど。相手になって欲しいの!」
「えー? 私、忙しいのだけれど」
「1回だけでいいから、おねがい!」
「じゃ、1回だけね……」
「わざと負けて早く終わらせるの無しだよ?」
「えー? じゃあちょっと戦ってすぐ負ける」
「手を抜いたら罰ゲームで納得いくまで相手してもらうからね」
「わかったよ、ハンデは?」
「なしで」
「二人は若いのだから、お婆ちゃんの私にハンデくれてもいいじゃない?」
「出身種族の成長曲線で考えると対して変わらない歳でしょ?」
「わかった。そっちはやり慣れてるだろうけど、私は数万年ぶりなのだから少しは気を使ってね」
「もぅ、油断させよとしてもだめだからね」
「で、君たちの罰ゲームはなに?」
「え? そんなのないよ?」
「だめ。私だけ罰ゲームとかフェアじゃないよね?
君たちが負けたらルフィリアの手伝いで新種族の固有言語体系と特殊言語体系の整備をやること、いい?」
「それルフィ姉だってたいへんだーってぼやいてたやつだ」
「なら、いつも苦労ばかり掛けているルフィリアの力になってあげようね。約束してくれたら、全力であいてするよ」
「……わかった。本当に全力でやってね?」
「うん。二人同時でもいいよ? どうする?」
「一対一で!」
「で、これどうするの? 獣化するの?」
「部屋が荒れちゃうから獣化なしで、好きな指に4つつけてね、片手に集中してもいいし、両手に分散してもいいよ」
「急所は?」
「これを手首につけて、端末開いて設定」
「へー、さすがゼディーだ。いい仕事してるね。
強力な防御シールドも展開されるから安全にできるのか。
しかも精霊術式だから人狼の法術式と干渉しないところがいいね」
「うん。急所は自分で設定。数は10個」
「設定した」
「デフォルトでいいの?」
「いいよ。早く終わらせないと、仕事が進まないからね」
「じゃ、私の急所はこれで」
「あはは」
「なによ?」
「それ、弱点を教えているようなものだよ? まあいいけどさ」
「じゃ、変える! これでいいかな?」
「あまり変わってないけどね。開始の合図は?」
「ルカティアよろしく!」
「観測データも記録するのか? 本格的だね。
ああ、ゼディーに私のデータ送るように要求されたね?」
「うん。それが条件」
「なるほど」
「準備できたわ。二人ともいい?」
「いつでもいいよ」
「こっちも」
「じゃ、開始」
ぴぴぴぴ……
「はい、私の勝ちー。選手交代ね」
「……瞬殺された、こんなに実力差あるの? お願い、もう一回!」
「だめ。観測データを調べて敗因を考えな」
「ルカティア、おいでー」
ルカティアと交代した
「では、開始」
ぴぴぴぴ……
「私の勝ち。お疲れ様」
「……なにこれ?、勝てる気がしない」
「約束だから、ルフィリアの手伝いよろしくね」
「わかった……また相手してくれる?」
「んー、ルフィリアの手伝いの出来次第かな?」
「えー」
「私にメリットが一つもないからね。次挑戦するときはそれだけのもの用意してね」
「……」
二人は、よほど悔しかったのか、トボトボと部屋をあとにした。
ゼディーも変なおもちゃつくったな。
ヴェルキエーレの訓練に応用したいから人狼でデータを集めてるってところだろうな。
……
「ククリ、いるか?」
ゼディーだ。
「うん、どうぞ。珍しいね。そういえばルナディアとルカティアの姉妹ゲンカの件、お手数かけちゃって悪かったね」
「姉妹ゲンカ? ああ、あのゲームのことか。
問題ないよ、こっちもいいデータ取れてるから」
「やっぱりか。ヴェルキエーレには応用できそう?」
「もうすこしデータ収集が必要かな」
「で、どうしたのわざわざ?」
「あのゲームのデータ収集のことでちょっと相談があってね」
「ゼディーにしては珍しく、いやーな予感のする相談がきたなー」
「さすがに勘が鋭いね。ククリの戦闘データに興味があるんだ。
あの二人だと十分なデータ取れないから、もっと強い相手と試合してもらえない?」
「えー? あの二人のデータで十分でしょ?」
「最初はそう思ってたけど、ククリの観測データが想像以上に面白くてね。
絶対に正攻法をしないで強い相手を切り崩す君の技術は一級品だから、ヴェルキエーレの教材にしたいのさ」
「もー、そういう感じで頼まれたら絶対断れないじゃん。
で、だれと戦うの?
アースバインダーとかはやめてね。死んじゃうから」
「死なないようにシールドを強化しておくから大丈夫だよ」
「本当にアースバインダーとやれって?
シルバーリングでもツーマンセルでやっとだよ?」
「だから、ハンデをつける。ハンデ付きならいけそうだろ?
アースバインダーの二人も興味津々だ。
リエルも手合わせを希望してる」
「そのおもちゃ、そんなに広めちゃったの?」
「データ取りたいからね」
「戦闘の駆け引きならエリューデイルの方が上手だよ。
エリューデイルに頼みなよ」
「エリューデイルのデータは収集済み。
ヴェルキエーレの教材としてまとめてる最中だ」
「その様子だと、ルシーニアとティフォーニアにも話は通ってるんでしょ?
外堀埋めてから交渉するのが君のやり方だしね」
「あはは、みすかされてるなー。まぁ、逃げ場はないけどね」
「で、どうすればいいの?」
「あのゲームには、ラグ=ナ=ロークという名前をつけた、一定の戦闘データを収集すればハンデも自動的に算出できるようになっている。たくさん活用してくれたあの二人にはとても感謝しているよ」
「そんなにやってたの? あの二人」
「君に、瞬殺されてからさらに頻度があがったね。よほど悔しかったらしい」
「めんどくさいことに首突っ込んじゃったなー」
「日程はこちらで決めるから、戦闘データをもう少しだけ収集させてくれ。
いま、アースバインダーの指導で、リエルとルナディアとルカティアにスリーマンセルの訓練をしてもらってるから、とりあえず、それの相手をして欲しい。ノーハンデで」
「いきなり、無茶苦茶な対戦させないでよね?」
「きみなら余裕だろ? 急造チームなんて」
「まぁ、多人数の方がかき回しやすいから楽なのはたしかだね。練度によるけど」
「じゃ、準備ができたら連絡する」
「……わかった」
……
数日後、ゼディーに呼び出されてアストレアに訪れた。
部屋に入ると、ガイゼルヘルさんが熱血指導している姿が見えた。
「いいか? ククリには常識が通じないと思え。常に知覚の異変に気を配れ。
幻術、幻影、隠遁、法術式の改ざん、なんでもありだがらな?
しかもそれに隠遁をかけて計画的にばら撒いてくる。デコイまで混ぜてくるぞ。
心が乱されたら殺されるとおもえ。
優勢だと思っても気をぬくな、気がついたら追い詰められていたなんてことにことになるぞ。異常に狡猾な獣を捉えるつもりで着実に根気よく追い詰めろ」
私はとんだ化け物扱いされていた。
エリューデイルが隣で苦笑いしている。
ちゃちゃっと済ませて、仕事にもどろう。
……
「ゼディー、あと何回戦えばいいの?」
私は、うんざりしたように質問した。
すでに20戦はしている。
「あと、10回くらいたのむ。すまんな、ここまで実力差があるとは思わなかった」
「わかった。休憩いらないから、ちゃちゃっと終わらせよう。仕事残ってるから」
「休憩は3人のためだ。すこし待ってやってくれ」
ゼディーは楽しそうにデータを眺めてる。
「了解」
……
「じゃ次、始め!」
……
「おつかれ、面白いデータを取れたよ。
これだけでもヴェルキエーレには良い教材になるだろう。
でも、ククリのハンデの算出は、今の方法じゃ無理そうだ。
ルークやロクシーと検討してみる。
時間取らせて悪かったな。面白い戦いを見せてくれてありがとう。
アースバインダーとの対決、期待してる。
相手はガイゼルヘルになる予定だ。
場所はニーベルング鉱床に変更する」
「バインドポイントでの戦闘なんて、ガイゼルヘルさん超有利じゃないか」
「まぁ、そういうな。そんな状況を切り崩す戦闘データが欲しいんだよ。
ヴェルキエーレのためだと思って、よろしくな」
頭痛くなってきた……。
新種族達の孵化ラッシュが始まり、アストレアが大忙しのころ、ルナディアとルカティアが私のところに相談にきた。
「ククリさん、今大丈夫?」
「うん、大丈夫。
あれ? 二人で来るなんて珍しいね。嫌な予感しかしないのだけれど……。
姉妹喧嘩の仲裁は私の仕事じゃないからルフィリアに頼んでね?」
「勝手に決めつけないでよ」
ルカティアが否定した
「ルフィ姉は、うちで預かってる4人が孵化したから、その対応で忙しいのよ」
ルナディアは否定していないようだ。
「4人とも孵化したの? あとで挨拶に行かなきゃ」
「ひと段落したら、ルフィ姉がここに連れてくるっていってたよ?」
「そっか、じゃあ、おとなしく待っていた方がいいね。楽しみだ。
で、どんな喧嘩したの?」
「だから、喧嘩じゃないってば」
ルカティアが否定した
ルナディアが口を開いた。
「あのね、和声干渉と干渉防御の攻防だと物足りなくなってきたから、もっと実践的な訓練をしたいなって思ったの。でも、いいのが思いつかなくて、殺し合いみたいになっちゃいそうだから、ククリさんなら、シルバーリングがやってる訓練とか詳しそうだから教えてもらいに来たの」
「なるほど、危険性のすくない姉妹ゲンカのやり方を聞きにきたってことだね?」
「喧嘩じゃないわよ」
ルカティアが否定した
「まぁ、そんなところかな?」
ルナディアは肯定した。
ルカティアは不満なようだ。
「私が幼少の頃に両親に稽古をつけてもらっていた時は、爪と急所に接触センサーをつけて、爪には緩衝材、急所側は緩衝材とオリハルコンを貼り付けて安全を確保して、一度でも触れられたら負けっていうゲームをやっていたよ。
急所全部につけるのは大変だし無理があるから、お互いに自分が狙いやすい急所を何箇所か指定できるんだ。
両親はハンデをつけてくれて、私の急所は1つだけ、しかも私が指定していい。両親の急所は10箇所で私が指定していいってルールでやっていた。
でも、一度も勝てなかったら、罰ゲームばかりさせられていたね」
「罰ゲーム? 」
「シルバーリングの組合が、生物研究所の実験動物の処分を引き受けていたんだ。自分達の子供の育成用に、強さごとに檻を分けて、人狼に敵意剥き出しの獣を大量に飼育していたんだ。両親が任務で留守になるときはそこに放り込まれて、帰ってきたら出してもらえるのだけれど、罰ゲームのときは、いつもより強力な獣がいる檻に放り放り込まれるんだよ。倒すとかそういうレベルじゃなくて、生き残るのに必死な状況だったから、今生きているのが不思議なくらいだよ。しかもその獣たち、特殊言語で吠えるから、本能的に強力な法術式をつかえるんだ。文字通りバケモノの巣窟で何日も逃げ回ってたね……」
「ククリさんが、別格なのわかった気がする」
ルカティアが半分呆れながらいった。
「そうでもないよ。シルバーリングの子はそうやって育った後、シルバーリングの育成機関の入所試験受けて絞り込まれて、その先に待っているのが、それ以上の過酷な訓練だからね。私はその前に両親を失って親戚に引き取られることになったから離脱したけど、別格といえるのはその先に進んだ子たちだろうね。すくなくとも戦闘や殺戮については」
「ガルダーガって、すごいこと平気でやってるのね。信じられない」
ルカティアは完全に呆れていた。
「シルバーリングの育成方法は異常だから気にしない方がいいよ。
シルバーリングの相手なんか、ヴェルキエーレやケルベロスに任せておけばいいと思う。長期間の血の滲むような殺戮ための訓練が無意味に思えるくらいに、あっさり殺されるからね。
さて、さっき言ったゲームくらいしか、危険性のすくなそうな姉妹ゲンカのやり方はおもいつかないけどどうかな?」
「たしかにそれなら、和声干渉と干渉防御の実践的な攻防になるわよね?」
ルナディアは興味を持ったようだ。
「和声干渉の技術は、通常の法術式の破壊や改変にも応用できるから、和声干渉意外は特殊言語にこだわる必要はないしね。
ルールやハンデを工夫すれば、別の種族とだってできるゲームだね。筋力が桁違いに異なるケルベロスとドラッケン、アースバインダー達は例外だけど。
二人で試してルールを考えてみたら?
君たちの弟子の育成にも応用できるかもしれないよ?」
「そうね、ためしてみるわ。とても参考になった。ありがとね」
ルナディアはそういうと部屋を後にした。
……
トントン……。
嫌な予感がする。
「失礼しまーす。ククリさん、いまよろしいですか?」
ルナディアとルカティアだ。
「忙しいけど、べつにいいよ。手短に終わらせてね」
「じゃ、遠慮なく」
ルナディアの唯我独尊は健在だ。
「ごめんね、本当にいいの?」
ルカティアは私に対してはいつも謙虚でいい子だ。
「姉妹ゲンカのこと?」
「まぁ、そんなかんじ」
「で、どうなったの?」
ルナディアが口を開いた
「いろいろ試行錯誤してみたの。これみてよ」
ルナディアがテーブルの上に特殊な機材をたくさんならべた。
「これ、どうしたの?」
二人が作れるレベルの品ではないのは明らかだった。
「すごいでしょ! ゼディーさんが作ってくれたの!」
「ルシーニアに話は通したの?」
「うん。ゼディーさんからね」
「普通、逆だからね?」
「わかってるって、たまたま宮殿に来てたから、相談したらすごーく興味持ってくれたの。そしたら、翌日にこれ持って来てたのよ? 驚いちゃった」
「ゼディーのツボはよくわからないな……。運がよかったね。ちゃんとお礼しておきなよ?」
「もちろん」
「で、私に見せびらかしにきたの?」
「んー、それもあるけど。相手になって欲しいの!」
「えー? 私、忙しいのだけれど」
「1回だけでいいから、おねがい!」
「じゃ、1回だけね……」
「わざと負けて早く終わらせるの無しだよ?」
「えー? じゃあちょっと戦ってすぐ負ける」
「手を抜いたら罰ゲームで納得いくまで相手してもらうからね」
「わかったよ、ハンデは?」
「なしで」
「二人は若いのだから、お婆ちゃんの私にハンデくれてもいいじゃない?」
「出身種族の成長曲線で考えると対して変わらない歳でしょ?」
「わかった。そっちはやり慣れてるだろうけど、私は数万年ぶりなのだから少しは気を使ってね」
「もぅ、油断させよとしてもだめだからね」
「で、君たちの罰ゲームはなに?」
「え? そんなのないよ?」
「だめ。私だけ罰ゲームとかフェアじゃないよね?
君たちが負けたらルフィリアの手伝いで新種族の固有言語体系と特殊言語体系の整備をやること、いい?」
「それルフィ姉だってたいへんだーってぼやいてたやつだ」
「なら、いつも苦労ばかり掛けているルフィリアの力になってあげようね。約束してくれたら、全力であいてするよ」
「……わかった。本当に全力でやってね?」
「うん。二人同時でもいいよ? どうする?」
「一対一で!」
「で、これどうするの? 獣化するの?」
「部屋が荒れちゃうから獣化なしで、好きな指に4つつけてね、片手に集中してもいいし、両手に分散してもいいよ」
「急所は?」
「これを手首につけて、端末開いて設定」
「へー、さすがゼディーだ。いい仕事してるね。
強力な防御シールドも展開されるから安全にできるのか。
しかも精霊術式だから人狼の法術式と干渉しないところがいいね」
「うん。急所は自分で設定。数は10個」
「設定した」
「デフォルトでいいの?」
「いいよ。早く終わらせないと、仕事が進まないからね」
「じゃ、私の急所はこれで」
「あはは」
「なによ?」
「それ、弱点を教えているようなものだよ? まあいいけどさ」
「じゃ、変える! これでいいかな?」
「あまり変わってないけどね。開始の合図は?」
「ルカティアよろしく!」
「観測データも記録するのか? 本格的だね。
ああ、ゼディーに私のデータ送るように要求されたね?」
「うん。それが条件」
「なるほど」
「準備できたわ。二人ともいい?」
「いつでもいいよ」
「こっちも」
「じゃ、開始」
ぴぴぴぴ……
「はい、私の勝ちー。選手交代ね」
「……瞬殺された、こんなに実力差あるの? お願い、もう一回!」
「だめ。観測データを調べて敗因を考えな」
「ルカティア、おいでー」
ルカティアと交代した
「では、開始」
ぴぴぴぴ……
「私の勝ち。お疲れ様」
「……なにこれ?、勝てる気がしない」
「約束だから、ルフィリアの手伝いよろしくね」
「わかった……また相手してくれる?」
「んー、ルフィリアの手伝いの出来次第かな?」
「えー」
「私にメリットが一つもないからね。次挑戦するときはそれだけのもの用意してね」
「……」
二人は、よほど悔しかったのか、トボトボと部屋をあとにした。
ゼディーも変なおもちゃつくったな。
ヴェルキエーレの訓練に応用したいから人狼でデータを集めてるってところだろうな。
……
「ククリ、いるか?」
ゼディーだ。
「うん、どうぞ。珍しいね。そういえばルナディアとルカティアの姉妹ゲンカの件、お手数かけちゃって悪かったね」
「姉妹ゲンカ? ああ、あのゲームのことか。
問題ないよ、こっちもいいデータ取れてるから」
「やっぱりか。ヴェルキエーレには応用できそう?」
「もうすこしデータ収集が必要かな」
「で、どうしたのわざわざ?」
「あのゲームのデータ収集のことでちょっと相談があってね」
「ゼディーにしては珍しく、いやーな予感のする相談がきたなー」
「さすがに勘が鋭いね。ククリの戦闘データに興味があるんだ。
あの二人だと十分なデータ取れないから、もっと強い相手と試合してもらえない?」
「えー? あの二人のデータで十分でしょ?」
「最初はそう思ってたけど、ククリの観測データが想像以上に面白くてね。
絶対に正攻法をしないで強い相手を切り崩す君の技術は一級品だから、ヴェルキエーレの教材にしたいのさ」
「もー、そういう感じで頼まれたら絶対断れないじゃん。
で、だれと戦うの?
アースバインダーとかはやめてね。死んじゃうから」
「死なないようにシールドを強化しておくから大丈夫だよ」
「本当にアースバインダーとやれって?
シルバーリングでもツーマンセルでやっとだよ?」
「だから、ハンデをつける。ハンデ付きならいけそうだろ?
アースバインダーの二人も興味津々だ。
リエルも手合わせを希望してる」
「そのおもちゃ、そんなに広めちゃったの?」
「データ取りたいからね」
「戦闘の駆け引きならエリューデイルの方が上手だよ。
エリューデイルに頼みなよ」
「エリューデイルのデータは収集済み。
ヴェルキエーレの教材としてまとめてる最中だ」
「その様子だと、ルシーニアとティフォーニアにも話は通ってるんでしょ?
外堀埋めてから交渉するのが君のやり方だしね」
「あはは、みすかされてるなー。まぁ、逃げ場はないけどね」
「で、どうすればいいの?」
「あのゲームには、ラグ=ナ=ロークという名前をつけた、一定の戦闘データを収集すればハンデも自動的に算出できるようになっている。たくさん活用してくれたあの二人にはとても感謝しているよ」
「そんなにやってたの? あの二人」
「君に、瞬殺されてからさらに頻度があがったね。よほど悔しかったらしい」
「めんどくさいことに首突っ込んじゃったなー」
「日程はこちらで決めるから、戦闘データをもう少しだけ収集させてくれ。
いま、アースバインダーの指導で、リエルとルナディアとルカティアにスリーマンセルの訓練をしてもらってるから、とりあえず、それの相手をして欲しい。ノーハンデで」
「いきなり、無茶苦茶な対戦させないでよね?」
「きみなら余裕だろ? 急造チームなんて」
「まぁ、多人数の方がかき回しやすいから楽なのはたしかだね。練度によるけど」
「じゃ、準備ができたら連絡する」
「……わかった」
……
数日後、ゼディーに呼び出されてアストレアに訪れた。
部屋に入ると、ガイゼルヘルさんが熱血指導している姿が見えた。
「いいか? ククリには常識が通じないと思え。常に知覚の異変に気を配れ。
幻術、幻影、隠遁、法術式の改ざん、なんでもありだがらな?
しかもそれに隠遁をかけて計画的にばら撒いてくる。デコイまで混ぜてくるぞ。
心が乱されたら殺されるとおもえ。
優勢だと思っても気をぬくな、気がついたら追い詰められていたなんてことにことになるぞ。異常に狡猾な獣を捉えるつもりで着実に根気よく追い詰めろ」
私はとんだ化け物扱いされていた。
エリューデイルが隣で苦笑いしている。
ちゃちゃっと済ませて、仕事にもどろう。
……
「ゼディー、あと何回戦えばいいの?」
私は、うんざりしたように質問した。
すでに20戦はしている。
「あと、10回くらいたのむ。すまんな、ここまで実力差があるとは思わなかった」
「わかった。休憩いらないから、ちゃちゃっと終わらせよう。仕事残ってるから」
「休憩は3人のためだ。すこし待ってやってくれ」
ゼディーは楽しそうにデータを眺めてる。
「了解」
……
「じゃ次、始め!」
……
「おつかれ、面白いデータを取れたよ。
これだけでもヴェルキエーレには良い教材になるだろう。
でも、ククリのハンデの算出は、今の方法じゃ無理そうだ。
ルークやロクシーと検討してみる。
時間取らせて悪かったな。面白い戦いを見せてくれてありがとう。
アースバインダーとの対決、期待してる。
相手はガイゼルヘルになる予定だ。
場所はニーベルング鉱床に変更する」
「バインドポイントでの戦闘なんて、ガイゼルヘルさん超有利じゃないか」
「まぁ、そういうな。そんな状況を切り崩す戦闘データが欲しいんだよ。
ヴェルキエーレのためだと思って、よろしくな」
頭痛くなってきた……。
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王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。
なつめ猫
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公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
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表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。
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ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。
ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。
チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
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私は死んだ。
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神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
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*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています
国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る
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ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。
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引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
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旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
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この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
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足音、車のエンジン音、カラスの鳴き声。草の匂い、魚の焼けた匂い、香水の香り。
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気が付くと、そこは森の中。何故か記憶喪失となって目覚めたユウトは、どこか見覚えのある仲間と共に、自分は剣士として行動していた。わけも分からず付いて行くと、未知の化物と遭遇し、ユウトたちは危機に瀕してしまう。なんとか切り抜けることができたものの、ユウトは気を失ってしまった。
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