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BY THE BOOK OF DAYS

ノスフェラトゥ・パンデミック

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────エリューデイル(人狼ルガルティターノ種、ラフィノス族・長老メトセラ、アストレア宮廷第一補佐官、アースバインダー)


 ノスフェラトゥのパンデミックが発生したのは、〝大崩落〟から1千年ほど後のことだった。

 当時はまだ、ヨトゥンヘイムの転移ゲートが健在で、ヨトゥンヘイムはギアの大地で、ドラッケンという強力な戦闘種族の研究開発が行っていた。あまりにも高性能であるため、暴走時にヨトゥウンヘイムで大事故が起こらないようにギアで秘密裏に研究が進められていたのだ。

 研究には、ヨトゥンヘイムの法術司祭だけでなく、チューリング学派、ノイマン学派、マッカーシー学派など、複数の無色のホムンクルススターゲイザーが参加しており、また、無色のホムンクルススターゲイザーたちは、雑務をヒューマノイドに任せていたため、研究所内には多数のヒューマノイドがいた。

 パンデミックの引き金を引いてしまったのは、ヴェルフェゴール、ルキフェル、マモン、バアル、レヴィーというヒューマノイドの5人の研究助手だった。

 彼らは、無色のホムンクルススターゲイザーが構築したドラッケン開発の理論を指示通りに実験する役割を担っていたのだが、通常業務を行いながら、陰で、それらの理論を独自の解釈で変更しつつ危険な実験を重ねていたのだ。

 パンデミックが起こったのは、ドラッケンのプロトタイプ、ベイ=Oオー=ウーフが完成して間も無ないころだった。

 研究所内のヒューマノイドのみならず、周辺地域のヒューマノイドのコロニーの住民は瞬く間に、ノスフェラトゥと化した。旧都ギアにある主要施設は不意のノスフェラトゥの襲撃により、破壊されてしまった。

 旧都にあった外界との転移ゲートも例外ではなかった。

 これにより、ヨトゥンヘイムはギアの大地への移動手段を失うことになった。

 新都アストレアは、すでに堅牢であったため被害は免れたが、ギアの大地はわずか数週間でノスフェラトゥに制圧されてしまったのだ。

 研究所にいたガルダーガ族の人狼ルガル無色のホムンクルススターゲイザーは、ベイ=Oオー=ウーフの起動に成功し、その死地から逃れ僻地に避難し、独自の要塞を築き上げ、篭城した。

 人狼ルガル無色のホムンクルススターゲイザーなどの高次元生命体はノスフェラトゥにはならなかったものの、甚大な被害が出たようで、いまだにヨトゥンヘイムとの転移ゲートは開かれていない。しかもアストレアからの支援も受け入れず、要塞に篭ったままの状態が続いている。
 


 その後しばらくして、シャノン学派が行なっていた低次元世界からの空間転移実験により、偶然にも、ガイゼルヘル公とそのアースバインド地域であるニーヴェルング鉱床がギアの大陸に帰還を果たした。

 私はすぐにでも第一補佐官の座を譲りたかったが、ティフォーニア様のご意向により、彼は第二補佐官とされた。

 大先輩より上席にいることにとても恐縮したが、ガイゼルヘル公とティフィーニア様の考えにはかなりの違いがあったため、私を緩衝材にしたかったのだとすぐにわかった。

 お二人の意見が対立するたびに、根回しをして調整をして落とし所を見つけることが私の仕事に追加された。これは胃が痛くなるほど大変な仕事だ。だが、お互いの意見の正しさも理解できるので、絶対に気を抜けない重要なであるため、最近は気が休まることがほどんどない状況だ。

 帰還後のガイゼルヘル公は、人が変わったようにヒューマノイド嫌いになっていた。昔は奴隷として重用していたにもかかわらず、今は絶滅させるべきだとの見解を決して譲らない。

 空間の狭間でどのような悪夢を見てきたのか、誰にも語ろうとしないが、よほどトラウマになるような出来事をみてきたのだろう。

 だが彼は、私にとってとても心強い同胞である。
 頑固な性格ではあるが正義感が強く、芯の通った立派なお方だ。
 それは帰還後も健在である。

 ティフォーニア様とのやり取りを通じ、第二補佐官という立場にも理解を示していただけているようで、私の心労を察し、色々と気を使ってくださるといった優しい一面もあるお方なのだ。

 周囲から誤解されやすい性格なので、その辺りのフォローも私の仕事になっている。

 なによりも、絶望的とされていたアースバインダーの帰還の可能性に光が見えてきたのはとても嬉しかった。
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