イジメ・ダメ・ゼッタイ

エリーゼ

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第三話 遠藤風花

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【遠藤風花Side】
「いやー!さっきのアレ、マジウケたよね~!」
 体育館倉庫で野中をいじめたあと、アタシたちは聖の家に集まって、野中へのイジメの話をしていた。
「あの泣きじゃくる顔は、見ものだったわ。」
「さっすが阿久津先輩だよね~!連れてきてよかったぁ~!」
「あのブスな顔が、もっとブスになっちゃったわよね~。」
 体育館倉庫で、アタシたちは、野中の制服を無理やり脱がせて全裸にし、顔に変なメイクをして、写真を撮った。
 聖たちは今後この写真を野中への脅しのネタに使うだろう。
 あたしはため息を付きながら、スマホに映された野中の写真を眺めていた。

「風花、さっきから黙ってるけど、さっきのアレ、アンタはどう思う??」
 アタシが黙ってるのを不思議に思った美玲があたしに話しかける。
「え?あー、すっごい写真だな~って。」
「わかるわ~。」
「ねぇ、もし野中が学校に来なくなったら、次は誰にする?」
聖の言葉に心臓がドクンっとなる。
「辻は?アイツも野中同様ブスぼっちじゃない。」
「こらこら~。」
「言えてる。何なら辻のほうがぶす?」
「あははっ。クラス1のブスは、辻かもね~。てなわけで、次は辻にしようか。いいよね風花。」
「えー、あー、うん!」
あたしは空気を読んでうなずく他なかった。

家に帰り、メイクを落とす。
するとなんということだろう。
ぱっちりしためは、一重の小さな目に。
そばかすやほくろだらけの顔。
分厚い唇に、豚のような鼻。
あたしの顔は、ブスだ。
クラス1のブスは、野中でも辻でもない。
あたしだ。
あたしの顔は、厚化粧でできている。
 たまに聖たちが「あのババアの厚化粧ヤバすぎ~!」とか言ってるけど、本当はあたしの方がやばい。
 聖は「アタシ、ブスと遊ぶとかマジ無理ぃ~っ」てよく言う。
あたしみたいなブスと一緒にいるくせに。
あたしは聖が大嫌い。
見た目で人を判断するし、ランク付けするし。
 あたしはあえて、野中をいじめるとき、顔の悪口は言わなかった。
人の顔に文句なんて言えないから。
 野中はあたしよりずっとキレイだから。

 あたしはもともと、イジメられている側の人間だ。
原因は、もちろん顔だ。
 幼稚園の頃は仲間はずれにあい、小学校から、本格的にいじめが始まった。
 女子からは精神的苦痛を、男子からは肉体的苦痛を受けた。
みんな、私をブスと呼ぶ。
 誰でもいいからそんなことないって言って欲しくて、お母さんに「私ってブスなの?」と聞く。
 するとお母さんは、泣きながらあたしを抱きしめてこう言う。
「ごめんね…きれいに産んでやれなくてごめんね…」
お母さんもブスだった。
そんなお母さんを、お父さんも励ました。
 
私はこれ以上お母さんを悩ませたくなかったから、顔をきれいにする方法を探し続けた。
 整形するほどのお金はなかったので、あたしは、メイクをすることを選んだ。
 メイクはすごい。まるで整形でもしたかのようにキレイになれるから。
 髪型も変えた。思い切ってイメチェンしようと思い、金髪パーマにしてみた。
 ネイルも必死に研究して、今では友達にネイルを頼まれるくらいになった。
 
そして、高校に入学すると、声をかけられた。
「そのネイル、すごくキレイ。あ、あたしは谷聖。一年間仲良くしようね!」
最初は嬉しくてたまらなかった。
 聖の友達の美玲や香織ともすぐに打ち解けられた。
でも、聖たちが野中をいじめるようになってから、聖たちに嫌気が差した。
 あたしもいじめに積極的に加わってしまった。
いじめられないようにするために…。
 でも、いじめをしていると、昔の光景が蘇って、何度も吐きそうになった。
あたしは、最上みたいに、普通グループに入りたい。
なんて思ったこともある。
あたしにとってイジメは、自分を守る行為。
あの時みたいな思いをしないように…。

あたしのスマホにメールが届いた。
「…え?」
メールの内容を見て、絶句した。
『これが君の本当の素顔なんだねぇ…』
 そのメッセージとともに、あたしのスッピンの写真が送られていた。
 しかも、その写真の中のあたしは、家の洗面台で、メイクを落としていた。
「どうして…?」
いつ?誰が?
もしかして、家の中にいる…?
恐怖で体が小刻みに震える。
またメールが届く。
『君は元いじめられっこ』
『ブスは損だね~www』
どうして…?
どうしてそのことを…?
バレないために、あえて遠い女子校を選んだのに…?
メールは終わらない
『早く制服を脱がないと、シワになる』
「ひっ…!」
メールの送り主は、家の近くに…?
怖くてたまらない…
早く逃げないと…

すると、電話がなった。
「お父さんだ…もしもし?」
「もしもし風花。家のドアを開けてくれないかい?手がふさがっているんだ。」
「うん。待ってて。」
ドアを開けるとそこには、刃物を持った男が立っていた。
「ひっ!」
「馬鹿だねぇ。だめだよ。簡単に信じちゃ。」
「アンタ、誰!?」
「俺は……だ」
「…え?」
私が呆然としていると、男は私の腹部を刺した。
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