137 / 140
貴族学園
137 主人公一行の訪れ
しおりを挟む
卒業式にすったもんだがあったが、元凶となったメインヒロイン4人は退学となり、その後の貴族学園は恐ろしく静かになった。
第三王女はもともと卒業だったことから、そのまま王領の一部を譲り受けて男爵となった。
残りのミネッティ伯爵令嬢、マテス侯爵令嬢、ニューエン子爵令嬢は貴族学園を退学となり、その後の行方は知られていない。
本来のゲームシナリオでは第三王女の卒業をきっかけに、メインヒロインと主人公の旅が始まり、2年後にエンディングを迎える。
まあ各地のダンジョンを攻略する旅だから、そのくらいかかるのは当然だが、現実ではどうなるのかが読めない。
というのも、俺がダンジョンを攻略したことを皮切りに各地でダンジョン攻略熱が加速して、各地のダンジョンの管理がかなり厳重になっているからだ。
未発見のダンジョンならともかく、ゲーム序盤で攻略するような初級ダンジョンは入るのにも審査が必要で、勇者の称号がない主人公一行では攻略どころではないだろう。
「で、いつまで警戒しているんですか、マックス様?」
「うーん、絶対に来ると思うんだよなぁ」
というわけで、今は貴族学園2年の夏の長期休み。
1年の時はメインヒロインや主人公の動向を調べたり、人脈形成のために帰省しなかったが、今回はさすがにゲルハルディ領に帰ってきている。
とはいえ、領主としての仕事は代行としては母上が行っているので、特に仕事のない俺は日がな一日、領境の砦にこもって主人公一行が来ないかどうかを待っているというわけだ。
本来ならこんな時期には主人公一行はゲルハルディ領までは来ない。
だが我慢がきかず、考えなしのミネッティ伯爵令嬢……あの転生疑惑のある令嬢ならわからない。
本当に、なんでわからないんだろうな。ゲームのミネッティ伯爵令嬢は思慮深く、平民相手にも慈愛の心をもって接していた。
それが私欲のためなら誰にでも嚙みつき、横暴の限りを尽くしている女が同じような結末をたどれるはずがないって。
「伝令! 伝令! 隣領から通行証を持たない五人組が関所を突破したとの報せです!」
「はぁ……きたか」
確かに予期はしていた。だが、本当に来てほしかったわけじゃない。
断罪すらまともにできなかったのだから、男爵領でもどこでもおとなしく五人で過ごしていてほしかった。
「レナ、俺のお客さんが来たようだ」
「マックス様おひとりで相手するのですか?」
「さすがに五人相手に騎士団を動員するのもアレだしな」
主人公一行はまともにダンジョンを攻略できていないので、装備もほぼほぼ初期装備のはず。
ただ、装備に由来しない強さ……具体的には主人公とヒロイン協力攻撃、俺が一人で使ってる合成魔法と同じ効力のものだな。
ゲーム内では敵全体に対して効力を発揮する大魔法で、現実世界では一定範囲すべてに効力をもたらす。
これを覚えていた場合には人数を増やしたところで無効化される人数が増えるだけで、騎士団を動員しても無意味になる可能性が高くなる。
ま、協力攻撃は一回の発動で魔力の大半を使う諸刃の剣だから、マナの指輪をこちらが確保している以上、それほどの脅威でもないともいえる。
ま、そんなわけで俺一人で砦前、その街道に陣取る。
「何もかもアンタのせいよ!」
間近まで迫ってきた五人組……というか、ミネッティ伯爵令嬢が俺に気付いたと同時にそう叫んできた。
「卒業式から何の成長もしていないみたいだな」
「はあっ!? 悪役令嬢も悪役令息も大人しくやられて、私の幸せの糧になってればいいのよ!」
「言葉の通じない人間の相手は疲れるな。……一応、忠告だけはしてやる。ここより先に進む、あるいは俺たちに攻撃をしてきた瞬間に大罪人だ」
「悪役令息に言われるほど落ちぶれてないわよ! アンタこそ悪役のくせにいっちょ前の口きいてんじゃないわよ!」
いや~、マジで話が通じないな。本当に同じヴァイセンベルク王国の人間なのか疑わしくなってしまう。
ちなみに辺境よりも中央側の領は王族の管轄、つまり隣領の関所を無断突破したことは第三王女……元・第三王女がいれば何とでもなる。
ただ、ゲルハルディ領……つまり辺境に一歩でも足を踏み入れれば王族の特権はなくなる。
ゲームのように徳を積んでいる状態ならいざ知らず、現実の横暴で自分勝手に過ごしてきた主人公一行が辺境で罪を犯せば王都の連中は誰も救ってはくれないだろう。
ま、俺を倒して、騎士団も倒して、父上や爺様も倒して、ゲルハルディ領を乗っ取れば本当にゲームのシナリオ通りになるのだろうが、そんなことはゲームの主人公でも不可能だ。
ゲームでは侵略で父上や母上が死亡済み、爺様も戦えない体になっていたからこそ、俺やローズマリー嬢を倒しただけで抵抗勢力がいなくなっただけだからな。
第三王女はもともと卒業だったことから、そのまま王領の一部を譲り受けて男爵となった。
残りのミネッティ伯爵令嬢、マテス侯爵令嬢、ニューエン子爵令嬢は貴族学園を退学となり、その後の行方は知られていない。
本来のゲームシナリオでは第三王女の卒業をきっかけに、メインヒロインと主人公の旅が始まり、2年後にエンディングを迎える。
まあ各地のダンジョンを攻略する旅だから、そのくらいかかるのは当然だが、現実ではどうなるのかが読めない。
というのも、俺がダンジョンを攻略したことを皮切りに各地でダンジョン攻略熱が加速して、各地のダンジョンの管理がかなり厳重になっているからだ。
未発見のダンジョンならともかく、ゲーム序盤で攻略するような初級ダンジョンは入るのにも審査が必要で、勇者の称号がない主人公一行では攻略どころではないだろう。
「で、いつまで警戒しているんですか、マックス様?」
「うーん、絶対に来ると思うんだよなぁ」
というわけで、今は貴族学園2年の夏の長期休み。
1年の時はメインヒロインや主人公の動向を調べたり、人脈形成のために帰省しなかったが、今回はさすがにゲルハルディ領に帰ってきている。
とはいえ、領主としての仕事は代行としては母上が行っているので、特に仕事のない俺は日がな一日、領境の砦にこもって主人公一行が来ないかどうかを待っているというわけだ。
本来ならこんな時期には主人公一行はゲルハルディ領までは来ない。
だが我慢がきかず、考えなしのミネッティ伯爵令嬢……あの転生疑惑のある令嬢ならわからない。
本当に、なんでわからないんだろうな。ゲームのミネッティ伯爵令嬢は思慮深く、平民相手にも慈愛の心をもって接していた。
それが私欲のためなら誰にでも嚙みつき、横暴の限りを尽くしている女が同じような結末をたどれるはずがないって。
「伝令! 伝令! 隣領から通行証を持たない五人組が関所を突破したとの報せです!」
「はぁ……きたか」
確かに予期はしていた。だが、本当に来てほしかったわけじゃない。
断罪すらまともにできなかったのだから、男爵領でもどこでもおとなしく五人で過ごしていてほしかった。
「レナ、俺のお客さんが来たようだ」
「マックス様おひとりで相手するのですか?」
「さすがに五人相手に騎士団を動員するのもアレだしな」
主人公一行はまともにダンジョンを攻略できていないので、装備もほぼほぼ初期装備のはず。
ただ、装備に由来しない強さ……具体的には主人公とヒロイン協力攻撃、俺が一人で使ってる合成魔法と同じ効力のものだな。
ゲーム内では敵全体に対して効力を発揮する大魔法で、現実世界では一定範囲すべてに効力をもたらす。
これを覚えていた場合には人数を増やしたところで無効化される人数が増えるだけで、騎士団を動員しても無意味になる可能性が高くなる。
ま、協力攻撃は一回の発動で魔力の大半を使う諸刃の剣だから、マナの指輪をこちらが確保している以上、それほどの脅威でもないともいえる。
ま、そんなわけで俺一人で砦前、その街道に陣取る。
「何もかもアンタのせいよ!」
間近まで迫ってきた五人組……というか、ミネッティ伯爵令嬢が俺に気付いたと同時にそう叫んできた。
「卒業式から何の成長もしていないみたいだな」
「はあっ!? 悪役令嬢も悪役令息も大人しくやられて、私の幸せの糧になってればいいのよ!」
「言葉の通じない人間の相手は疲れるな。……一応、忠告だけはしてやる。ここより先に進む、あるいは俺たちに攻撃をしてきた瞬間に大罪人だ」
「悪役令息に言われるほど落ちぶれてないわよ! アンタこそ悪役のくせにいっちょ前の口きいてんじゃないわよ!」
いや~、マジで話が通じないな。本当に同じヴァイセンベルク王国の人間なのか疑わしくなってしまう。
ちなみに辺境よりも中央側の領は王族の管轄、つまり隣領の関所を無断突破したことは第三王女……元・第三王女がいれば何とでもなる。
ただ、ゲルハルディ領……つまり辺境に一歩でも足を踏み入れれば王族の特権はなくなる。
ゲームのように徳を積んでいる状態ならいざ知らず、現実の横暴で自分勝手に過ごしてきた主人公一行が辺境で罪を犯せば王都の連中は誰も救ってはくれないだろう。
ま、俺を倒して、騎士団も倒して、父上や爺様も倒して、ゲルハルディ領を乗っ取れば本当にゲームのシナリオ通りになるのだろうが、そんなことはゲームの主人公でも不可能だ。
ゲームでは侵略で父上や母上が死亡済み、爺様も戦えない体になっていたからこそ、俺やローズマリー嬢を倒しただけで抵抗勢力がいなくなっただけだからな。
96
あなたにおすすめの小説
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる