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貴族学園
134 キンスキー侯爵令息との久々の邂逅
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「しかし、アレはなんだったんだろうな?」
ミネッティ伯爵令嬢が急襲してきた日、寮に戻るとマルクスが今日のことを思い出しながらつぶやく。
「アレとは?」
「流石に文官科までは噂は回ってないか。淑女科のご令嬢が自分の従者を訓練に参加させろと言い出してな」
「はあ!? 従者って……貴族の三男とかですか?」
「いや、平民らしい」
「はあっ!? 非常識にもほどがあるでしょう」
「で、それをマックスが撃退したってわけだ」
まあ話の流れ的にそうなるだろうと思ってたが、俺のほうに振られる。
エルンストが興味津々といった目でこちらを見てくるが、正直な話、俺としてもミネッティ伯爵令嬢の思惑もわからんし、主人公との一戦など思い出したくもない。
「それよりもキンスキー侯爵令息はどうしてるか知ってるか? ここのところ部屋にも帰ってないようだけど」
「キンスキー侯爵令息ですか? 授業には参加してますけど、いつも眠そうにしてますね」
同室のキンスキー侯爵令息はエルンスト同様、文官科に所属しているから動向自体は把握してるのか。
「昨夜も帰ってなかったし、夜の街でふらふら遊んでるんだろ。これだから、王都住まいのお坊ちゃんは」
「偏見……でもないですね。ウチみたいな弱小はともかく、羽振りのいい子爵家や侯爵家の令息、令嬢は王都で遊んでる姿をよく見かけますし」
マルクスの暴言に対してもエルンストは感情的になるでもなく、冷静に受け止める。
王宮でエルンストの父親、ブルヒアルト子爵にも会ったことがあるが、そちらも息子と同年齢である俺に対しても礼儀正しく対応してたし、なんで子爵にとどまっているのか不思議なくらいだ。
……うーん、陛下にあった時にでもさりげなくアピールしておくか。俺にとっても王宮で気さくに話せる人間は必要だしな。
「やあやあ、俺の噂かい? 野郎に噂されてもちっともうれしくないけど、帰ってきたよ」
噂をすれば影……というわけでもないだろうが、話題に出ていたキンスキー侯爵令息が部屋の中にやってきた。
「おお、おお。噂にはしていたが、別に会いたかったわけでもねーぞ」
「僕も授業で見かけてはいますからね。別に会いたくはなかったですよ」
マルクスとエルンストが辛らつな言葉をかけるが、当のキンスキー侯爵令息にとってはダメージはないようで涼しい顔をしている。
というか、俺が気になるのは…………。
「おい、キンスキー侯爵令息。手のひらを見せてみろ」
「なんだい、藪から棒に。手相でも見ようってのかい?」
「いいから、早くしろ!!」
俺の怒声にキンスキー侯爵令息とエルンストは一瞬驚いた後におびえ、マルクスも多少なりとも動揺しているようだった。
だが、俺にとっては3人の反応などどうでもいいことだ。
「そんなに大声を出さないでくれたまえよ。……これでいいかい?」
キンスキー侯爵令息が怯えながらも、手のひらをこちらに見せると特徴的な青白い線がいくつも走っている。
「「っ!??」」
キンスキー侯爵令息の手のひらを見た瞬間、俺だけでなくマルクスとエルンストも事態を察したようだ。
ヴァイセンベルク王国では有名な話だが、とある性病にかかると手のひらに青白い線が走る。
もちろん前世ではそんな性病はなかったので、シナリオライターが作り出した設定なのだが、この病気の厄介な点は体液のみならず血液や唾液でも感染することだ。
『センスシック』
基本的に貴族学園内では無許可での魔法行使は認められていないのだが、緊急事態であり俺が辺境伯であることから病気を判定する魔法を使う。
キンスキー侯爵令息はきょとんと、マルクスとエルンストは緊張をもって俺のほうを見るが、魔法の効果はすぐにでも発揮し、俺の脳内にはキンスキー侯爵令息が性病にかかっていることが伝わってくる。
『アイスバインド』
火魔法は飛び火する、土魔法は床が板材で使えない、風魔法はキンスキー侯爵令息が動けばけがをする可能性が高い……ということで、水魔法による拘束を試みる。
「マルクス、ひとっ走りして寮監を連れてきてくれ」
「おう!」
「悪いがエルンストは俺と一緒に見張りだ。キンスキー侯爵令息、罪を重ねたくなければ下手に動くなよ」
キンスキー侯爵令息は困惑していたが、それでも自分がやばい立場だというのは理解しているのか、下手に抵抗はせずに黙っている。
感染病でもある性病にかかったことで、貴族学園は退学、隔離されて治療に当たるのは確実だが、ここで暴れたらテロリストとして処理される可能性もある。
まあ人口の多い王都で貴族が感染病を広めたなんて知られたら、いくら平民を守っていても信用は地に落ちるからな。
ミネッティ伯爵令嬢が急襲してきた日、寮に戻るとマルクスが今日のことを思い出しながらつぶやく。
「アレとは?」
「流石に文官科までは噂は回ってないか。淑女科のご令嬢が自分の従者を訓練に参加させろと言い出してな」
「はあ!? 従者って……貴族の三男とかですか?」
「いや、平民らしい」
「はあっ!? 非常識にもほどがあるでしょう」
「で、それをマックスが撃退したってわけだ」
まあ話の流れ的にそうなるだろうと思ってたが、俺のほうに振られる。
エルンストが興味津々といった目でこちらを見てくるが、正直な話、俺としてもミネッティ伯爵令嬢の思惑もわからんし、主人公との一戦など思い出したくもない。
「それよりもキンスキー侯爵令息はどうしてるか知ってるか? ここのところ部屋にも帰ってないようだけど」
「キンスキー侯爵令息ですか? 授業には参加してますけど、いつも眠そうにしてますね」
同室のキンスキー侯爵令息はエルンスト同様、文官科に所属しているから動向自体は把握してるのか。
「昨夜も帰ってなかったし、夜の街でふらふら遊んでるんだろ。これだから、王都住まいのお坊ちゃんは」
「偏見……でもないですね。ウチみたいな弱小はともかく、羽振りのいい子爵家や侯爵家の令息、令嬢は王都で遊んでる姿をよく見かけますし」
マルクスの暴言に対してもエルンストは感情的になるでもなく、冷静に受け止める。
王宮でエルンストの父親、ブルヒアルト子爵にも会ったことがあるが、そちらも息子と同年齢である俺に対しても礼儀正しく対応してたし、なんで子爵にとどまっているのか不思議なくらいだ。
……うーん、陛下にあった時にでもさりげなくアピールしておくか。俺にとっても王宮で気さくに話せる人間は必要だしな。
「やあやあ、俺の噂かい? 野郎に噂されてもちっともうれしくないけど、帰ってきたよ」
噂をすれば影……というわけでもないだろうが、話題に出ていたキンスキー侯爵令息が部屋の中にやってきた。
「おお、おお。噂にはしていたが、別に会いたかったわけでもねーぞ」
「僕も授業で見かけてはいますからね。別に会いたくはなかったですよ」
マルクスとエルンストが辛らつな言葉をかけるが、当のキンスキー侯爵令息にとってはダメージはないようで涼しい顔をしている。
というか、俺が気になるのは…………。
「おい、キンスキー侯爵令息。手のひらを見せてみろ」
「なんだい、藪から棒に。手相でも見ようってのかい?」
「いいから、早くしろ!!」
俺の怒声にキンスキー侯爵令息とエルンストは一瞬驚いた後におびえ、マルクスも多少なりとも動揺しているようだった。
だが、俺にとっては3人の反応などどうでもいいことだ。
「そんなに大声を出さないでくれたまえよ。……これでいいかい?」
キンスキー侯爵令息が怯えながらも、手のひらをこちらに見せると特徴的な青白い線がいくつも走っている。
「「っ!??」」
キンスキー侯爵令息の手のひらを見た瞬間、俺だけでなくマルクスとエルンストも事態を察したようだ。
ヴァイセンベルク王国では有名な話だが、とある性病にかかると手のひらに青白い線が走る。
もちろん前世ではそんな性病はなかったので、シナリオライターが作り出した設定なのだが、この病気の厄介な点は体液のみならず血液や唾液でも感染することだ。
『センスシック』
基本的に貴族学園内では無許可での魔法行使は認められていないのだが、緊急事態であり俺が辺境伯であることから病気を判定する魔法を使う。
キンスキー侯爵令息はきょとんと、マルクスとエルンストは緊張をもって俺のほうを見るが、魔法の効果はすぐにでも発揮し、俺の脳内にはキンスキー侯爵令息が性病にかかっていることが伝わってくる。
『アイスバインド』
火魔法は飛び火する、土魔法は床が板材で使えない、風魔法はキンスキー侯爵令息が動けばけがをする可能性が高い……ということで、水魔法による拘束を試みる。
「マルクス、ひとっ走りして寮監を連れてきてくれ」
「おう!」
「悪いがエルンストは俺と一緒に見張りだ。キンスキー侯爵令息、罪を重ねたくなければ下手に動くなよ」
キンスキー侯爵令息は困惑していたが、それでも自分がやばい立場だというのは理解しているのか、下手に抵抗はせずに黙っている。
感染病でもある性病にかかったことで、貴族学園は退学、隔離されて治療に当たるのは確実だが、ここで暴れたらテロリストとして処理される可能性もある。
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