気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

文字の大きさ
132 / 140
貴族学園

132 転生の暴露

しおりを挟む
「じゃ、話してくれるかしら?」

 タウンハウスに着いて、メイドたちがお茶の準備を完了させて出ていくと、おもむろにローズマリー嬢が話しかけてきた。

「わかってる。ま、面白い話でもないが、俺は転生者なんだ」

「あら? それだけ?」

「転生者ってなんですか?」

 それだけ? と、簡単に言ったのはローズマリー嬢。転生者の存在を知らないのはクリスタだ。
 レナは察していたのか、淡々とお茶を飲んでいる。

「あら? クリスタは知らない? 中央では珍しくない話なのだけど……レナは驚いていないのね?」

「辺境伯の系譜では珍しくないことなので」

 レナは元・騎士の娘といえど辺境伯の系譜でもあるゲルハルディ家に仕えていた家系……それに比べてクリスタは中央の公爵家の傘下貴族の騎士の家系……その違いだろうな。
 中央……というか、王族には何人か転生者がいてヴァイセンベルク王国を発展させてきた。
 それは辺境でも同じことで、ゲルハルディ家にはいないが、元々の主家であった南辺境伯の家系には何人かの転生者がいたという話だ。

「ま、簡単にいうと俺には前世の記憶があるって話だ」

「……ええと」

「大丈夫だ、熱があるとかそういうことじゃない」

 クリスタが俺の額に手を当てて、熱を測ってきた。まあ、クリスタの気持ちもわかる。知らない人間からしたら、どう考えても熱に浮かされたようにしか聞こえないからな。

「クリスタ、ヴァイセンベルク王国の発展に寄与してきたのが転生者なのよ」

「まあ実際はそんなにすごいものでもないがな。前世で得た知識以上の物はわからないし、そもそもこの世界じゃ通用しないことも多い」

 そもそも前提としての技術がなければ使えない知識は多いし、魔法があるから不必要になっている知識も多い。
 本当は自動車や列車が作れたら最高なんだが、エンジンの作成や大量な鉄が必要な点、さらにはヴァイセンベルク王国全体に蔓延っている魔獣の問題から頓挫している。
 そんな感じで諸々の問題から、単純に異世界に転生しても通用しない技術ってのはあるもんだ。

「で、悪役令嬢やら悪役令息やらってのはその前世が関係してるのかしら?」

「まあそうだな。俺の前世ではこの世界のことは物語として伝えられていた。その中でローズマリー嬢と俺は主人公の邪魔をする悪役だったってわけだ」

 ゲームと教えても、そもそもゲームの概念が伝わらないってのは分かっているから、物語と伝える。
 この世界ではゲームってのは基本的にボードゲームやスポーツを指すし、テレビやパソコンの概念から教えてもこの世界じゃ再現不可能だしな、

「ふーん。……ってことは、ミネッティ伯爵令嬢も転生者ってこと?」

「多分な。直接確かめたわけじゃないから何とも言えんが、初対面で俺のことを悪役令息と罵ってきたから、多分そうだろう」

「転生者にしては教養の欠片もないわね」

「この世界を物語として認識してるんだろう。ミネッティ伯爵令嬢は物語上では主人公と恋仲になる1人だからな」

「物語として?」

「自分がいるのが物語の中なら、登場人物は物語通りの行動をするし、自分は何をやっても幸せになれると思っているんだろう」

 これまで三者三様の反応を示していた、ローズマリー嬢とレナ、それにクリスタだが、この言葉には三人とも困惑していた。
 まあ自分が物語の中に入ったなら、という仮定自体が想像しにくいだろうし、だからといって自分が現実にあっている人を架空の物と判断できるかはさらに想像できないだろう。

「ま、この辺は俺の仮定だから、ミネッティ伯爵令嬢がどう思っているのかはわからないがな」

「うーん、それもそうね。……それで? 物語だとどうなるの?」

「ああ、それだが…………」

 とりあえず、俺が知っている限りのゲームシナリオを3人に話したが、そもそもミネッティ伯爵令嬢が婚約打診を拒否した時点でストーリーから外れている。
 だからローズマリー嬢が悪役令嬢になったきっかけである主人公との邂逅や、俺が悪役令息になってしまう契機を話しても3人とも首をひねっている。

「確かにメーリング領があのままの状況なら、私は領主……前領主の命令で公爵家の良いようにされていたでしょう」

「私もマックス様がお命じになれば、婚約者の護衛兼見張りとして傍に侍るのは当然だと思います」

 だがクリスタが公爵家の手ごまとしてマテス侯爵令嬢のお付きとなったこと、レナが俺の命令でミネッティ伯爵令嬢の傍にいることになったことに関してはレナもクリスタも納得していた。

「まあ、ここまで説明してきたが、だからどうするってわけでもないんだ。既に物語とは大本から違ってきてるし、向こうの狙いもよくわからない」

「そうね、聞く限り物語は主人公が勇者として認定されることが前提……でも、勇者の称号は陛下の宣言で永久に廃止されている」

「そういうこと。だからミネッティ伯爵令嬢だったり、主人公が突っかかってこない限りは無視で良いと思う」

 というか、それくらいしか対策が出来ないんだよな。
 爵位上は俺やローズマリー嬢の方が上とはいえ、貴族学園に通う年齢の子供の戯言でお家取りつぶしは難しいしな。
 貴族学園を越えた……それこそゲームのストーリー通りゲルハルディ領に対して攻め込んででも来れば話は違うんだがな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

わたし、不正なんて一切しておりませんけど!!

頭フェアリータイプ
ファンタジー
書類偽装の罪でヒーローに断罪されるはずの侍女に転生したことに就職初日に気がついた!断罪なんてされてたまるか!!!

処理中です...