119 / 140
貴族学園
119 ローズマリー嬢との再会
しおりを挟む
「待っていましたわっ!」
俺たちが王都の屋敷に着くと、なぜかローズマリー嬢が仁王立ちして俺たちを待っていた。
「屋敷に入ることは許可したけど、なんで玄関ホールで仁王立ちして待っているんだ?」
「一刻も早く会いたかったからですわ」
「大人しく客室で待っていてくださいよ。こちらも着替えたりなど準備があるんですから」
ローズマリー嬢とも長い付き合いになっていて、こちらの使用人とも交流があるから玄関ホールで待っていても見逃されていたのか。
とはいえ、流石に公爵家のご令嬢が客室にも入らず仁王立ちで待っているなんて、あまりにも外聞が悪すぎだろ。
「別に着替えなくても私は構いませんわよ」
「こちらが構うので。……ローズマリー嬢を客室に案内してくれ。茶と茶菓子も忘れずに」
「かしこまりました」
「レナとクリスタは着替えたら客室に向かって、ローズマリー嬢とお茶をしててくれ。俺は執務の確認をしてから向かうから」
「はい、マックス様。クリスタ、私室を教えますね」
「ありがとう、レナ」
メイドがローズマリー嬢を、侍女がレナとクリスタを案内していく中、俺は王都屋敷付きの執事と侍従を連れて執務室へと向かう。
ローズマリー嬢の相手も大事だが、俺は俺で辺境伯としての仕事がある。
「急ぎの連絡は何か来ているか?」
「国王陛下から明日の午後に登城するようにとのご連絡が……それとエルメライヒ公爵閣下からのお手紙も」
「陛下の方は謁見がひと段落した後の時間か……料理長に話を通して手土産を準備させておいてくれ」
「はっ」
「で、エルメライヒ公爵の方は……ふむふむ、ローズマリー嬢の婚約者が決まったのか」
「ほう、どなたに決まったのですか?」
「予想通り北東辺境伯の嫡男だな。そちらは学園を卒業済みのため、学園内ではウチと行動を共にしてほしいそうだ」
「マックス様がお相手なさるのですか?」
「まあ俺も少しは関わるがメインはレナだな。ローズマリー嬢も家政科に進むらしいから、ちょうどいいだろう」
婚約者が出来たばかりの令嬢に男の影があるのは外聞が悪いが、レナがメインに相手をしていれば大丈夫だろう。
そもそも北東辺境伯とウチは交流が深いし、おそらくは直ぐにでも北東辺境伯からもローズマリー嬢の庇護を頼む手紙が届くだろう。
「急ぎはこれくらいか?」
「そうですね、あとは追々でも大丈夫でしょう」
「じゃあ俺も着替えて客室に向かうかな」
「それがよろしいかと」
学園の入学手続きや、王都屋敷の管理など、手を付けなければいけない仕事はあれど、流石にローズマリー嬢を放っておき過ぎだからな。
不測の事態が起きた時のために余裕をもって出発したから、貴族学園入学まで時間もあるし、その辺は少しずつ手を付けていくか。
「待たせたな」
「あら、やっと来ましたのね」
「色々と確認することがあってな。楽しそうにしていたが、何かいい話でもあったか?」
俺が客室に入るとローズマリー嬢とレナ、クリスタが楽しそうに話していた。
まあ、クリスタは若干緊張していたようだが、レナはともかくクリスタはローズマリー嬢との面識が少ないから仕方がないか。
「そう! マックス、このお茶菓子が美味しいって話をしていたのよ!」
「お茶菓子?」
ああ、抹茶のロールケーキか。
ゴールディ国との交流が進むにつれて、領地の方でも抹茶やら小豆やらの生産が始まったから、料理長に抹茶関係のお菓子のレシピを渡していたな。
初期の頃に試食はしていたが、ローズマリー嬢が褒めるということは完成度も高くなっているのかな。
「ロールケーキ自体はありふれたものですけど、渋みと甘みのバランスが良いですわね」
「領地の方で採れたお茶を使ったものだな」
ヴァイセンベルク王国ではお茶といえば紅茶で、緑茶や烏龍茶などの形態で飲まれることはほとんどない。
だからそもそも抹茶を使った料理など存在しないのだが、ローズマリー嬢の反応を見る限り受け入れられないものでもないのだろうな。
「緑なのが斬新ですわね。それに、この黒いのがクリームとは違った甘さで面白いですわ」
「黒いのは甘く煮た豆ですよ」
「豆ですの!?」
「こちらでは豆といえばスープの材料に使うものですが、ゴールディ国では甘く煮たものが普通だそうですよ」
「そうなんですのね」
ローズマリー嬢は豆を甘くするというのに衝撃を受けたのか、しげしげとロールケーキを覗き込みながら少しずつ口に含んでいる。
まあ、俺も前世ではスパイスケーキだのカリフォルニアロールだのを初めて食べた時には困惑したものだしな。
俺たちが王都の屋敷に着くと、なぜかローズマリー嬢が仁王立ちして俺たちを待っていた。
「屋敷に入ることは許可したけど、なんで玄関ホールで仁王立ちして待っているんだ?」
「一刻も早く会いたかったからですわ」
「大人しく客室で待っていてくださいよ。こちらも着替えたりなど準備があるんですから」
ローズマリー嬢とも長い付き合いになっていて、こちらの使用人とも交流があるから玄関ホールで待っていても見逃されていたのか。
とはいえ、流石に公爵家のご令嬢が客室にも入らず仁王立ちで待っているなんて、あまりにも外聞が悪すぎだろ。
「別に着替えなくても私は構いませんわよ」
「こちらが構うので。……ローズマリー嬢を客室に案内してくれ。茶と茶菓子も忘れずに」
「かしこまりました」
「レナとクリスタは着替えたら客室に向かって、ローズマリー嬢とお茶をしててくれ。俺は執務の確認をしてから向かうから」
「はい、マックス様。クリスタ、私室を教えますね」
「ありがとう、レナ」
メイドがローズマリー嬢を、侍女がレナとクリスタを案内していく中、俺は王都屋敷付きの執事と侍従を連れて執務室へと向かう。
ローズマリー嬢の相手も大事だが、俺は俺で辺境伯としての仕事がある。
「急ぎの連絡は何か来ているか?」
「国王陛下から明日の午後に登城するようにとのご連絡が……それとエルメライヒ公爵閣下からのお手紙も」
「陛下の方は謁見がひと段落した後の時間か……料理長に話を通して手土産を準備させておいてくれ」
「はっ」
「で、エルメライヒ公爵の方は……ふむふむ、ローズマリー嬢の婚約者が決まったのか」
「ほう、どなたに決まったのですか?」
「予想通り北東辺境伯の嫡男だな。そちらは学園を卒業済みのため、学園内ではウチと行動を共にしてほしいそうだ」
「マックス様がお相手なさるのですか?」
「まあ俺も少しは関わるがメインはレナだな。ローズマリー嬢も家政科に進むらしいから、ちょうどいいだろう」
婚約者が出来たばかりの令嬢に男の影があるのは外聞が悪いが、レナがメインに相手をしていれば大丈夫だろう。
そもそも北東辺境伯とウチは交流が深いし、おそらくは直ぐにでも北東辺境伯からもローズマリー嬢の庇護を頼む手紙が届くだろう。
「急ぎはこれくらいか?」
「そうですね、あとは追々でも大丈夫でしょう」
「じゃあ俺も着替えて客室に向かうかな」
「それがよろしいかと」
学園の入学手続きや、王都屋敷の管理など、手を付けなければいけない仕事はあれど、流石にローズマリー嬢を放っておき過ぎだからな。
不測の事態が起きた時のために余裕をもって出発したから、貴族学園入学まで時間もあるし、その辺は少しずつ手を付けていくか。
「待たせたな」
「あら、やっと来ましたのね」
「色々と確認することがあってな。楽しそうにしていたが、何かいい話でもあったか?」
俺が客室に入るとローズマリー嬢とレナ、クリスタが楽しそうに話していた。
まあ、クリスタは若干緊張していたようだが、レナはともかくクリスタはローズマリー嬢との面識が少ないから仕方がないか。
「そう! マックス、このお茶菓子が美味しいって話をしていたのよ!」
「お茶菓子?」
ああ、抹茶のロールケーキか。
ゴールディ国との交流が進むにつれて、領地の方でも抹茶やら小豆やらの生産が始まったから、料理長に抹茶関係のお菓子のレシピを渡していたな。
初期の頃に試食はしていたが、ローズマリー嬢が褒めるということは完成度も高くなっているのかな。
「ロールケーキ自体はありふれたものですけど、渋みと甘みのバランスが良いですわね」
「領地の方で採れたお茶を使ったものだな」
ヴァイセンベルク王国ではお茶といえば紅茶で、緑茶や烏龍茶などの形態で飲まれることはほとんどない。
だからそもそも抹茶を使った料理など存在しないのだが、ローズマリー嬢の反応を見る限り受け入れられないものでもないのだろうな。
「緑なのが斬新ですわね。それに、この黒いのがクリームとは違った甘さで面白いですわ」
「黒いのは甘く煮た豆ですよ」
「豆ですの!?」
「こちらでは豆といえばスープの材料に使うものですが、ゴールディ国では甘く煮たものが普通だそうですよ」
「そうなんですのね」
ローズマリー嬢は豆を甘くするというのに衝撃を受けたのか、しげしげとロールケーキを覗き込みながら少しずつ口に含んでいる。
まあ、俺も前世ではスパイスケーキだのカリフォルニアロールだのを初めて食べた時には困惑したものだしな。
93
あなたにおすすめの小説
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる