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閑話
117 第三夫人に?
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「レナ、何か話し合うことがあるよね?」
「マックス様? マティアス殿下はよろしいのですか?」
「ああ、マティアス殿下は騎士団で訓練をした後に、町に出るらしいから騎士たちに任せてあるよ」
レナに会ってみたが、レナは悪いことをしている自覚はないようだ。
うーん、レナにとってはマティアス殿下に伝えたことは必要なことで、なんら悪いことではないということかな。
「とにかく、レナ。アイリーンも含めて話し合いをしたいんだが、良いか?」
「はい。では、アイリーンはこちらで呼びますので、マックス様は私室でお待ちください」
少しは渋るかと思ったが、レナの方から率先してアイリーンを呼びに行ってくれるとは。
巻き込まれたであろうバル嬢はともかく、アイリーンにも事情を聞いておかないとな。
もしかしたら、アイリーンは何も知らない可能性もあるし。
「お待たせしました」
「お待たせ」
「お久しぶりです、辺境伯様」
私室でレナとアイリーンを待っていたが、バル嬢も一緒にやってきた。
どういうことだ?
「レナ、アイリーン、呼び出して悪かったな。バル嬢も久しぶり」
「マックス様、呼んだのは私とアイリーンだけでしたが、おそらくマックス様がお聞きになりたいことはクリスタも関係するので同席させてよろしいですか?」
「まあ、バル嬢にも関係する話だとはおもうが。バル嬢には2人に事情を聞いてからゆっくり話そうと思ってたんだが」
「では、クリスタも同席させますね」
レナと一緒に入ってきたメイドはテーブルに4人分のお茶をセッティングしてから、退出していった。
本来は貴族同士の話し合いにはメイドや侍従のような側仕えがつくものだが、今回は夫婦同士の話し合いなので当事者以外は部屋から退出させている。
「で、レナ。どうしてマティアス殿下にアイリーンのことを伝えた? それにバル嬢のことも夫人だと伝えたとか?」
「必要なことだからです」
漫画だったら「キリッ」という文字が出そうなほど、凛とした姿勢でレナが答える。
やっぱりレナはうっかりでも、何となくでもなく、自分の意志でバル嬢を俺の側室と紹介したのだろう。
「アイリーンは婚姻式を上げていないとはいえ、正式に第二夫人とすると書面を交わしている。だから、それはいい。だが、バル嬢を巻き込んだのはレナらしくないな」
「それは、ウチから説明するわ」
思わず低い声になってしまった俺に対して、アイリーンが助け舟を出してきた。
「アイリーン?」
「クリスタの故郷のメーリング領はゲルハルディ家にとって新参。せやから、ウチとレナの2人でマックスの第三夫人になることを提案したんよ」
「理屈は分かる。だが、俺は身内にならなくてもメーリング領を蔑ろにするつもりはないぞ?」
「それはそうかもな。でも、それがわかるんはマックスのことを知ってるからやろ? 何もわからん外部の人間に示すために必要っちゅう話よ」
アイリーンにはユリア叔母さんがいるアンドレ商会を贔屓にしすぎた時にも同じようなことを言われたが、本当に外部からの見え方に敏感だな。
「ふむ、それはわかった。だけど、バル嬢の意思を無視して進めるものじゃないだろ?」
「もちろんクリスタには了解とっとるよ?」
「バル嬢、そうなのか?」
「はい。お二人の話を聞いて私がそうした方が良いと判断しましたので」
「それに、マックス様には必要なことです。私は辺境伯夫人として貴族の相手を、アイリーンは商人として商売を担当します」
レナがまとめてきたが、確かにそういう話だった。
別に俺は商品を大量に作るつもりもないのだが、周りからすると既に唐辛子やらフランスパンを作り出して、ゴールディ国との交易もまとめているからそうは見えないらしい。
「ですが、騎士として領地を守る際にマックス様を支えることができる人材がいないのです」
「別にそれはクルトでいいだろ? 最近は幹部試験のために傍を離れることが多いが、アレはアレで有能だぞ?」
「領地にいるときはそれでいいでしょう。ですが、貴族学園に通っているときは?」
一理ある……貴族学園入学時にはお付きとして側仕えを連れていくことが出来るが、騎士は帯同できない。
だからこそ、辺境伯となった今でも訓練を欠かしていないのだが、辺境伯という地位についているだけあって守り手は多い方が良いのは確かだ。
「確かに貴族学園に通っているときは頼りになるが……」
「クリスタは私やマックス様と同じ時期に貴族学園に入学し、マックス様と同じ領主・騎士科に通います」
「騎士として側にいるのに不都合はないと言いたいのか?」
「もちろん、マックス様がクリスタを第三夫人に据えるのが前提の話です。流石に身内でもないのに護衛につけなどとお願いできませんからね」
話し合いが平穏無事に終わったとは口が裂けても言えないが、レナはレナなりの考えで行動しているのだというのが分かった。
だから俺も俺なりにきちんと考えて行動しないとな。
レナのこと、アイリーンのこと、バル嬢のこと、ゲルハルディ領のこと……考えることがいっぱいだな。
「マックス様? マティアス殿下はよろしいのですか?」
「ああ、マティアス殿下は騎士団で訓練をした後に、町に出るらしいから騎士たちに任せてあるよ」
レナに会ってみたが、レナは悪いことをしている自覚はないようだ。
うーん、レナにとってはマティアス殿下に伝えたことは必要なことで、なんら悪いことではないということかな。
「とにかく、レナ。アイリーンも含めて話し合いをしたいんだが、良いか?」
「はい。では、アイリーンはこちらで呼びますので、マックス様は私室でお待ちください」
少しは渋るかと思ったが、レナの方から率先してアイリーンを呼びに行ってくれるとは。
巻き込まれたであろうバル嬢はともかく、アイリーンにも事情を聞いておかないとな。
もしかしたら、アイリーンは何も知らない可能性もあるし。
「お待たせしました」
「お待たせ」
「お久しぶりです、辺境伯様」
私室でレナとアイリーンを待っていたが、バル嬢も一緒にやってきた。
どういうことだ?
「レナ、アイリーン、呼び出して悪かったな。バル嬢も久しぶり」
「マックス様、呼んだのは私とアイリーンだけでしたが、おそらくマックス様がお聞きになりたいことはクリスタも関係するので同席させてよろしいですか?」
「まあ、バル嬢にも関係する話だとはおもうが。バル嬢には2人に事情を聞いてからゆっくり話そうと思ってたんだが」
「では、クリスタも同席させますね」
レナと一緒に入ってきたメイドはテーブルに4人分のお茶をセッティングしてから、退出していった。
本来は貴族同士の話し合いにはメイドや侍従のような側仕えがつくものだが、今回は夫婦同士の話し合いなので当事者以外は部屋から退出させている。
「で、レナ。どうしてマティアス殿下にアイリーンのことを伝えた? それにバル嬢のことも夫人だと伝えたとか?」
「必要なことだからです」
漫画だったら「キリッ」という文字が出そうなほど、凛とした姿勢でレナが答える。
やっぱりレナはうっかりでも、何となくでもなく、自分の意志でバル嬢を俺の側室と紹介したのだろう。
「アイリーンは婚姻式を上げていないとはいえ、正式に第二夫人とすると書面を交わしている。だから、それはいい。だが、バル嬢を巻き込んだのはレナらしくないな」
「それは、ウチから説明するわ」
思わず低い声になってしまった俺に対して、アイリーンが助け舟を出してきた。
「アイリーン?」
「クリスタの故郷のメーリング領はゲルハルディ家にとって新参。せやから、ウチとレナの2人でマックスの第三夫人になることを提案したんよ」
「理屈は分かる。だが、俺は身内にならなくてもメーリング領を蔑ろにするつもりはないぞ?」
「それはそうかもな。でも、それがわかるんはマックスのことを知ってるからやろ? 何もわからん外部の人間に示すために必要っちゅう話よ」
アイリーンにはユリア叔母さんがいるアンドレ商会を贔屓にしすぎた時にも同じようなことを言われたが、本当に外部からの見え方に敏感だな。
「ふむ、それはわかった。だけど、バル嬢の意思を無視して進めるものじゃないだろ?」
「もちろんクリスタには了解とっとるよ?」
「バル嬢、そうなのか?」
「はい。お二人の話を聞いて私がそうした方が良いと判断しましたので」
「それに、マックス様には必要なことです。私は辺境伯夫人として貴族の相手を、アイリーンは商人として商売を担当します」
レナがまとめてきたが、確かにそういう話だった。
別に俺は商品を大量に作るつもりもないのだが、周りからすると既に唐辛子やらフランスパンを作り出して、ゴールディ国との交易もまとめているからそうは見えないらしい。
「ですが、騎士として領地を守る際にマックス様を支えることができる人材がいないのです」
「別にそれはクルトでいいだろ? 最近は幹部試験のために傍を離れることが多いが、アレはアレで有能だぞ?」
「領地にいるときはそれでいいでしょう。ですが、貴族学園に通っているときは?」
一理ある……貴族学園入学時にはお付きとして側仕えを連れていくことが出来るが、騎士は帯同できない。
だからこそ、辺境伯となった今でも訓練を欠かしていないのだが、辺境伯という地位についているだけあって守り手は多い方が良いのは確かだ。
「確かに貴族学園に通っているときは頼りになるが……」
「クリスタは私やマックス様と同じ時期に貴族学園に入学し、マックス様と同じ領主・騎士科に通います」
「騎士として側にいるのに不都合はないと言いたいのか?」
「もちろん、マックス様がクリスタを第三夫人に据えるのが前提の話です。流石に身内でもないのに護衛につけなどとお願いできませんからね」
話し合いが平穏無事に終わったとは口が裂けても言えないが、レナはレナなりの考えで行動しているのだというのが分かった。
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