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幼少期
94 交渉の感想
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ソウタが提供してくれた食料の試食は上々で、爺様やレナの反応を見る限りは主食にとってかわることはないが栽培を行うのには問題ないという結論になった。
というか、醤油や味噌の原料が米だと話したらユリア叔母さんが是非とも栽培して、ゲルハルディ領内で醤油や味噌を作り出すべきと主張しだしたからな。
ソウタの話では米がとれなくなったのは近年で、醤油や味噌は発酵期間が必要だから備蓄は結構あるそうだ。
ま、米もないのに醤油や味噌ばかりあっても使い道があんまりないしな。
そんなわけで、次に来るときには醬油や味噌を多めに積んで、更には醤油や味噌の職人も連れてきてくれるらしい。
それまでに通訳というか、ジャンバリ語を話せる人間を増やしておかないとな。
ついでにソウタには次に来るときはここ、メーリング領ではなくバルディ領に寄港するようにもお願いした。
メーリング領は交易も可能だが盛んではないし、何より敵対貴族の領地だからな。
「マックス様、特使殿が居たので言いませんでしたが、交易に積極的でしたね」
「ふむ、それはワシも思ったの。人助けは大切じゃが、少しこちらが不利になるような交渉じゃったのではないか?」
レナと爺様が忠告してくるが、確かにこちらが損をするような交渉だった。
米や醤油、味噌以外にも布や小物なんかも販売してもらったが、その値段以上の食料や酒を引き渡しているからな。
「布や小物はこの国では見られない技法を使っていますし、調味料に関してもこの国では見ないものなので適正かと」
「じゃが、見ないということは必要ないということでもないかの?」
「確かにそうとも言えますね。ですが、多様性があれば何かあった時の備えにはなるかと。……なにより、王都への土産に持ってこいなので」
「む、確かにそれは言えるの」
「土産……ですか?」
「ああ、辺境伯になるのかどうかはわからないが、先の戦の件で王都に呼ばれるのは確実だろ? その時に土産があるのとないのとじゃ王都貴族の態度が変わりそうだしな」
「うむ。王都にいる奴らは賄賂とまではいわんが、そういった贈り物にはうるさいからの」
「国王陛下や宰相閣下はそうでもないですが、やはり贈り物をした方が喜ばれるでしょう」
「そうさのう。陛下や閣下がというよりも、今回の交易品じゃと奥方が喜びそうじゃがの」
まあ、そういう心配りは大事ということで、今回の交易も完全に無駄というわけでもない。
「そうねえ。布に関しては光沢が抑えられているわりに触り心地が良いし、ドレスに使っても良いかもしれないわね」
「あと、醤油や味噌に関してはこっちの食生活にも合いそうだしね」
「そう? パンにはどちらも塩気が強そうだけど」
「パンにはね。でも、ユリア姉さんも聞いていたと思うけど、ソウタ殿は小麦粉は麺に使うと言っていただろ? それなら、醤油や味噌は麺に合うんじゃないかな?」
「……試してみる価値はあるわね」
「ま、その辺はゲルハルディ領に帰ってから料理長と試作してみるよ。……次にゴールディ国が交易にやってくるまでは試作分くらいしかないし」
「それを食べて、これからの交易をどうするか判断しろってことね?」
「そういうこと。流行らなさそうなら、交易は布メインか金や鉄なんかの鉱石に切り替えるべきだしね」
前世の知識がある俺としては、麺類に醤油や味噌は合うと知っているが、ヴァイセンベルク王国の人間は麺と言えばパスタだから合うかどうか疑問なんだろう。
まあ、あとは個人的に餃子が食べたい。酢コショウなんかでも食べられるが、醤油とラー油を使って思う存分かぶりつきたいのだ。
「勝算あってのこと、ということじゃな」
「ええ、うまくいけばゲルハルディ領の特産がまた増えるでしょう」
「ウイスキーボンボンなどとは違い、他領に受け入れられるかどうかはわからんがの」
「ではなくても、領民の食事のバリエーションが増えるのは良いでしょう」
「うむ」
まあ、そんな感じで爺様もレナもユリア叔母さんも納得してくれた。
あとは、試験栽培をしているカレンベルク領と交渉をして、米用の畑を用意してもらわないとな。
前世では水田での栽培がメインだったが、水田なんて説明しても理解不能だし、そもそも試験栽培の米のためだけに水をひいてくるのなんて無理だろうな。
なんで、畑で作られる陸稲の作り方でいってみよう。
確か陸稲はもち米メインだったはずだけど、うるち米でも育てられるだろう。
ま、この辺も試験の繰り返しで最適な環境を探ることから始めないといけないんだろうな。
というか、醤油や味噌の原料が米だと話したらユリア叔母さんが是非とも栽培して、ゲルハルディ領内で醤油や味噌を作り出すべきと主張しだしたからな。
ソウタの話では米がとれなくなったのは近年で、醤油や味噌は発酵期間が必要だから備蓄は結構あるそうだ。
ま、米もないのに醤油や味噌ばかりあっても使い道があんまりないしな。
そんなわけで、次に来るときには醬油や味噌を多めに積んで、更には醤油や味噌の職人も連れてきてくれるらしい。
それまでに通訳というか、ジャンバリ語を話せる人間を増やしておかないとな。
ついでにソウタには次に来るときはここ、メーリング領ではなくバルディ領に寄港するようにもお願いした。
メーリング領は交易も可能だが盛んではないし、何より敵対貴族の領地だからな。
「マックス様、特使殿が居たので言いませんでしたが、交易に積極的でしたね」
「ふむ、それはワシも思ったの。人助けは大切じゃが、少しこちらが不利になるような交渉じゃったのではないか?」
レナと爺様が忠告してくるが、確かにこちらが損をするような交渉だった。
米や醤油、味噌以外にも布や小物なんかも販売してもらったが、その値段以上の食料や酒を引き渡しているからな。
「布や小物はこの国では見られない技法を使っていますし、調味料に関してもこの国では見ないものなので適正かと」
「じゃが、見ないということは必要ないということでもないかの?」
「確かにそうとも言えますね。ですが、多様性があれば何かあった時の備えにはなるかと。……なにより、王都への土産に持ってこいなので」
「む、確かにそれは言えるの」
「土産……ですか?」
「ああ、辺境伯になるのかどうかはわからないが、先の戦の件で王都に呼ばれるのは確実だろ? その時に土産があるのとないのとじゃ王都貴族の態度が変わりそうだしな」
「うむ。王都にいる奴らは賄賂とまではいわんが、そういった贈り物にはうるさいからの」
「国王陛下や宰相閣下はそうでもないですが、やはり贈り物をした方が喜ばれるでしょう」
「そうさのう。陛下や閣下がというよりも、今回の交易品じゃと奥方が喜びそうじゃがの」
まあ、そういう心配りは大事ということで、今回の交易も完全に無駄というわけでもない。
「そうねえ。布に関しては光沢が抑えられているわりに触り心地が良いし、ドレスに使っても良いかもしれないわね」
「あと、醤油や味噌に関してはこっちの食生活にも合いそうだしね」
「そう? パンにはどちらも塩気が強そうだけど」
「パンにはね。でも、ユリア姉さんも聞いていたと思うけど、ソウタ殿は小麦粉は麺に使うと言っていただろ? それなら、醤油や味噌は麺に合うんじゃないかな?」
「……試してみる価値はあるわね」
「ま、その辺はゲルハルディ領に帰ってから料理長と試作してみるよ。……次にゴールディ国が交易にやってくるまでは試作分くらいしかないし」
「それを食べて、これからの交易をどうするか判断しろってことね?」
「そういうこと。流行らなさそうなら、交易は布メインか金や鉄なんかの鉱石に切り替えるべきだしね」
前世の知識がある俺としては、麺類に醤油や味噌は合うと知っているが、ヴァイセンベルク王国の人間は麺と言えばパスタだから合うかどうか疑問なんだろう。
まあ、あとは個人的に餃子が食べたい。酢コショウなんかでも食べられるが、醤油とラー油を使って思う存分かぶりつきたいのだ。
「勝算あってのこと、ということじゃな」
「ええ、うまくいけばゲルハルディ領の特産がまた増えるでしょう」
「ウイスキーボンボンなどとは違い、他領に受け入れられるかどうかはわからんがの」
「ではなくても、領民の食事のバリエーションが増えるのは良いでしょう」
「うむ」
まあ、そんな感じで爺様もレナもユリア叔母さんも納得してくれた。
あとは、試験栽培をしているカレンベルク領と交渉をして、米用の畑を用意してもらわないとな。
前世では水田での栽培がメインだったが、水田なんて説明しても理解不能だし、そもそも試験栽培の米のためだけに水をひいてくるのなんて無理だろうな。
なんで、畑で作られる陸稲の作り方でいってみよう。
確か陸稲はもち米メインだったはずだけど、うるち米でも育てられるだろう。
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