90 / 129
幼少期
90 爺様からの伝令
しおりを挟む
「以上です」
爺様からの伝令をまとめると、カレンベルク領と接している伯爵領が海外の勢力に侵攻されていた。
領主一族が逃げ出したことで、領境を巡回していた爺様たちは救援を求められ、侵攻してきた船を沈めたのだが、その中に特使を名乗る見慣れない船があったとのことだ。
「どうして、お義爺様はマックス様に伝令をよこしたのでしょう?」
「伝令の話だけだと意味不明だけど、手渡された手紙には書いてあったよ。どうやら爺様たちでは、その特使の言葉がよくわからないそうだ」
「? お義爺様も南大陸語や交易共通語は話せますよね?」
「どうも、南大陸の国の人間ではないらしい。交易共通語でジャンバ島、特使という言葉は分かったが、それ以外が不明らしい」
交易共通語は字のごとく、交易に利用される世界共通の言葉で、この世界ならどこでも通じる反面、交易に利用されない言葉には対応できない。
ま、単語や数字、国名なんかは共通化されているけど、文章にはならないって感じだな。
「ジャンバ島……マックス様の亡くなったおばあ様が交易をおこなっていた東方の島ですよね?」
「ああ、上等な絹糸が買える国なんだが、いかんせん遠い上に航路も複雑で、おばあ様が亡くなってからは没交渉なんだよな」
爺様の妻…俺にとっては父方の祖母なんだが、交易で身をたてた貴族の一族の出で、一年の半分は屋敷にいたが、もう半分は自身で船を操り交易に出かけていた女傑だ。
南大陸との交易を始めたのもおばあ様の一族の功績で、ジャンバ島を発見したのもおばあ様だ。
「交易にやってきたということでしょうか?」
「おばあ様に聞いた話では、ジャンバ島は資源が豊富で交易には無関心って感じだったらしいけどね」
The南国って感じで、食料も燃料も豊富に取れる結果、国民は働くという意識が薄いと感じたらしい。
交易に関しても、おばあ様は商機を感じたが、島民は備蓄されている分は売るけど、交易用に商品を増やそうとはしなかったとか。
そんな国が、交易のために危険な海を渡って、遠い国に来る? なんか違和感があるな。
「お義爺様のところに行くのですね?」
「ああ、なんにしても現地に行ってみないと訳が分からない。爺様も困っているみたいだし、行ってみるかな」
ヒッペ男爵には悪いが、俺の視察よりも爺様の件の方が重要性が高いからな。
男爵にこのことを伝えると、男爵も爺様の件を優先してほしいとのことで、快く送り出してくれることになった。
「ヒッペ男爵、本当にすまない。来たばかりだというのに、またすぐに出発だなんて」
「なんのなんの。マックス様には皆を労ってもらって、フルーツビールに合う食事も教えていただけましたからな」
「そう言ってもらえると助かる」
結局、フルーツビールに合う食事をいくつか作って、バルディ領産の魚介が流通することも考えて、そちらのレシピも渡しておいた。
その代わりと言ってはなんだが、ヒッペ男爵にはフルーツビールを一定量ゲルハルディ家に納めてもらうということになった。
父上は苦みばしったビールが好みだからイマイチだろうけど、母上は喜ぶだろうな。
「ヒッペ領はマックス様を歓迎いたしますので、また何やらありましたら、どうぞ気軽にお立ち寄りください」
「ああ、爺様の件が大したことなかったら、ゲルハルディ家に帰る前に寄らせてもらおうかな」
「ええええ、ヨアヒム様にもよろしくお伝えください」
そんな感じで俺たちはヒッペ領に着いたばかりだというのに、今度はカレンベルク領の先……敵対貴族が治めるメーリング領へと向かうことになった。
メーリング領は王家派の中でも過激派のフォーゲル公爵家の寄子で、隣地であるカレンベルク領に対して盗賊をけしかけたり、モンスターを誘導したりと中々厄介だ。
だからこそ、爺様たちはカレンベルク領とメーリング領の領境をしょっちゅう巡回することで領民を守ってきていたのだ。
「あ~、もうちょっとビールを飲んでいたかったですね~」
「だよな~」
「お前らっ! たるんでいるぞ!」
「クルト隊長だってそう思ってるんでしょ?」
「そう思っていてもマックス様の前で口にするなと言っている!」
「ははは、クルト良いよ。みんなも酒を覚え始めた頃合いだし、旅よりも酒の方が良いよな」
職業倫理的はどうなんだ? と思わなくもないが、気軽に愚痴も言えないような職場なんてブラックまっしぐらだからな。
緊急時以外ではこのくらいのゆるさでも良いだろう。
「でもさあ、みんな。爺様のところに来ている特使は食料が豊富な国なんだぜ? それでなくても海外からやってきた人間だ。こっちの知らない食材や料理を知ってるかもよ?」
「……ということは?」
「新しい料理が増えるかもってこと……それこそ、酒に合うような料理もあるかもな」
ま、モチベーションの維持は大事だし、向こうに着いたら何かうまい料理でも作ってやるかね。
爺様からの伝令をまとめると、カレンベルク領と接している伯爵領が海外の勢力に侵攻されていた。
領主一族が逃げ出したことで、領境を巡回していた爺様たちは救援を求められ、侵攻してきた船を沈めたのだが、その中に特使を名乗る見慣れない船があったとのことだ。
「どうして、お義爺様はマックス様に伝令をよこしたのでしょう?」
「伝令の話だけだと意味不明だけど、手渡された手紙には書いてあったよ。どうやら爺様たちでは、その特使の言葉がよくわからないそうだ」
「? お義爺様も南大陸語や交易共通語は話せますよね?」
「どうも、南大陸の国の人間ではないらしい。交易共通語でジャンバ島、特使という言葉は分かったが、それ以外が不明らしい」
交易共通語は字のごとく、交易に利用される世界共通の言葉で、この世界ならどこでも通じる反面、交易に利用されない言葉には対応できない。
ま、単語や数字、国名なんかは共通化されているけど、文章にはならないって感じだな。
「ジャンバ島……マックス様の亡くなったおばあ様が交易をおこなっていた東方の島ですよね?」
「ああ、上等な絹糸が買える国なんだが、いかんせん遠い上に航路も複雑で、おばあ様が亡くなってからは没交渉なんだよな」
爺様の妻…俺にとっては父方の祖母なんだが、交易で身をたてた貴族の一族の出で、一年の半分は屋敷にいたが、もう半分は自身で船を操り交易に出かけていた女傑だ。
南大陸との交易を始めたのもおばあ様の一族の功績で、ジャンバ島を発見したのもおばあ様だ。
「交易にやってきたということでしょうか?」
「おばあ様に聞いた話では、ジャンバ島は資源が豊富で交易には無関心って感じだったらしいけどね」
The南国って感じで、食料も燃料も豊富に取れる結果、国民は働くという意識が薄いと感じたらしい。
交易に関しても、おばあ様は商機を感じたが、島民は備蓄されている分は売るけど、交易用に商品を増やそうとはしなかったとか。
そんな国が、交易のために危険な海を渡って、遠い国に来る? なんか違和感があるな。
「お義爺様のところに行くのですね?」
「ああ、なんにしても現地に行ってみないと訳が分からない。爺様も困っているみたいだし、行ってみるかな」
ヒッペ男爵には悪いが、俺の視察よりも爺様の件の方が重要性が高いからな。
男爵にこのことを伝えると、男爵も爺様の件を優先してほしいとのことで、快く送り出してくれることになった。
「ヒッペ男爵、本当にすまない。来たばかりだというのに、またすぐに出発だなんて」
「なんのなんの。マックス様には皆を労ってもらって、フルーツビールに合う食事も教えていただけましたからな」
「そう言ってもらえると助かる」
結局、フルーツビールに合う食事をいくつか作って、バルディ領産の魚介が流通することも考えて、そちらのレシピも渡しておいた。
その代わりと言ってはなんだが、ヒッペ男爵にはフルーツビールを一定量ゲルハルディ家に納めてもらうということになった。
父上は苦みばしったビールが好みだからイマイチだろうけど、母上は喜ぶだろうな。
「ヒッペ領はマックス様を歓迎いたしますので、また何やらありましたら、どうぞ気軽にお立ち寄りください」
「ああ、爺様の件が大したことなかったら、ゲルハルディ家に帰る前に寄らせてもらおうかな」
「ええええ、ヨアヒム様にもよろしくお伝えください」
そんな感じで俺たちはヒッペ領に着いたばかりだというのに、今度はカレンベルク領の先……敵対貴族が治めるメーリング領へと向かうことになった。
メーリング領は王家派の中でも過激派のフォーゲル公爵家の寄子で、隣地であるカレンベルク領に対して盗賊をけしかけたり、モンスターを誘導したりと中々厄介だ。
だからこそ、爺様たちはカレンベルク領とメーリング領の領境をしょっちゅう巡回することで領民を守ってきていたのだ。
「あ~、もうちょっとビールを飲んでいたかったですね~」
「だよな~」
「お前らっ! たるんでいるぞ!」
「クルト隊長だってそう思ってるんでしょ?」
「そう思っていてもマックス様の前で口にするなと言っている!」
「ははは、クルト良いよ。みんなも酒を覚え始めた頃合いだし、旅よりも酒の方が良いよな」
職業倫理的はどうなんだ? と思わなくもないが、気軽に愚痴も言えないような職場なんてブラックまっしぐらだからな。
緊急時以外ではこのくらいのゆるさでも良いだろう。
「でもさあ、みんな。爺様のところに来ている特使は食料が豊富な国なんだぜ? それでなくても海外からやってきた人間だ。こっちの知らない食材や料理を知ってるかもよ?」
「……ということは?」
「新しい料理が増えるかもってこと……それこそ、酒に合うような料理もあるかもな」
ま、モチベーションの維持は大事だし、向こうに着いたら何かうまい料理でも作ってやるかね。
84
お気に入りに追加
285
あなたにおすすめの小説

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

乙女ゲームはエンディングを迎えました。
章槻雅希
ファンタジー
卒業パーティでのジョフロワ王子の婚約破棄宣言を以って、乙女ゲームはエンディングを迎えた。
これからは王子の妻となって幸せに贅沢をして暮らすだけだと笑ったゲームヒロインのエヴリーヌ。
だが、宣言後、ゲームが終了するとなにやら可笑しい。エヴリーヌの予想とは違う展開が起こっている。
一体何がどうなっているのか、呆然とするエヴリーヌにジョフロワから衝撃的な言葉が告げられる。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様・自サイトに重複投稿。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。



ドアマット扱いを黙って受け入れろ?絶対嫌ですけど。
よもぎ
ファンタジー
モニカは思い出した。わたし、ネットで読んだドアマットヒロインが登場する作品のヒロインになってる。このままいくと壮絶な経験することになる…?絶対嫌だ。というわけで、回避するためにも行動することにしたのである。

落ちこぼれ公爵令息の真実
三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。
設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。
投稿している他の作品との関連はありません。
カクヨムにも公開しています。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる