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幼少期
86 後始末
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大型船を含め、敵船すべてを拿捕、あるいは沈めた俺たちはゆうゆうと凱旋することになった。
敵首魁を含め、航海士や料理長、兵士長の一部など、責任を取れる立場、あるいは航海に必須な立場の者はいくらか確保することができた。
ま、一般兵や下っ端騎士などは全員殺すことになったがな。
前世の常識で動くと、かなりヒドイことをしているように思えるが、今の俺は次期領主であり、こいつらは侵略者だ。
侵略者相手に手心を加えても何にもならないし、そもそも拿捕したこいつらだって敵国に保釈金と引き換えに渡すまでは生活費がかかる。
そんな何百人もの人間を保護して生活させる余裕などないし、そんな金があるなら領民の生活の向上に使うよ。
「俺様を誰だと思っている! これは不当な拘束だぞっ!!」
ま、そんなわけで生かされているのは上位の人間ばかりになるから、こういった勘違い野郎も存在する。
「誰だとって……なあ、クルト。ただの侵略者風情がなんか言ってるぞ?」
「はあ、マックス様。こういった輩に、いちいち付き合っても疲れるだけですよ」
「わかってるけど、海上では暇だからさぁ」
「おいっ! 早くこの縄を解け!」
「うるせえ、黙れ」
はあ、やっぱりまともに相手するもんじゃないな。
縄をほどけとか、マジで何様なんだか。
「ゲルハルディ伯爵令息様、こいつの正体がわかりました」
「おっ、やっぱり南大陸の人間は知ってたか?」
「はい、乗船していただいた南大陸人によると、交易国と敵対している国の第二王子だそうで」
「第二王子? 第二王子が船に乗って他国に攻め込んでくるのか?」
「どうも、その国の中でも過激派らしくて持て余していたようですよ」
「はぁ~、ということは主流は友好的なのか?」
「いえ、主流も好戦的らしいです。ただ、主流は南大陸の制覇を、過激派は他大陸の制覇を唱えているそうで」
「めんどくせっ」
いや、マジでめんどくせえな。やるなら順番にやれよ。なんで、自大陸も制覇してないのに、他大陸の制覇を視野に入れるんだよ。
交易国には悪いが、このクソみたいな第二王子よりかは、主流派のほうがこっちにとっては都合が良いな。
「で、向こうさんの方針は?」
「はっ、捕虜として連れ帰り、保釈金と大義名分をいただきたいと」
「うーん、こっちも攻められてるからな。保釈金の半分はこちらに寄越すこと、戦乱をこの大陸に持ち込まないことで交渉してくれ。保釈金は最悪、3割までは値切られてもいい」
「はっ!」
居合わせていた交易国の人間がもう少し高位だったら、俺が直接交渉出来たんだが、今この国に居るのは商会の下っ端レベルなんだよな。
言葉は習得しているし通じないということもないが、流石に格式が合わないというか、スラングまみれの言葉を俺に吐けば相手の立場が悪くなる。
ま、バルディ領には南大陸語が堪能な人間も多いから、交渉には問題ないだろう。
「マックス様、そこまで譲ってよろしかったのですか?」
「あ? 保釈金のことか? つっても、向こうとの交渉なんて不可能だからな。ある程度は負けないと向こうもやる気にならんだろ」
「はあ」
「犠牲になった領民や騒ぎに巻き込まれた漁師たちに対する補償のために交渉したが、ゲルハルディ家……というか、俺は保釈金自体いらないしな」
「はっ!?」
「だって、こちとら魔法2発で終わらせたし、それ以外には船に乗ってただけだもんよ」
「それは……そうですが」
金はあればあるだけ良いもんだが、がめつすぎるのも貴族としては失格だ。
貴族として生きるだけの金は領民からもらってるし、保釈金なんかもらっても騎士たちの恩給や消耗品の補填、被害者への補償で消えるだけだしな。
ま、3割も貰えれば俺のポケットマネーからいくらか包めば十分に補填可能だし、向こうとしても3割くらいは払うだろ。
「それよりも、これからどうするかな~。バルディ領の滞在は秋の間だけのつもりだったけど、俺たちが居たら復興の邪魔だよな?」
「まあ、そうでしょうね。バルディ男爵としては口が裂けても邪魔だとは言わないでしょうが」
「ん~、港に戻ったらアントンに父上たちへの伝令を頼んで……そこからは待ちか。俺やレナはアントンの手伝いをするから、クルトたちは持ち回りで復興の手伝いをしてくれるか?」
「わかりました」
バルディ領が直接攻められたわけではなく、海上での戦闘になったが、それでも余波がないわけではない。
今回の侵略をきっかけにバカなことをする輩が出るかもしれないし、伏兵が近隣に潜んでいる可能性もある。
クルトたちにはその辺のケアを中心に、不安になっている領民たちへの支えになってもらおう。
敵首魁を含め、航海士や料理長、兵士長の一部など、責任を取れる立場、あるいは航海に必須な立場の者はいくらか確保することができた。
ま、一般兵や下っ端騎士などは全員殺すことになったがな。
前世の常識で動くと、かなりヒドイことをしているように思えるが、今の俺は次期領主であり、こいつらは侵略者だ。
侵略者相手に手心を加えても何にもならないし、そもそも拿捕したこいつらだって敵国に保釈金と引き換えに渡すまでは生活費がかかる。
そんな何百人もの人間を保護して生活させる余裕などないし、そんな金があるなら領民の生活の向上に使うよ。
「俺様を誰だと思っている! これは不当な拘束だぞっ!!」
ま、そんなわけで生かされているのは上位の人間ばかりになるから、こういった勘違い野郎も存在する。
「誰だとって……なあ、クルト。ただの侵略者風情がなんか言ってるぞ?」
「はあ、マックス様。こういった輩に、いちいち付き合っても疲れるだけですよ」
「わかってるけど、海上では暇だからさぁ」
「おいっ! 早くこの縄を解け!」
「うるせえ、黙れ」
はあ、やっぱりまともに相手するもんじゃないな。
縄をほどけとか、マジで何様なんだか。
「ゲルハルディ伯爵令息様、こいつの正体がわかりました」
「おっ、やっぱり南大陸の人間は知ってたか?」
「はい、乗船していただいた南大陸人によると、交易国と敵対している国の第二王子だそうで」
「第二王子? 第二王子が船に乗って他国に攻め込んでくるのか?」
「どうも、その国の中でも過激派らしくて持て余していたようですよ」
「はぁ~、ということは主流は友好的なのか?」
「いえ、主流も好戦的らしいです。ただ、主流は南大陸の制覇を、過激派は他大陸の制覇を唱えているそうで」
「めんどくせっ」
いや、マジでめんどくせえな。やるなら順番にやれよ。なんで、自大陸も制覇してないのに、他大陸の制覇を視野に入れるんだよ。
交易国には悪いが、このクソみたいな第二王子よりかは、主流派のほうがこっちにとっては都合が良いな。
「で、向こうさんの方針は?」
「はっ、捕虜として連れ帰り、保釈金と大義名分をいただきたいと」
「うーん、こっちも攻められてるからな。保釈金の半分はこちらに寄越すこと、戦乱をこの大陸に持ち込まないことで交渉してくれ。保釈金は最悪、3割までは値切られてもいい」
「はっ!」
居合わせていた交易国の人間がもう少し高位だったら、俺が直接交渉出来たんだが、今この国に居るのは商会の下っ端レベルなんだよな。
言葉は習得しているし通じないということもないが、流石に格式が合わないというか、スラングまみれの言葉を俺に吐けば相手の立場が悪くなる。
ま、バルディ領には南大陸語が堪能な人間も多いから、交渉には問題ないだろう。
「マックス様、そこまで譲ってよろしかったのですか?」
「あ? 保釈金のことか? つっても、向こうとの交渉なんて不可能だからな。ある程度は負けないと向こうもやる気にならんだろ」
「はあ」
「犠牲になった領民や騒ぎに巻き込まれた漁師たちに対する補償のために交渉したが、ゲルハルディ家……というか、俺は保釈金自体いらないしな」
「はっ!?」
「だって、こちとら魔法2発で終わらせたし、それ以外には船に乗ってただけだもんよ」
「それは……そうですが」
金はあればあるだけ良いもんだが、がめつすぎるのも貴族としては失格だ。
貴族として生きるだけの金は領民からもらってるし、保釈金なんかもらっても騎士たちの恩給や消耗品の補填、被害者への補償で消えるだけだしな。
ま、3割も貰えれば俺のポケットマネーからいくらか包めば十分に補填可能だし、向こうとしても3割くらいは払うだろ。
「それよりも、これからどうするかな~。バルディ領の滞在は秋の間だけのつもりだったけど、俺たちが居たら復興の邪魔だよな?」
「まあ、そうでしょうね。バルディ男爵としては口が裂けても邪魔だとは言わないでしょうが」
「ん~、港に戻ったらアントンに父上たちへの伝令を頼んで……そこからは待ちか。俺やレナはアントンの手伝いをするから、クルトたちは持ち回りで復興の手伝いをしてくれるか?」
「わかりました」
バルディ領が直接攻められたわけではなく、海上での戦闘になったが、それでも余波がないわけではない。
今回の侵略をきっかけにバカなことをする輩が出るかもしれないし、伏兵が近隣に潜んでいる可能性もある。
クルトたちにはその辺のケアを中心に、不安になっている領民たちへの支えになってもらおう。
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