81 / 100
幼少期
81 風雲急を告げる
しおりを挟む
夏も終わりに近づき、エンケ領での視察も大体が終わったということで、俺たちはバルディ領に向けて出発していた。
バルディ領が襲撃されるのは秋で、宿泊、休憩なんかを考慮した移動時間を考えても、秋までにはバルディ領に十分にたどり着くという時期に出発できた。
「クルト、バルディ領には連絡してくれたんだよな?」
「はいマックス様。エンケ領の騎士に伝令を送ってもらうように頼んでありますよ」
この世界は前世の世界同様、電気もあれば家電もあるが、伝令手段に関しては未発達だ。
というのも、この世界は前世とは違って、あらゆるところにモンスターが蔓延っているので、電線やらケーブルやらを各町間、各領間で延ばすことができない。
街中では簡易的な電話も開発されているのだが、その規模が一向に国単位、世界単位で発達しない原因だな。
電波を使えばいいじゃん、なんて軽く考えるかもしれんが、電波の使い方なんぞ素人には分からんし、そこまでの技術発達はまだまだ見込めないのが現状だな。
で、何が言いたいかというと、この世界で連絡を行うためにはモンスターを倒せる騎士が行うのが普通ってことだ。
手紙の配達なんかを行う業者もいるが、そちらはモンスターに襲われたら荷物を捨てて逃げたりすることもあるので、信用度は低めだな。
なんで、バルディ領への連絡は騎士を使うのだが、俺やレナの護衛に連れてきている騎士を使うのはクルトに反対されているので、訪れた領の騎士にお願いしているというわけだ。
もちろん、きちんと謝礼を渡しているし、無理にやらせているわけではない。
「んじゃあ、こっちはのんびりと旅を楽しむかね」
「護衛している側としては、のんびりとはいきませんけどね」
「まあまあ、俺もレナも自衛くらいはできるしそこまで堅苦しく考えなくていいって」
「わかってはいますが、それとこれとは別ですから」
ま、護衛騎士が護衛に専念しなかったら、騎士失格というか、仕事しろって言われるしな。
「ん? クルト、なんか向こうから土煙が見えるが、なんだ?」
「本当ですか? ……なんでしょうね? この辺りにはあれほどの土煙を出すモンスターは生息していないはずですが……」
「新種か?」
「総員! 警戒体制に移行!」
クルトが声を上げると俺とレナを前後に挟んで移動していた、護衛騎士が前方へと固まる。
今回の旅では全員が馬での移動となっているので、騎士たちも俺やレナも馬上で戦闘体制へと移行する。
「マックス様……あれは、馬ではありませんか?」
「レナ、本当かい?」
「はい、魔法で視力を上げてみましたが、騎士が乗っている馬のようです」
レナは風と闇の2属性の魔法を使えるが、魔法の射程が本人の周囲50cmしかないという欠点がある。
ま、風魔法も闇魔法もバフが充実している属性なので、そこまでの欠点ではないのだが、それもあってゲーム内では便利アイテム以上の扱いを受けなかったわけだ。
「クルト、騎士に合図をして速度を落とすようにさせろ」
「はっ!」
クルトに命令すると、護衛騎士の一部が即座に荷物の中から手旗を用意する。
これはゲルハルディ領周辺で使われているもので、騎士同士の連絡手段としても用いられているものだな。
手旗で合図を送ると、土煙はみるみるうちに小さくなり、俺の眼でも走ってきているのが馬に乗った騎士だと確認できるようになった。
「ゲルハルディ伯爵令息様、バルディ男爵令嬢様、御前失礼いたします」
「かしこまった挨拶は良い。バルディ領の騎士のルッツだな。急いでいたようだが、何かあったのか?」
「はっ! 急報です。バルディ領の海上にて不審な船が発見されました。敵襲の恐れがあるので、ゲルハルディ伯爵令息様一行にはゲルハルディ領への避難を、とのことです」
「敵襲!? いつもの交易船とは違うのだな?」
「はっ! マストに掲げている旗がいつもとは違っていたのです。バルディ領に滞在していた交易国の人間によると、南大陸で争っている敵国とのことで」
このタイミングで南大陸からの敵襲……あまりにも、早すぎる!
「クルト、ここからバルディ領まではどれくらいかかる?」
「休息なしで行けば、およそ1日かと」
「では、急ぐぞ! ルッツ、まだ走れるか?」
「ゲルハルディ伯爵令息様! 御身が危険です! 急ぎ避難を!」
「それは聞けん! 友好領……それも大事な婚約者の生まれ故郷が危険にされされているというのに、逃げるなど次期領主として、貴族としてできんことだ!」
「ですが!」
「ルッツ、俺たちはバルディ領へと向かう! その旨をゲルハルディ領にいる父上と母上、それにレナの父であるテオに伝えてくれ。バルディ領のことはこちらに任せてほしいとな」
「~~……はっ! 承知致しました!」
バルディ領が襲撃されるのは秋で、宿泊、休憩なんかを考慮した移動時間を考えても、秋までにはバルディ領に十分にたどり着くという時期に出発できた。
「クルト、バルディ領には連絡してくれたんだよな?」
「はいマックス様。エンケ領の騎士に伝令を送ってもらうように頼んでありますよ」
この世界は前世の世界同様、電気もあれば家電もあるが、伝令手段に関しては未発達だ。
というのも、この世界は前世とは違って、あらゆるところにモンスターが蔓延っているので、電線やらケーブルやらを各町間、各領間で延ばすことができない。
街中では簡易的な電話も開発されているのだが、その規模が一向に国単位、世界単位で発達しない原因だな。
電波を使えばいいじゃん、なんて軽く考えるかもしれんが、電波の使い方なんぞ素人には分からんし、そこまでの技術発達はまだまだ見込めないのが現状だな。
で、何が言いたいかというと、この世界で連絡を行うためにはモンスターを倒せる騎士が行うのが普通ってことだ。
手紙の配達なんかを行う業者もいるが、そちらはモンスターに襲われたら荷物を捨てて逃げたりすることもあるので、信用度は低めだな。
なんで、バルディ領への連絡は騎士を使うのだが、俺やレナの護衛に連れてきている騎士を使うのはクルトに反対されているので、訪れた領の騎士にお願いしているというわけだ。
もちろん、きちんと謝礼を渡しているし、無理にやらせているわけではない。
「んじゃあ、こっちはのんびりと旅を楽しむかね」
「護衛している側としては、のんびりとはいきませんけどね」
「まあまあ、俺もレナも自衛くらいはできるしそこまで堅苦しく考えなくていいって」
「わかってはいますが、それとこれとは別ですから」
ま、護衛騎士が護衛に専念しなかったら、騎士失格というか、仕事しろって言われるしな。
「ん? クルト、なんか向こうから土煙が見えるが、なんだ?」
「本当ですか? ……なんでしょうね? この辺りにはあれほどの土煙を出すモンスターは生息していないはずですが……」
「新種か?」
「総員! 警戒体制に移行!」
クルトが声を上げると俺とレナを前後に挟んで移動していた、護衛騎士が前方へと固まる。
今回の旅では全員が馬での移動となっているので、騎士たちも俺やレナも馬上で戦闘体制へと移行する。
「マックス様……あれは、馬ではありませんか?」
「レナ、本当かい?」
「はい、魔法で視力を上げてみましたが、騎士が乗っている馬のようです」
レナは風と闇の2属性の魔法を使えるが、魔法の射程が本人の周囲50cmしかないという欠点がある。
ま、風魔法も闇魔法もバフが充実している属性なので、そこまでの欠点ではないのだが、それもあってゲーム内では便利アイテム以上の扱いを受けなかったわけだ。
「クルト、騎士に合図をして速度を落とすようにさせろ」
「はっ!」
クルトに命令すると、護衛騎士の一部が即座に荷物の中から手旗を用意する。
これはゲルハルディ領周辺で使われているもので、騎士同士の連絡手段としても用いられているものだな。
手旗で合図を送ると、土煙はみるみるうちに小さくなり、俺の眼でも走ってきているのが馬に乗った騎士だと確認できるようになった。
「ゲルハルディ伯爵令息様、バルディ男爵令嬢様、御前失礼いたします」
「かしこまった挨拶は良い。バルディ領の騎士のルッツだな。急いでいたようだが、何かあったのか?」
「はっ! 急報です。バルディ領の海上にて不審な船が発見されました。敵襲の恐れがあるので、ゲルハルディ伯爵令息様一行にはゲルハルディ領への避難を、とのことです」
「敵襲!? いつもの交易船とは違うのだな?」
「はっ! マストに掲げている旗がいつもとは違っていたのです。バルディ領に滞在していた交易国の人間によると、南大陸で争っている敵国とのことで」
このタイミングで南大陸からの敵襲……あまりにも、早すぎる!
「クルト、ここからバルディ領まではどれくらいかかる?」
「休息なしで行けば、およそ1日かと」
「では、急ぐぞ! ルッツ、まだ走れるか?」
「ゲルハルディ伯爵令息様! 御身が危険です! 急ぎ避難を!」
「それは聞けん! 友好領……それも大事な婚約者の生まれ故郷が危険にされされているというのに、逃げるなど次期領主として、貴族としてできんことだ!」
「ですが!」
「ルッツ、俺たちはバルディ領へと向かう! その旨をゲルハルディ領にいる父上と母上、それにレナの父であるテオに伝えてくれ。バルディ領のことはこちらに任せてほしいとな」
「~~……はっ! 承知致しました!」
48
お気に入りに追加
230
あなたにおすすめの小説
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。
だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。
それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。
王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!?
けれど、そこには……。
※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
異世界転生したら嫌われ者の男の娘になっていてざまぁ断罪されそう。 ざまぁ回避しようとするも何をやっても嫌われる。
甘いからあげ
ファンタジー
異世界転生したら僕もざまぁ投票した嫌われ者の男の娘になっていた。
美少女日常オールスターゲームで女を抱くは風呂も更衣室も女用を使いたがる。
男性達が大好きな美少女に下心満載でべたべたするわ。そりゃユーザーに嫌われるわ。
僕もざまぁ投票してたが、まさかざまぁ投票した嫌われ者の男の娘になるなんて。
声も男性声優だし。体つきも少年だし顔もメイク落とせば少年でしかないし。
これは嫌われる要素しかない。好かれる要素がない。
絶望すぎる異世界転生。それでも死にたくないざまぁ回避してラスボスを倒す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる