63 / 116
幼少期
63 ローズマリー嬢の初恋の行方
しおりを挟む
「マックス、私この方が気に入りましたわ。是非とも私にくださいな」
「ローズマリー嬢、クルトは物ではありません。下さいと言われて、そうホイホイとやってしまえば我が家は誰からも信頼されなくなってしまうでしょう」
「? 私は公爵令嬢よ? それでもダメなの?」
「はぁ……根本的に勘違いをしていますが、その辺を正すのは後でまとめてにしましょう。……クルトのことですが、彼には将来を誓い合った恋人がいるので引き抜きはダメです」
「「えっ!?」」
驚きの声を上げたのはクルトとレナだ。レナはクルトの恋人のことを知らなかったから、驚くのは無理ないが、なんでクルトが驚いているんだ?
「マ、マックス様! どうしてそれを!?」
「ん? 小隊の連中から聞いたぞ? 小隊長に恋人ができた~って」
「あ……あいつら!」
ん? なんかクルトが切れているが娯楽の少ない田舎の騎士団で、出世株の人間の色恋沙汰なんて噂になっていて当然だろ。
もちろん、父上にも母上にも報告済みで、相手の身辺調査も済んでいる。うんうん、クルトの選んだお嬢さんはゲルハルディ領への忠誠も篤い家の出身のようで非常に助かる。
「別れればいいじゃない? ねえ、貴方。貴方も公爵令嬢の婚約者になれたほうが幸せでしょう?」
「ローズマリー嬢、人の幸せはその人が決めるものです。権力をかさに着て、うんと言わせても後々につらくなるのは貴女ですよ」
「マックス、私はこの方に聞いているの」
「マックス様、よろしいでしょうか?」
「ああ、エルメライヒ公爵令嬢だ。失礼のないように自分の気持ちをお伝えしろ」
クルトが助けを求めるようにこちらを見つめてきたが、ここで俺がゲルハルディの名を出して強制的にこの話を終わらせてしまえば、こちらも権力をかさに着ていることになる。
面倒なことだとは思うが、クルト自身が自分の気持ちを伝えるしかない。
ま、俺にできることはクルトの選択を後押しすることと、後始末を請け負うことだな。
「エルメライヒ公爵令嬢。私のような非才な騎士にお声がけいただきありがとうございます。……ですが、私はゲルハルディ領の騎士です。エルメライヒ公爵令嬢の元に行くことは叶いません」
「私の婚約者になるのは嫌なの?」
「エルメライヒ公爵令嬢がお美しく、その婚約者になられる方はきっと幸せになることでしょう。ですが、私はゲルハルディ領に誓いを立てた騎士。守りたいものも、領地も、大事なものも、すべてゲルハルディ領にあるのです」
「マックス!」
「諦めてください、ローズマリー嬢。……これ以上なさるのなら、こちらもローズマリー嬢ではなく、エルメライヒ公爵令嬢とお呼びすることになります」
公爵令嬢と私の矜持が高すぎることと、世間を知らなすぎるところはあるものの、ローズマリー・フォン・エルメライヒはゲームのラスボス悪役令嬢ほどには傲慢ではない。
だからこそ、俺は友人になろうと思いローズマリー嬢と呼ぶことにしたが、これ以上権力を行使して誰かを困らせるのなら、友人になるという話もなしだ。
ただの伯爵令息、ただの公爵令嬢、そういう関係性として扱わざるを得なくなる。
「~~、レナ!」
「ローズマリー様、我儘を通されてクルトの将来を奪ってしまえば、後悔することになります。ここは引くのが良いかと」
「~~!!」
ローズマリー嬢はレナにも味方してもらえなかったことで、持ち歩いていた扇を強く握りしめてうつむいてしまった。
公爵令嬢として堂々とした振る舞いをしていたが、やはり7歳、感情のコントロールはまだまだのようだな。
「クルト、ローズマリー嬢に騎士団の見学をしてもらうつもりだったが、今日は体調が悪そうだ。皆にはいつも通り訓練に励むように伝えてくれ」
「はっ!」
とりあえず、クルトがここにいても話は進まないし、クルトも気まずいだろう。
今日の見学はキャンセルにして、ローズマリー嬢に現実を伝えるのを先にしよう。
「ローズマリー嬢、騎士団はいつでも見学できますので、本日のところは客室に戻り、私達とお茶をしましょう」
「……マックス。…………わかったわ、面倒をかけるわね」
「私たちは友人なのでしょう? 辛い思いをした時に寄り添うのも友人ですので」
「……ふふっ、お友達が出来るのは初めてですので、慰めてもらうのも初めてですわね」
「わ、私も友人としてローズマリー様に寄り添いますので」
「レナも、ありがとう」
多分、俺もレナに拒まれていたらこのくらい落ち込んでいたのだろう……そう思わせるほどにローズマリー嬢は落ち込んでいる。
ま、クルトに断らせた本人が慰めるのもどうかとは思うが、ローズマリー嬢の侍女たちだけにさせるのもどうかと思うし、お茶を飲みつつ話を聞くかな。
「ローズマリー嬢、クルトは物ではありません。下さいと言われて、そうホイホイとやってしまえば我が家は誰からも信頼されなくなってしまうでしょう」
「? 私は公爵令嬢よ? それでもダメなの?」
「はぁ……根本的に勘違いをしていますが、その辺を正すのは後でまとめてにしましょう。……クルトのことですが、彼には将来を誓い合った恋人がいるので引き抜きはダメです」
「「えっ!?」」
驚きの声を上げたのはクルトとレナだ。レナはクルトの恋人のことを知らなかったから、驚くのは無理ないが、なんでクルトが驚いているんだ?
「マ、マックス様! どうしてそれを!?」
「ん? 小隊の連中から聞いたぞ? 小隊長に恋人ができた~って」
「あ……あいつら!」
ん? なんかクルトが切れているが娯楽の少ない田舎の騎士団で、出世株の人間の色恋沙汰なんて噂になっていて当然だろ。
もちろん、父上にも母上にも報告済みで、相手の身辺調査も済んでいる。うんうん、クルトの選んだお嬢さんはゲルハルディ領への忠誠も篤い家の出身のようで非常に助かる。
「別れればいいじゃない? ねえ、貴方。貴方も公爵令嬢の婚約者になれたほうが幸せでしょう?」
「ローズマリー嬢、人の幸せはその人が決めるものです。権力をかさに着て、うんと言わせても後々につらくなるのは貴女ですよ」
「マックス、私はこの方に聞いているの」
「マックス様、よろしいでしょうか?」
「ああ、エルメライヒ公爵令嬢だ。失礼のないように自分の気持ちをお伝えしろ」
クルトが助けを求めるようにこちらを見つめてきたが、ここで俺がゲルハルディの名を出して強制的にこの話を終わらせてしまえば、こちらも権力をかさに着ていることになる。
面倒なことだとは思うが、クルト自身が自分の気持ちを伝えるしかない。
ま、俺にできることはクルトの選択を後押しすることと、後始末を請け負うことだな。
「エルメライヒ公爵令嬢。私のような非才な騎士にお声がけいただきありがとうございます。……ですが、私はゲルハルディ領の騎士です。エルメライヒ公爵令嬢の元に行くことは叶いません」
「私の婚約者になるのは嫌なの?」
「エルメライヒ公爵令嬢がお美しく、その婚約者になられる方はきっと幸せになることでしょう。ですが、私はゲルハルディ領に誓いを立てた騎士。守りたいものも、領地も、大事なものも、すべてゲルハルディ領にあるのです」
「マックス!」
「諦めてください、ローズマリー嬢。……これ以上なさるのなら、こちらもローズマリー嬢ではなく、エルメライヒ公爵令嬢とお呼びすることになります」
公爵令嬢と私の矜持が高すぎることと、世間を知らなすぎるところはあるものの、ローズマリー・フォン・エルメライヒはゲームのラスボス悪役令嬢ほどには傲慢ではない。
だからこそ、俺は友人になろうと思いローズマリー嬢と呼ぶことにしたが、これ以上権力を行使して誰かを困らせるのなら、友人になるという話もなしだ。
ただの伯爵令息、ただの公爵令嬢、そういう関係性として扱わざるを得なくなる。
「~~、レナ!」
「ローズマリー様、我儘を通されてクルトの将来を奪ってしまえば、後悔することになります。ここは引くのが良いかと」
「~~!!」
ローズマリー嬢はレナにも味方してもらえなかったことで、持ち歩いていた扇を強く握りしめてうつむいてしまった。
公爵令嬢として堂々とした振る舞いをしていたが、やはり7歳、感情のコントロールはまだまだのようだな。
「クルト、ローズマリー嬢に騎士団の見学をしてもらうつもりだったが、今日は体調が悪そうだ。皆にはいつも通り訓練に励むように伝えてくれ」
「はっ!」
とりあえず、クルトがここにいても話は進まないし、クルトも気まずいだろう。
今日の見学はキャンセルにして、ローズマリー嬢に現実を伝えるのを先にしよう。
「ローズマリー嬢、騎士団はいつでも見学できますので、本日のところは客室に戻り、私達とお茶をしましょう」
「……マックス。…………わかったわ、面倒をかけるわね」
「私たちは友人なのでしょう? 辛い思いをした時に寄り添うのも友人ですので」
「……ふふっ、お友達が出来るのは初めてですので、慰めてもらうのも初めてですわね」
「わ、私も友人としてローズマリー様に寄り添いますので」
「レナも、ありがとう」
多分、俺もレナに拒まれていたらこのくらい落ち込んでいたのだろう……そう思わせるほどにローズマリー嬢は落ち込んでいる。
ま、クルトに断らせた本人が慰めるのもどうかとは思うが、ローズマリー嬢の侍女たちだけにさせるのもどうかと思うし、お茶を飲みつつ話を聞くかな。
71
お気に入りに追加
253
あなたにおすすめの小説
物語の悪役らしいが自由にします
名無シング
ファンタジー
5歳でギフトとしてスキルを得る世界
スキル付与の儀式の時に前世の記憶を思い出したケヴィン・ペントレーは『吸収』のスキルを与えられ、使い方が分からずにペントレー伯爵家から見放され、勇者に立ちはだかって散る物語の序盤中ボスとして終わる役割を当てられていた。
ーどうせ見放されるなら、好きにしますかー
スキルを授かって数年後、ケヴィンは継承を放棄して従者である男爵令嬢と共に体を鍛えながらスキルを極める形で自由に生きることにした。
※カクヨムにも投稿してます。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる