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幼少期
51 アンナの課外授業・準備
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「アンナ、準備はできているか?」
「はい、お兄様」
アンナの部屋に行くと、既に教師も来ていてアンナの準備は万端だ。
いつもは貴族令嬢らしくドレスで行動することが多いアンナだが、今日は動き回ることを想定して平民でも通用する服装になっている。
ま、それでも裕福な平民レベルだから、護衛として騎士も何人か同行させるけど。
「アンナ、今日はユリア叔母さんや領民に協力してもらって、平民が普段どんな生活をしているかを知る課外授業だ。お前がなりたいという平民、そして遊んで暮らしているという平民の子供の様子をきちんと観察するように」
「はい」
「ユリア叔母さんには今日一日同行してもらえるようにお願いしているから、何か質問があれば俺か叔母さんに聞くように。間違っても平民の仕事を邪魔するのはダメだからな」
「わかっていますわ」
少しぶすくれた表情をするアンナだが、これも可愛いと思ってしまうのは妹だからかな。
とりあえず、協力してもらっている領民に迷惑が掛からないようにだけはしておかないとだからな。
「マックス望み通りに手伝いに来たわよ。それにアンナ、久しぶりね。相変わらず可愛らしいわ」
「ユリア叔母さん、今日はよろしくお願いします」
「お・ね・え・さ・ま」
「はいはい、ユリア姉さん。今日はよろしくね」
「お姉さま、よろしくお願いしますわ」
「あ~、もう、アンナはマックスとは違って初めから姉と呼んでくれてうれしいわ~。マックスも昔はこれくらい素直だったんだけどね~」
記憶が戻る前のことだろうが、多分面倒くさいから合わせていただけで、本気で姉と思っていたわけではない。
というか、父上と5歳くらいしか違わないのに姉は無理があるだろう。
「ユリア姉さん、今日の順路は?」
「はいはい、屋敷の外に私が乗ってきた馬車があるよ。まずはアンドレ商会に行ってから、話を付けてある領民のところへ行くからね。……でも、本当に行くの? アンナはまだ4歳だし早くない?」
「早くないですよ。俺が4歳の頃には見合い話が進んでいて、貴族教育はある程度終わらせていましたよ」
「そりゃあ、マックスは規格外だから」
「父上と同じにしないでください」
ユリア叔母さんとギャーギャー言い合いつつ、屋敷の前に着くとそこそこ広めの馬車が止まっていた。
今日の面子が、俺、レナ、アンナ、教師の4人であることは伝えてあるので広めの馬車で来てくれたようだな。
「で、どういう経緯でこういうことになったんだい?」
「それは……」
一応、昨日のうちにユリア叔母さんには事情を説明してあるけど、ユリア叔母さんはアンナから直接事情を聞きたいようだ。
ま、気持ちはわかる。かなりの人数に迷惑をかけるわけだし、いくら兄とはいっても俺のお節介で済むレベルではなくなっているからな。
「ユリアお姉さま、私はお姉さまのようになりたいのです」
「まあ、うれしいっ!」
「ユリア姉さん、そうじゃないでしょ」
「わかっているわよ。で、アンナ?」
「だから、私はお勉強をしなければならない貴族よりも平民になりたいのです」
「う~ん、アンナ。アンナの言うように平民になれば今のように勉強漬けの生活ではなくなるよ。でもさ、マックスや兄さん……アンナにとっては父親や母親とは簡単に会えなくなるのは分かっている?」
「……お父様やお母様と?」
「そうさ。ゲルハルディ家は貴族だからね。私だって会うためにはあらかじめアポイントを取るし、他の人がいれば家族として気安く接することはないよ」
う~ん、アンナのリアクションに俺が入っていなかったことを嘆くべきか、それともユリア叔母さんは俺相手にはアポも取らなければ誰かいても雑に接していることを突っ込むべきか。
「でも、私はお父様とお母様の娘ですわ」
「私も兄さんの妹だよ。それでもね、ルールってものは大事なんだよ」
「ま、こんな感じで勘違いしていることが多いみたいだから、アンナがそう言った諸々を捨ててでも本当に平民になりたいかを再確認したいってことだよ」
「まあ、みんなには普段通りにするように頼んであるからいいけどね。アンナ、確かに貴族は大変だよ。それは貴族教育をきちんと受けきった私が保証する。でもね、だからといって平民が楽なわけじゃない。それはトーマスに嫁いで平民になった私が保証する」
今回の課外授業をユリア叔母さんに頼んだのは、これが理由だ。
俺や父上が何を言ったところで、本質的には平民のことわからない……いや、俺は前世で平民というか一般市民だったからわかるが、それはアンナには説明できないしな。
だけど、ユリア叔母さんは貴族と平民、両方の苦労を分かっている人物だ。だから、アンナにとっても言葉が響きやすいだろうと考えてのことだ。
「はい、お兄様」
アンナの部屋に行くと、既に教師も来ていてアンナの準備は万端だ。
いつもは貴族令嬢らしくドレスで行動することが多いアンナだが、今日は動き回ることを想定して平民でも通用する服装になっている。
ま、それでも裕福な平民レベルだから、護衛として騎士も何人か同行させるけど。
「アンナ、今日はユリア叔母さんや領民に協力してもらって、平民が普段どんな生活をしているかを知る課外授業だ。お前がなりたいという平民、そして遊んで暮らしているという平民の子供の様子をきちんと観察するように」
「はい」
「ユリア叔母さんには今日一日同行してもらえるようにお願いしているから、何か質問があれば俺か叔母さんに聞くように。間違っても平民の仕事を邪魔するのはダメだからな」
「わかっていますわ」
少しぶすくれた表情をするアンナだが、これも可愛いと思ってしまうのは妹だからかな。
とりあえず、協力してもらっている領民に迷惑が掛からないようにだけはしておかないとだからな。
「マックス望み通りに手伝いに来たわよ。それにアンナ、久しぶりね。相変わらず可愛らしいわ」
「ユリア叔母さん、今日はよろしくお願いします」
「お・ね・え・さ・ま」
「はいはい、ユリア姉さん。今日はよろしくね」
「お姉さま、よろしくお願いしますわ」
「あ~、もう、アンナはマックスとは違って初めから姉と呼んでくれてうれしいわ~。マックスも昔はこれくらい素直だったんだけどね~」
記憶が戻る前のことだろうが、多分面倒くさいから合わせていただけで、本気で姉と思っていたわけではない。
というか、父上と5歳くらいしか違わないのに姉は無理があるだろう。
「ユリア姉さん、今日の順路は?」
「はいはい、屋敷の外に私が乗ってきた馬車があるよ。まずはアンドレ商会に行ってから、話を付けてある領民のところへ行くからね。……でも、本当に行くの? アンナはまだ4歳だし早くない?」
「早くないですよ。俺が4歳の頃には見合い話が進んでいて、貴族教育はある程度終わらせていましたよ」
「そりゃあ、マックスは規格外だから」
「父上と同じにしないでください」
ユリア叔母さんとギャーギャー言い合いつつ、屋敷の前に着くとそこそこ広めの馬車が止まっていた。
今日の面子が、俺、レナ、アンナ、教師の4人であることは伝えてあるので広めの馬車で来てくれたようだな。
「で、どういう経緯でこういうことになったんだい?」
「それは……」
一応、昨日のうちにユリア叔母さんには事情を説明してあるけど、ユリア叔母さんはアンナから直接事情を聞きたいようだ。
ま、気持ちはわかる。かなりの人数に迷惑をかけるわけだし、いくら兄とはいっても俺のお節介で済むレベルではなくなっているからな。
「ユリアお姉さま、私はお姉さまのようになりたいのです」
「まあ、うれしいっ!」
「ユリア姉さん、そうじゃないでしょ」
「わかっているわよ。で、アンナ?」
「だから、私はお勉強をしなければならない貴族よりも平民になりたいのです」
「う~ん、アンナ。アンナの言うように平民になれば今のように勉強漬けの生活ではなくなるよ。でもさ、マックスや兄さん……アンナにとっては父親や母親とは簡単に会えなくなるのは分かっている?」
「……お父様やお母様と?」
「そうさ。ゲルハルディ家は貴族だからね。私だって会うためにはあらかじめアポイントを取るし、他の人がいれば家族として気安く接することはないよ」
う~ん、アンナのリアクションに俺が入っていなかったことを嘆くべきか、それともユリア叔母さんは俺相手にはアポも取らなければ誰かいても雑に接していることを突っ込むべきか。
「でも、私はお父様とお母様の娘ですわ」
「私も兄さんの妹だよ。それでもね、ルールってものは大事なんだよ」
「ま、こんな感じで勘違いしていることが多いみたいだから、アンナがそう言った諸々を捨ててでも本当に平民になりたいかを再確認したいってことだよ」
「まあ、みんなには普段通りにするように頼んであるからいいけどね。アンナ、確かに貴族は大変だよ。それは貴族教育をきちんと受けきった私が保証する。でもね、だからといって平民が楽なわけじゃない。それはトーマスに嫁いで平民になった私が保証する」
今回の課外授業をユリア叔母さんに頼んだのは、これが理由だ。
俺や父上が何を言ったところで、本質的には平民のことわからない……いや、俺は前世で平民というか一般市民だったからわかるが、それはアンナには説明できないしな。
だけど、ユリア叔母さんは貴族と平民、両方の苦労を分かっている人物だ。だから、アンナにとっても言葉が響きやすいだろうと考えてのことだ。
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