気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

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幼少期

49 爺様との訓練

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「さて、マックス、ダンジョンを攻略してどの程度まで成長したのか、このジジイが確認しやろう」

 レナとのデートで思いが通じ合ったと思ったら、翌日には爺様に絡まれている。
 うん、言ってることは分かるんだよ。爺様としては孫がダンジョンを攻略したと聞いて、戻ってきてみたら、当の孫は王都に行っていて、気持ちのやり場がないのだろう。
 そして、王都から帰ってきたと思ったら、婚約者とデートをしている……うん、わかるよ爺様の気持ちの行き場が無いってのはね。

「……はぁ、爺様。私は昨日、レナとデートをして幸せいっぱいなのですが」

「ええい、戦は待ってはくれぬものなのじゃぞ!」

「……戦って……はぁ、クルト、武器の用意をお願いできるか?」

「はい、マックス様」

 今日は騎士団の見学に来ただけで、訓練にはしばらく参加するつもりはなかったんだが。
 まだ、ダンジョン攻略してから自分の能力の確認が出来てないから、どうなっているのか自分でもよくわかってないんだよな。
 とりあえず、ステータスはどれも中ボス悪役令息だったマックスに近いものになっているし、魔法もマックスが覚えられるものはすべて使えるようになっているようなんだがな。

「……マックスぅ、爺にも構ってくれんと拗ねてしまうぞ」

「可愛くありませんよ、爺様」

「わかっておるわい。ちょっとした茶目っ気じゃろ」

「はぁ、模擬戦を行う前に自主訓練で確認するつもりだったんですがね」

「だから、儂が確認すると言っておるのだろう。騎士団の連中はおろか、クラウスにも任せられんからのう」

 まあ、確かに爺様はこの領で一番の使い手……というか、対応力が群を抜いているからな。
 陸上戦なら父上の方が強いのだが、父上は相手に何もさせずに潰す、みたいな戦い方だから、こういった相手の戦力を量るのは爺様のほうが得意だ。

「マックス様」

「ああ、ありがとうクルト」

 クルトには模擬戦用に刃引きしたショートソードといつもの盾を持ってきてもらったが……うーん、前に使っていたころより軽く感じるな。
 ちなみに疾風の指輪は外して自室の金庫の中にしまってある。
 あれは強すぎるというか、敵対された瞬間から時間感覚が変わってしまうから、日常生活で付けていると支障があるんだよな。

「では、いくぞ!」

「おう!」

 というわけで、爺様との模擬戦が始まったわけだけど、爺様は俺と似たような構成の戦い方、右手にロングソード、左手にラウンドシールドを構えている。
 基本に忠実、相手の剣をシールドで受け流し、あるいは弾き返し、剣で切り付ける。
 剣術のお手本みたいだが、その完成度は高く、騎士団内では爺様に対抗すべく、色々な武器を試しているようなやつもいるくらいだ。

「ふっ!」

 爺様と見合っていても始まらないと思い、こちらから剣を振るうも簡単にはじかれてしまう。
 うーん、レベルが上がって力も素早さも上がっているのだが、どうも、爺様には先読みされている感じだな。

「甘いぞ、マックス!」

「これなら!」

「まだまだ!」

 貴族らしからぬというか、騎士らしからぬ戦い方……剣に加えて蹴りも放ってみるが、全くと言っていいほどに爺様には当たらない。
 ……いや、当たってはいるのだが、すべて盾でいなされるか弾かれるか……レベルが上がってステータスは俺の方が高いはずなのに……これが技量の差か。

「うむうむ、マックスも上達したようだの」

「いやいや、こっちの攻撃を全部いなしておいて、そのセリフは感じ悪いって」

「ほっほっほっ、息が乱れていない時点で成長しておるわい」

「はぁ、強者のセリフだ」

「ま、レベルは上がっているようじゃが、使いこなせてはおらんようじゃの」

「ダンジョン攻略して初めての実戦ですからね。……ステータスに見合うような戦い方を身に着けないとなぁ」

「戦闘技術に終わりはないからのぉ。儂とてまだまだよ」

「上には上がいるって話ですか?」

「おう、北東辺境伯と北西辺境伯とはまだ決着がついておらんしの」

「前……になっていますよ、多分」

「かのぉ。もう10年以上会っておらんからの」

 まあ、この辺がゲームと現実の違いだよな。
 ゲームならレベルを上げればそのまま強くなっていたけど、現実では技量が戦闘のかなめになってくる。
 いくら速く動けて、力が強くても、剣の振るい方も知らなければ動き方も知らなければ、まともな剣術にはならない。
 しかも、強者ほど相手の動きを予測するから、半端に強くなっても読みやすくなるだけで、不利にはならずとも有利にもならないんだよな。
 はぁ、精進しないとな。
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