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幼少期
43 エルメライヒ公爵との会談・決着
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「ふむ、伯爵になるからウチと仲良くしておきたい……と?」
「味方は多い方が良いだろう? 貴族派と縁を結ぶくらいなら国王派のほうが良いよ」
「王家派でも年頃の男性はいるのでは? それこそ第3王子とか?」
「……年上は嫌だそうだ……お父様のような方は嫌とはっきりと言われたよ」
おっと、地雷を踏んだようだぞ。確か、エルメライヒ公爵は10歳以上年下の令嬢と結婚していたはず……本人同士はかなり仲が良く、愛を育んでいるのだが、身内からみると嫌なのかな?
しかし、エルメライヒ公爵令嬢も実の父親に向かって、父のような方は嫌って……言うなぁ。
「……年下か同い年となると……確かに国王派が一番ですかな」
俺もそうだが、3~5歳年下なら辺境伯家にも男児はいるからな。
ま、その辺は妹たちの婚約者候補だから調査は入念に行っている。
「一番はマックス君だったのだが、既に婚約済みならば無理は言えないしな。とはいえ、国王派と繋がりを持つのならばゲルハルディ伯爵家が一番なのも確か」
「ウチはともかく、辺境伯家は外敵と接していますから王都に来るのは稀ですし」
「そうなのだよっ! だから、なかなか繋ぎが持てなくてね」
ゲームでは主人公を執事として教育しつつ、婚約者にするエルメライヒ公爵令嬢だが、ミネッティ伯爵令嬢が主人公を奪った弊害がこういった形で現れるのか。
エルメライヒ公爵令嬢は主人公を拾うこともなく、公爵令嬢としての教育を受け続け、婚約者の選定に移った段階で自分に知り合いがいないことに気づく。
そして、貴族学園に通うことも拒否し、婚約者を作ることも拒否し、現状を維持しようとしている……か。
「わかりました。友人にならばなっても構いません。……ですが、あくまでも友人ですので」
「わかっておるよ。娘と会うときには婚約者を連れてきてもいいし、ゲルハルディ伯爵が同席しても良い。とにかく、娘に同年代との交流を持たせたいのだ」
「かしこまりました。王都に来た際には交流することをお約束します。ですが、その代わり……」
「ああ、そちらもわかっておる。ゲルハルディ伯爵領からの商人の移動には便宜を図ろう。他に欲しいものがあれば権限の範囲内なら叶えよう」
「ありがとうございます。エルメライヒ公爵も何かご入用の際には、ぜひとも我が領の商人をご活用ください。……それと、貴族学園に入学の際にミネッティ伯爵令嬢が暴走した際の後ろ盾になっていただければ」
「ミネッティ伯爵令嬢? 確かにマックス君とは婚約云々でもめてはおるが、問題を起こすと?」
「確証はありません。……ですが、既に婚約の顔合わせで暴走している令嬢ですから、大人の眼が少なくなる貴族学園で問題を起こさないという保証はないでしょう」
「……ふむ、確かにな。……私が公爵で居る間は、ミネッティ伯爵が配下なのには変わりない。もし、その令嬢が暴走するようなら諫めるのが私の役目であろう」
「ありがとうございます」
「うむうむ、ゲルハルディ伯爵もそれで良いか?」
「はい、領内の治安に関してはまだまだですが、対外的なことや商売に関しては息子の方がすでに上手ですからね。息子が良いというのなら私に否やはありませんよ」
「それは重畳。ゲルハルディ伯爵も王都に来る際には我が家に寄っていただきたい。歓待いたしますぞ」
「ありがたきお言葉」
言い残すと、エルメライヒ公爵は満足したのか、適当な挨拶をして部屋を出て行った。
「……ふぅ、疲れたな」
「……はい、父上」
「で、どう見る?」
「公爵の言っていたことは一定の信用ができるかと。エルメライヒ公爵家が公爵令嬢の代で伯爵家になるのは確かですし」
「だが、わざわざ我が家に頼むことか?」
「自分で言うのもなんですが、我が家は国王派の中でも中立というか、どことも争っていませんからね。辺境伯家に頼むよりは気楽なのでしょう」
「ふむ」
「辺境伯家が王都に寄り付かないのも確かですしね」
「確かにな。代替わりの時と次代が貴族学園に入学するとき、陛下の代替わりくらいか」
「そのほかの国王派は王宮勤めで王家派に対して厳しいですし、頼むのならウチになるのは陛下からの依頼でもわかることでは?」
そもそも、ウチが特殊でなければ陛下も国王派の強化のために王家派や貴族派の監視を頼みはしなかっただろう。
「それもそうだな……それよりも良かったのか?」
「公爵令嬢の件ですか? 友人になるくらいなら。それに会いもしていないのに文句を言うようなら、あの無礼な伯爵令嬢と同じになってしまいますので」
「それもそうか」
ゲーム内ではラスボス悪役令嬢、この世界でもそこまで評判の良い令嬢ではないが、会いもしないで評価を下すのは失礼だろう。
ま、会ってみて矯正のしようのないほど破綻した性格をしていれば距離を取ればいいだけさ。
「味方は多い方が良いだろう? 貴族派と縁を結ぶくらいなら国王派のほうが良いよ」
「王家派でも年頃の男性はいるのでは? それこそ第3王子とか?」
「……年上は嫌だそうだ……お父様のような方は嫌とはっきりと言われたよ」
おっと、地雷を踏んだようだぞ。確か、エルメライヒ公爵は10歳以上年下の令嬢と結婚していたはず……本人同士はかなり仲が良く、愛を育んでいるのだが、身内からみると嫌なのかな?
しかし、エルメライヒ公爵令嬢も実の父親に向かって、父のような方は嫌って……言うなぁ。
「……年下か同い年となると……確かに国王派が一番ですかな」
俺もそうだが、3~5歳年下なら辺境伯家にも男児はいるからな。
ま、その辺は妹たちの婚約者候補だから調査は入念に行っている。
「一番はマックス君だったのだが、既に婚約済みならば無理は言えないしな。とはいえ、国王派と繋がりを持つのならばゲルハルディ伯爵家が一番なのも確か」
「ウチはともかく、辺境伯家は外敵と接していますから王都に来るのは稀ですし」
「そうなのだよっ! だから、なかなか繋ぎが持てなくてね」
ゲームでは主人公を執事として教育しつつ、婚約者にするエルメライヒ公爵令嬢だが、ミネッティ伯爵令嬢が主人公を奪った弊害がこういった形で現れるのか。
エルメライヒ公爵令嬢は主人公を拾うこともなく、公爵令嬢としての教育を受け続け、婚約者の選定に移った段階で自分に知り合いがいないことに気づく。
そして、貴族学園に通うことも拒否し、婚約者を作ることも拒否し、現状を維持しようとしている……か。
「わかりました。友人にならばなっても構いません。……ですが、あくまでも友人ですので」
「わかっておるよ。娘と会うときには婚約者を連れてきてもいいし、ゲルハルディ伯爵が同席しても良い。とにかく、娘に同年代との交流を持たせたいのだ」
「かしこまりました。王都に来た際には交流することをお約束します。ですが、その代わり……」
「ああ、そちらもわかっておる。ゲルハルディ伯爵領からの商人の移動には便宜を図ろう。他に欲しいものがあれば権限の範囲内なら叶えよう」
「ありがとうございます。エルメライヒ公爵も何かご入用の際には、ぜひとも我が領の商人をご活用ください。……それと、貴族学園に入学の際にミネッティ伯爵令嬢が暴走した際の後ろ盾になっていただければ」
「ミネッティ伯爵令嬢? 確かにマックス君とは婚約云々でもめてはおるが、問題を起こすと?」
「確証はありません。……ですが、既に婚約の顔合わせで暴走している令嬢ですから、大人の眼が少なくなる貴族学園で問題を起こさないという保証はないでしょう」
「……ふむ、確かにな。……私が公爵で居る間は、ミネッティ伯爵が配下なのには変わりない。もし、その令嬢が暴走するようなら諫めるのが私の役目であろう」
「ありがとうございます」
「うむうむ、ゲルハルディ伯爵もそれで良いか?」
「はい、領内の治安に関してはまだまだですが、対外的なことや商売に関しては息子の方がすでに上手ですからね。息子が良いというのなら私に否やはありませんよ」
「それは重畳。ゲルハルディ伯爵も王都に来る際には我が家に寄っていただきたい。歓待いたしますぞ」
「ありがたきお言葉」
言い残すと、エルメライヒ公爵は満足したのか、適当な挨拶をして部屋を出て行った。
「……ふぅ、疲れたな」
「……はい、父上」
「で、どう見る?」
「公爵の言っていたことは一定の信用ができるかと。エルメライヒ公爵家が公爵令嬢の代で伯爵家になるのは確かですし」
「だが、わざわざ我が家に頼むことか?」
「自分で言うのもなんですが、我が家は国王派の中でも中立というか、どことも争っていませんからね。辺境伯家に頼むよりは気楽なのでしょう」
「ふむ」
「辺境伯家が王都に寄り付かないのも確かですしね」
「確かにな。代替わりの時と次代が貴族学園に入学するとき、陛下の代替わりくらいか」
「そのほかの国王派は王宮勤めで王家派に対して厳しいですし、頼むのならウチになるのは陛下からの依頼でもわかることでは?」
そもそも、ウチが特殊でなければ陛下も国王派の強化のために王家派や貴族派の監視を頼みはしなかっただろう。
「それもそうだな……それよりも良かったのか?」
「公爵令嬢の件ですか? 友人になるくらいなら。それに会いもしていないのに文句を言うようなら、あの無礼な伯爵令嬢と同じになってしまいますので」
「それもそうか」
ゲーム内ではラスボス悪役令嬢、この世界でもそこまで評判の良い令嬢ではないが、会いもしないで評価を下すのは失礼だろう。
ま、会ってみて矯正のしようのないほど破綻した性格をしていれば距離を取ればいいだけさ。
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