上 下
37 / 100
幼少期

37 謁見

しおりを挟む
「王国の至宝、太陽たるアレクサンダー・ヴァイセンベルク国王陛下にご挨拶させていただきます。クラウス・フォン・ゲルハルディが一子、マックス・フォン・ゲルハルディと申します」

「うむ、急な呼び出し、苦労を掛けた」

 というわけで、陛下との謁見なのだが、基本的に謁見可能なのは爵位持ちでデビュタント前の令息、令嬢が謁見した記録がなく、どういった形式で謁見するかもかなり議論があったらしい。
 で、仕方なしに決められたのがコレ。俺の隣に父上がおり、基本的に受け答えは俺がするものの何か問題が起きた場合には父上が答えても良いというもの。
 陛下側は謁見時は基本的に宰相か、文官が陛下の言葉を伝えるのだが、今回はダンジョン攻略の褒章だからか陛下自身が受け答えしている。

「いえ、拝謁いただき感謝の極みです」

「此度はダンジョンを攻略したとの報せ、誠にあっぱれ。褒めて遣わすぞ」

「王国の臣たれば、当然のことでございます」

「ふむ、とはいえ、何も褒章がなければ、我が狭量とみなされるだろうな。何か欲しいものはあるか?」

「お褒めの言葉をいただけたことが何よりの褒章かと」

「クックック、良い教育を受けておるな。だが、子供らしく褒章をねだっても良いのだぞ?」

「では、子供らしく少しばかりのおねだりを」

「おお、言ってみよ」

「緊急時面会権をいただければ」

「緊急時面会権か。……だが、ソレは爵位持ちならば持っていて当然のものだぞ?」

「私は未だ爵位を持っていないので」

「なるほどな……ならば、第一級の緊急時面会権をやろう。……だが、ソレだけではダンジョン攻略には見合わんな……勇者の称号をやろうか」

 基本的に爵位持ちならば緊急時面会権はもっているが、それは爵位なり……つまりゲルハルディ伯爵がもつ緊急時面会権は伯爵までなら飛ばせるが、伯爵以上の爵位が相手なら無意味。
 だが、第一級の緊急時面会権ならば、王族すら飛ばして陛下に謁見可能。
 これが狙いだったが、本当に貰えるとは……ま、父上が根回しをしておいてくれたのだろうな。

「恐れ多くも国王陛下に申し上げます。そもそも勇者などと大げさに過ぎるのではないかと」

「……ほう」

 俺の言葉に謁見場にいた王都貴族がざわざわとするが、陛下自身は面白そうにこちらを見ている。
 これは、勇者云々に関しても根回し済みか?

「侵攻以前……100年以上前はダンジョン攻略など日常、更に、このような年端もいかない子供が攻略できるものに勇者などと大げさに過ぎる……と」

「ふむふむ」

「私はゲルハルディ伯爵を継ぐ身……準貴族の称号を貰っても困りますし、これからダンジョンを攻略する者も現れるでしょうが、子供が出来ることを偉そうに言われてもこちらも困ってしまいます」

「クックック、はー、はっはっは! これは面白いことをいう子供だな! 確かに、貴族学園に通う前の子供にできることをこれ見よがしに語られても失笑ものだな!」

「はい。恐らく、辺境伯などが本気を出せばダンジョンのいくつかは直ぐにでも攻略できるかと」

「ああ、だが、辺境伯たちには隣国の警戒をさせねばならんからな。そう易々とはいかんだろう」

「はい、此度もゲルハルディ領内を見回るという名目がなければ、ダンジョンの攻略などしようとは思いもしませんでした」

「辺境には色々とさせてしまっているからな。……ま、ダンジョンの管理を任せた中央貴族がふがいないのは事実か」

「……私の口からは」

「ま、その辺は宰相に任せるか。…………うむ、ゲルハルディ伯爵が一子、マックス・フォン・ゲルハルディの言を追認しよう! マックスにはゲルハルディ伯爵とは別に、第一級の緊急時面会権を、そして、ダンジョン攻略時の勇者の称号は本日をもって廃止とする!」

「ありがたき幸せ」

「みな! 異論はあろうが、確かにこのような子供が攻略できるものに我が国の爵位を与えることは出来ん! 我が国の爵位がそのように軽んじられるのは防がれなければならんからな! 宰相、ダンジョン攻略のための特別費用がきちんと使われているかの確認を急がせよ!」

「はっ!」

 陛下の言葉に謁見場にいた王都貴族は敬礼を返し、陛下の隣で控えていた宰相は陛下の依頼に返答をする。

「マックスとゲルハルディ伯爵には別室にて歓待の用意がある。下がってよい。……宰相、中央貴族へ召集の準備を! その他の者は書類の確認を!」

「「「「「「はっ!」」」」」」

 とりあえず、これで国王陛下との謁見は終了か。
 ま、付け焼き刃ではあったし、7歳という年齢だからお目こぼしされてる感はあったが、父上に止められることもなかったし、及第点かな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。 その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。 そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。 なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。 私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。 しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。 それなのに、私の扱いだけはまったく違う。 どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。 当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後

有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。 乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。 だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。 それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。 王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!? けれど、そこには……。 ※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

異世界転生したら嫌われ者の男の娘になっていてざまぁ断罪されそう。 ざまぁ回避しようとするも何をやっても嫌われる。

甘いからあげ
ファンタジー
 異世界転生したら僕もざまぁ投票した嫌われ者の男の娘になっていた。 美少女日常オールスターゲームで女を抱くは風呂も更衣室も女用を使いたがる。 男性達が大好きな美少女に下心満載でべたべたするわ。そりゃユーザーに嫌われるわ。  僕もざまぁ投票してたが、まさかざまぁ投票した嫌われ者の男の娘になるなんて。 声も男性声優だし。体つきも少年だし顔もメイク落とせば少年でしかないし。 これは嫌われる要素しかない。好かれる要素がない。 絶望すぎる異世界転生。それでも死にたくないざまぁ回避してラスボスを倒す。

処理中です...