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幼少期
28 ダンジョン攻略後のあれこれ
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「これが疾風の指輪」
長く苦しい戦いを経て、見事ダンジョンボスを倒し、俺はようやくの思いで攻略報酬である疾風の指輪を手に入れることができた……はい、嘘です。
嘘をつきました。あの後も特に見どころになる戦いは一切なく、俺を発見しては悠長に飛翔しようとする虫型モンスターに殺虫剤をかけて確殺するだけ。
ダンジョンボスは流石に殺虫剤で確殺とはいかないのだが、ボスにたどり着いたときには俺のレベルは30に到達、このダンジョンの攻略目安がレベル25なので余裕のよっちゃんで勝利だ。
まあ、確殺じゃないだけで、殺虫剤はボスにも大ダメージを与えるから、相手の攻撃をよけつつ4本分も殺虫剤を撒けばボスもやられたしな。
「マックス様! 無事ですかっ!?」
「クルト、ああ、こんなに奥まで入ってきて……俺なら無事だよ」
ダンジョンを攻略するとしばらくの間、モンスターの湧きがストップして、バリアが解除されるから、それでクルトたちが入ってきたんだな。
「無事の攻略おめでとうございます」
「ああ、この国では久しくダンジョンの攻略はされていなかったというから、もしかしたら父上に褒められるかな?」
「褒めてはいただけるでしょうが、心配もされるでしょう。……外には冒険者組合の者も呼んであります。攻略者の情報を開示してほしいとのことです」
「ああ、呼んでくれていたのか。助かるよ」
ダンジョンはこの国だけではなく、この大陸全体に散らばっていて、各国でも攻略はしているが攻略情報は冒険者組合で管理している。
ダンジョン攻略者は貴族だろうが、平民だろうが、冒険者組合に報告をする義務が課せられているのだ。
ここ100年ほどは新規のダンジョン攻略者が出ていないから、国王陛下の耳にも入るだろう。
国王陛下に功績が認められれば、たとえ主人公がゲーム開始後にダンジョンを攻略しても勇者と呼ばれることはないはず……ざまーみろ!
ま、既にシナリオからは程遠いことになっているから、杞憂かもしれないが主人公が勇者にならなければただの平民。
難癖付けてきてもいなせるし、そもそも平民が貴族に難癖付けること自体が有り得ないからな。
勇者になると騎士爵が与えられ、貴族になってしまう。さらに王国の危機を救えば、一代限りではない爵位を得ることも可能。
ゲームではヒロインに第三王女がいたこともあって、エンディングでは国王となっていたが、これでその原因を1つ潰せたかな。
「ふむふむ、旅の途中でダンジョンを発見したと」
「付き添いの騎士とともに発見したが、わたしが発見者だったので権利の行使として攻略に挑ませていただいた」
「それは問題ありません。いや、できれば冒険者組合に知らせてから攻略に挑んでほしかったですが、高望みでしょう」
「ま、次があればそうしましょう」
「で、攻略者のお名前と攻略報酬、出現モンスターの情報が欲しいのですが」
「マックス・フォン・ゲルハルディ。この領の嫡男だ。攻略報酬は秘匿。出現モンスターは虫系モンスターしか見なかった」
「ご領主様の……。ですが、攻略報酬は秘匿ですか?」
「攻略者にとって不利になると判断した場合は秘匿が可能……そうだろう? 俺が子供だからってわからないと思ったか?」
「め、滅相もございません! 確かに規定で秘匿は可能です。……ですが、それほどの物なのですか?」
「どちらにしても攻略報酬は1度限りしか手に入らない。公開しても混乱を招くだけだろう。ダンジョン内のモンスターは平均で30程度のレベルだから、それなりの実力者以外にはダンジョン自体公開しないでくれ。これは攻略者としてではなく、領主一族として命令する」
「はっ! わかりました。ダンジョン探索にレベル規程をかけさせていただきます。ゲルハルディ領内に拠点を持つものはレベル25以上、それ以外は30以上とさせていただきます」
「ああ、それくらいが妥当だろうな。他領の騎士や貴族が大挙して、勝手に死んでこっちに文句を言われたらたまったものじゃないからな」
この辺は領主教育で教えられる内容……安易にダンジョンを開放して大貴族からの圧力で賠償を迫られた貴族たちの後悔からの教えだ。
騎士であろうと貴族であろうと、冒険者であろうと他領の人間と自領の人間で扱いを変える。
それによって自領の人間の力を高めると同時に、他領から文句も言わせない。
「では、そのように差配させていただきます。……マックス様の冒険者登録はいかがしますか?」
「いい。次期領主として他領のダンジョンに潜るつもりはないからな。スタンピードが起きないように自領のダンジョンを管理するので手いっぱいだ」
基本的に貴族は他領のダンジョンには入れない。例外が冒険者として登録し、冒険者としてダンジョンに入ることだが、そもそもゲルハルディ領以上においしいダンジョンは国内にはないから必要がない。
ま、ゲルハルディ領内のダンジョンもマナの指輪が眠ってるダンジョン以外は興味ないがな。
長く苦しい戦いを経て、見事ダンジョンボスを倒し、俺はようやくの思いで攻略報酬である疾風の指輪を手に入れることができた……はい、嘘です。
嘘をつきました。あの後も特に見どころになる戦いは一切なく、俺を発見しては悠長に飛翔しようとする虫型モンスターに殺虫剤をかけて確殺するだけ。
ダンジョンボスは流石に殺虫剤で確殺とはいかないのだが、ボスにたどり着いたときには俺のレベルは30に到達、このダンジョンの攻略目安がレベル25なので余裕のよっちゃんで勝利だ。
まあ、確殺じゃないだけで、殺虫剤はボスにも大ダメージを与えるから、相手の攻撃をよけつつ4本分も殺虫剤を撒けばボスもやられたしな。
「マックス様! 無事ですかっ!?」
「クルト、ああ、こんなに奥まで入ってきて……俺なら無事だよ」
ダンジョンを攻略するとしばらくの間、モンスターの湧きがストップして、バリアが解除されるから、それでクルトたちが入ってきたんだな。
「無事の攻略おめでとうございます」
「ああ、この国では久しくダンジョンの攻略はされていなかったというから、もしかしたら父上に褒められるかな?」
「褒めてはいただけるでしょうが、心配もされるでしょう。……外には冒険者組合の者も呼んであります。攻略者の情報を開示してほしいとのことです」
「ああ、呼んでくれていたのか。助かるよ」
ダンジョンはこの国だけではなく、この大陸全体に散らばっていて、各国でも攻略はしているが攻略情報は冒険者組合で管理している。
ダンジョン攻略者は貴族だろうが、平民だろうが、冒険者組合に報告をする義務が課せられているのだ。
ここ100年ほどは新規のダンジョン攻略者が出ていないから、国王陛下の耳にも入るだろう。
国王陛下に功績が認められれば、たとえ主人公がゲーム開始後にダンジョンを攻略しても勇者と呼ばれることはないはず……ざまーみろ!
ま、既にシナリオからは程遠いことになっているから、杞憂かもしれないが主人公が勇者にならなければただの平民。
難癖付けてきてもいなせるし、そもそも平民が貴族に難癖付けること自体が有り得ないからな。
勇者になると騎士爵が与えられ、貴族になってしまう。さらに王国の危機を救えば、一代限りではない爵位を得ることも可能。
ゲームではヒロインに第三王女がいたこともあって、エンディングでは国王となっていたが、これでその原因を1つ潰せたかな。
「ふむふむ、旅の途中でダンジョンを発見したと」
「付き添いの騎士とともに発見したが、わたしが発見者だったので権利の行使として攻略に挑ませていただいた」
「それは問題ありません。いや、できれば冒険者組合に知らせてから攻略に挑んでほしかったですが、高望みでしょう」
「ま、次があればそうしましょう」
「で、攻略者のお名前と攻略報酬、出現モンスターの情報が欲しいのですが」
「マックス・フォン・ゲルハルディ。この領の嫡男だ。攻略報酬は秘匿。出現モンスターは虫系モンスターしか見なかった」
「ご領主様の……。ですが、攻略報酬は秘匿ですか?」
「攻略者にとって不利になると判断した場合は秘匿が可能……そうだろう? 俺が子供だからってわからないと思ったか?」
「め、滅相もございません! 確かに規定で秘匿は可能です。……ですが、それほどの物なのですか?」
「どちらにしても攻略報酬は1度限りしか手に入らない。公開しても混乱を招くだけだろう。ダンジョン内のモンスターは平均で30程度のレベルだから、それなりの実力者以外にはダンジョン自体公開しないでくれ。これは攻略者としてではなく、領主一族として命令する」
「はっ! わかりました。ダンジョン探索にレベル規程をかけさせていただきます。ゲルハルディ領内に拠点を持つものはレベル25以上、それ以外は30以上とさせていただきます」
「ああ、それくらいが妥当だろうな。他領の騎士や貴族が大挙して、勝手に死んでこっちに文句を言われたらたまったものじゃないからな」
この辺は領主教育で教えられる内容……安易にダンジョンを開放して大貴族からの圧力で賠償を迫られた貴族たちの後悔からの教えだ。
騎士であろうと貴族であろうと、冒険者であろうと他領の人間と自領の人間で扱いを変える。
それによって自領の人間の力を高めると同時に、他領から文句も言わせない。
「では、そのように差配させていただきます。……マックス様の冒険者登録はいかがしますか?」
「いい。次期領主として他領のダンジョンに潜るつもりはないからな。スタンピードが起きないように自領のダンジョンを管理するので手いっぱいだ」
基本的に貴族は他領のダンジョンには入れない。例外が冒険者として登録し、冒険者としてダンジョンに入ることだが、そもそもゲルハルディ領以上においしいダンジョンは国内にはないから必要がない。
ま、ゲルハルディ領内のダンジョンもマナの指輪が眠ってるダンジョン以外は興味ないがな。
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