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幼少期
23 夕飯前の講評
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「マックス、ウイスキー入りのチョコレートはすごいなっ!」
「ねえ、マックス、どうして私は食べてはいけないの?」
「父上、気に入っていただけたのならよかったです。母上、授乳期間中は飲酒は厳禁だとお医者様にも言われているでしょう? わたしが禁止しているわけではありませんよ」
「そうだけど、そうだけど……」
「授乳期間が終わったら、母上の好きな梅酒入りのチョコレートを作りますから、しばらくは我慢してください」
「梅酒入り!?」
「そうですね。どうせなら梅酒から自作してみるのも面白いかもしれませんね。ゲルハルディ領には梅の栽培を行っている者もいるのでしょう? あ、杏酒の方でもいいか。杏はジャムにもしていますから量がありますよね」
「マックス、それって最高ねっ! 料理長に頼んで仕込んでもらいましょう」
「……マックス。まさかとは思うが、ワインやブランデーでもできるのか?」
「? 作り方は一緒ですから大丈夫でしょう。まあ、甘いチョコの中に入れるので好き好きはあるでしょうけど」
「ふむ。これはレシピを秘匿して、手土産にするのが良いか」
「でしょうね。唐辛子やチョリソーは制作方法が簡単にわかってしまいますけど、こちらは中に入れるという発想は真似できても、再現は難しいでしょう」
卓越した料理人が見れば、再現できなくはないだろうが、料理をしたこともない貴族ならばチョコレートの中に酒を入れるというのは仕組みがわからないだろう。
逆に作り方がわかるような人間は、レシピ開発にかかる労力も理解しているので、自分で楽しむならばともかく、先にこちらが出していれば自分の功績にしようとは思わないはずだ。
「では、ユリアには販売しないようにして、ユリアとトーマスの分だけ渡すか。……あと、何か他にも作ったんだって」
「後ほど出ますが、硬いパンを作りました。男性は食べ出があって良いと言っていましたが、ほとんどの方はいつものパンが良いと」
「ふむ、なにもかもが受け入れられるわけではないということだな。このチョコレートも酒が苦手なものには好まれないだろう」
「ええ、手土産にする際には先方の嗜好を確認しないと不興を買いますね」
「ま、酒好きの陛下には今度もっていってみるか。陛下好みのウイスキーでな」
「良いんじゃないですか?……あ、バカみたいに自慢しないでくださいね。特にわたしが作ったなどと言わないように」
家督を継いでいない状態では陛下に会うことはないし、何か言われることはないが、いずれ家督を継いだときには披露目があるからな。
今から献上品に関わっているなんて知られたら……いや、献上品というか父上的には友人への手土産なんだろうけど……将来、何を言われるかわからないからな。
「えー、息子の自慢をしてはダメか?」
「ダメです。そもそも、わたしは口出しをしただけで、作ったのは料理長ですからね」
「だが、アイディアはマックスだろう?」
「ゲルハルディ伯爵を継いだ時に他の何かを、とか言われても困りますし」
「思いつかんか?」
「今のところは特には。それに思いつくのは突然ですからね、そうそう都合よくは出来ないでしょう」
やってることは前世のレシピ再現だが、シナリオライターが設定したすべてを覚えているわけではないので、実はこの世界にあるというのも当然あるだろう。
俺がやっているのは俺の身近になくて、俺が食べたいものを作っているだけだから、そこまで期待されても困る。
「あなた、マックスがそこまで言うのだから自慢してはダメよ。言うなら特産品を組み合わせて何かできないか皆で頭を悩ませて作った、くらいで」
「ふむ、私としては友人だが、マックスにとっては上位者だからな。あまり触れ回らないようにしよう」
「それが良いかと」
「では、夕飯にしようか。マックスの作ったパンもあるとか」
「作ったのは料理人たちですけどね。わたしが指示した分は試食に回しましたので」
とはいえ、ウチの料理人たちは優秀だから、1回教えれば普通に貴族が食べられるものを作ってくる。
「旦那様、こちらがマックス様考案の硬いパン、そのままの状態とガーリックバターを塗って焼き直したものです」
「ほう、確かにいつものパンよりもだいぶ硬いな」
「マックス、これはどう食べればいいの?」
「母上、そのまま食べても良いですし、スープに漬けて柔らかくしても良いですよ」
「ふむ……ちぎると皮の部分がポロポロ落ちてしまうな……うん、だが食べ応えがある」
「マックス、こちらのガーリックバターを塗ってあるほうは良いわね……ただ、お酒が……」
「母上、お酒はダメです」
「わかってるわよ……でも、お客様を招いた際には出しづらいわね」
「にんにくを多量に使っていますからね」
「ま、いいだろう。これは家族だけに出せば」
「あと、こちらについてはユリア叔母さんにレシピを教えて酒場で出してもらおうかと」
「それもいいな。ガーリックバターは酒場で人気が出るだろう」
「ねえ、マックス、どうして私は食べてはいけないの?」
「父上、気に入っていただけたのならよかったです。母上、授乳期間中は飲酒は厳禁だとお医者様にも言われているでしょう? わたしが禁止しているわけではありませんよ」
「そうだけど、そうだけど……」
「授乳期間が終わったら、母上の好きな梅酒入りのチョコレートを作りますから、しばらくは我慢してください」
「梅酒入り!?」
「そうですね。どうせなら梅酒から自作してみるのも面白いかもしれませんね。ゲルハルディ領には梅の栽培を行っている者もいるのでしょう? あ、杏酒の方でもいいか。杏はジャムにもしていますから量がありますよね」
「マックス、それって最高ねっ! 料理長に頼んで仕込んでもらいましょう」
「……マックス。まさかとは思うが、ワインやブランデーでもできるのか?」
「? 作り方は一緒ですから大丈夫でしょう。まあ、甘いチョコの中に入れるので好き好きはあるでしょうけど」
「ふむ。これはレシピを秘匿して、手土産にするのが良いか」
「でしょうね。唐辛子やチョリソーは制作方法が簡単にわかってしまいますけど、こちらは中に入れるという発想は真似できても、再現は難しいでしょう」
卓越した料理人が見れば、再現できなくはないだろうが、料理をしたこともない貴族ならばチョコレートの中に酒を入れるというのは仕組みがわからないだろう。
逆に作り方がわかるような人間は、レシピ開発にかかる労力も理解しているので、自分で楽しむならばともかく、先にこちらが出していれば自分の功績にしようとは思わないはずだ。
「では、ユリアには販売しないようにして、ユリアとトーマスの分だけ渡すか。……あと、何か他にも作ったんだって」
「後ほど出ますが、硬いパンを作りました。男性は食べ出があって良いと言っていましたが、ほとんどの方はいつものパンが良いと」
「ふむ、なにもかもが受け入れられるわけではないということだな。このチョコレートも酒が苦手なものには好まれないだろう」
「ええ、手土産にする際には先方の嗜好を確認しないと不興を買いますね」
「ま、酒好きの陛下には今度もっていってみるか。陛下好みのウイスキーでな」
「良いんじゃないですか?……あ、バカみたいに自慢しないでくださいね。特にわたしが作ったなどと言わないように」
家督を継いでいない状態では陛下に会うことはないし、何か言われることはないが、いずれ家督を継いだときには披露目があるからな。
今から献上品に関わっているなんて知られたら……いや、献上品というか父上的には友人への手土産なんだろうけど……将来、何を言われるかわからないからな。
「えー、息子の自慢をしてはダメか?」
「ダメです。そもそも、わたしは口出しをしただけで、作ったのは料理長ですからね」
「だが、アイディアはマックスだろう?」
「ゲルハルディ伯爵を継いだ時に他の何かを、とか言われても困りますし」
「思いつかんか?」
「今のところは特には。それに思いつくのは突然ですからね、そうそう都合よくは出来ないでしょう」
やってることは前世のレシピ再現だが、シナリオライターが設定したすべてを覚えているわけではないので、実はこの世界にあるというのも当然あるだろう。
俺がやっているのは俺の身近になくて、俺が食べたいものを作っているだけだから、そこまで期待されても困る。
「あなた、マックスがそこまで言うのだから自慢してはダメよ。言うなら特産品を組み合わせて何かできないか皆で頭を悩ませて作った、くらいで」
「ふむ、私としては友人だが、マックスにとっては上位者だからな。あまり触れ回らないようにしよう」
「それが良いかと」
「では、夕飯にしようか。マックスの作ったパンもあるとか」
「作ったのは料理人たちですけどね。わたしが指示した分は試食に回しましたので」
とはいえ、ウチの料理人たちは優秀だから、1回教えれば普通に貴族が食べられるものを作ってくる。
「旦那様、こちらがマックス様考案の硬いパン、そのままの状態とガーリックバターを塗って焼き直したものです」
「ほう、確かにいつものパンよりもだいぶ硬いな」
「マックス、これはどう食べればいいの?」
「母上、そのまま食べても良いですし、スープに漬けて柔らかくしても良いですよ」
「ふむ……ちぎると皮の部分がポロポロ落ちてしまうな……うん、だが食べ応えがある」
「マックス、こちらのガーリックバターを塗ってあるほうは良いわね……ただ、お酒が……」
「母上、お酒はダメです」
「わかってるわよ……でも、お客様を招いた際には出しづらいわね」
「にんにくを多量に使っていますからね」
「ま、いいだろう。これは家族だけに出せば」
「あと、こちらについてはユリア叔母さんにレシピを教えて酒場で出してもらおうかと」
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