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幼少期
20 甥っ子の奇行(ユリア視点)
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ウチの甥っ子がおかしくなった。
いやいや、この言い方だとよくないね、元々おかしかった甥っ子の奇行に磨きがかかった……あんまり変わらないか。
いつものように港に輸出物を運んで、輸入物の買い付けを終え、商会に帰ってくると愛しいトーマスからマックスが商品の売込みに来たと聞かされた。
持ち込まれたものは調味料に辛みを付けたソーセージで、特に目新しいって程の物じゃない。
この国には胡椒が出回っているし、ウスターソースや中濃ソース、オイスターソースなんかの調味料がそれなりの値段がついているとはいえ、簡単に手に入る。
でも、味見させてもらって分かった。これほどの鮮烈な辛さを持った調味料は、この国にはないって。
しかも、調味料の原料は誰も見向きもしなかった……畑の虫除けに使われている赤い実だというじゃないの。
「貴方、これを本当にマックスが?」
「ああ、持ち込まれたときは冷静に対処したが、これはかなりの商機になるぞ」
「虫除けの実って名前が印象が良くないから、商品名もきちんと考えなきゃいけないけど、これがあれば貴族の腰巾着なんて言われなくて済むわよね」
そう、ゲルハルディ家から出てトーマスに嫁いだ私は、今や平民でアンドレ商会の副会長だけれど、アンドレ商会には目新しい商品がないことから他の商会から一段低く見られている。
それこそ、実家のゲルハルディ家に商品を売り込むだけ、貴族の腰巾着と呼ばれることも少なくはない。
「今は商会の商品制作部門で試作しているだけだけど、本格的に製造するとなったら工房を買い取らないといけないかもしれないな」
「そこまで売れる? ウチの部門を増やすだけではダメなの?」
「試しにウチで経営している酒場に試してみるように言ったら、売り上げが1.5倍になったらしい」
「1.5倍? 目新しい商品だし、他にはない辛みもあるけどそこまで?」
「ユリアも感じたんじゃないか? この調味料を使った料理、特にソーセージはビールやウイスキーの炭酸割が欲しくなるって」
う、流石は私の旦那様。確かに私は今、猛烈にビールが欲しくなっている。
「このソーセージを焼いて、フライドポテトを添えて出したところ、ビールの注文がひっきりなしにきたらしいよ」
「うっ、確かにビールが飛ぶように売れそう」
「僕の見立てだと、マックスはまだ何か隠してそうだし、実家に様子を見に行ってもらえないかな? マックスからはチョコレートが欲しいとも言われているし」
「チョコレート? マックスってそんなに甘いものが好きだったっけ?」
「チョコレートの中にウイスキーを入れたら良いかも……と」
「ウイスキー? 漏れて出てこない?」
「僕もそう聞いたけど、試してみたいと」
「ふぅん。……うん、そうね。搬入物を捌いて、仕事がある程度片付いたら様子を見に行こうかしら」
「そうだね。流石に旅から帰ってきて早々に見に行ってほしいとは言わないよ。酒場に出すレシピの相談もしたいし」
「そうそう、この調味料とソーセージだけど、絶対ピザとかパスタに合うと思うのよ」
酒場では軽い食べ物としてピザやパスタも出しているけれど、甘味があるのが大半で、正直お酒に合っているとは言いづらいのよね。
塩胡椒を効かせた野菜炒めや、ステーキなんかが人気なんだけど、まずはピザとかパスタって人も多いし、そこでお酒を注文してもらえれば大儲けよ!
「ピザはマルゲリータのソーセージをこれに変えてもらったけど、美味しかったよ。パスタは考えてなかったな」
「確か、キャベツとソーセージのパスタがあったでしょ? あれをこのソーセージに変えて、この調味料をかければ」
「うん、お酒が絶対に欲しくなるね」
輸入品を捌きつつも、新しいレシピを考えて試食していたらあっという間に2週間が経っていて、マックスが商会に来た日から1ヶ月が過ぎていたわ。
本当に、どうして時間ってこんなに早く過ぎてしまうのよ。
「マックス! 何か新しい商品を作ったんだって!?」
そう言って、実家の調理室に顔を出すと、マックスと料理長が何やら小瓶を前に話し合いをしていた。
まあ、私のことをオバさん呼ばわりしたマックスにはお仕置きをしたけどね。
2人に聞いてみたら、虫除けの実を使った新しい調味料だとか……なんで、この前一緒に持ってこなかったのかねぇ。
これまた、辛味と酸味が絶妙なもので、ついついお酒が進んでしまう調味料。
マックスに言って、このレシピも契約することになったけど、このままだとマックス小金持ちになるんじゃ?
まあ、その辺の金銭感覚の教育は兄さんと義姉さんの仕事か……私はこれでアンドレ商会をゲルハルディ領で1番の商会にさせるんだからね!
いやいや、この言い方だとよくないね、元々おかしかった甥っ子の奇行に磨きがかかった……あんまり変わらないか。
いつものように港に輸出物を運んで、輸入物の買い付けを終え、商会に帰ってくると愛しいトーマスからマックスが商品の売込みに来たと聞かされた。
持ち込まれたものは調味料に辛みを付けたソーセージで、特に目新しいって程の物じゃない。
この国には胡椒が出回っているし、ウスターソースや中濃ソース、オイスターソースなんかの調味料がそれなりの値段がついているとはいえ、簡単に手に入る。
でも、味見させてもらって分かった。これほどの鮮烈な辛さを持った調味料は、この国にはないって。
しかも、調味料の原料は誰も見向きもしなかった……畑の虫除けに使われている赤い実だというじゃないの。
「貴方、これを本当にマックスが?」
「ああ、持ち込まれたときは冷静に対処したが、これはかなりの商機になるぞ」
「虫除けの実って名前が印象が良くないから、商品名もきちんと考えなきゃいけないけど、これがあれば貴族の腰巾着なんて言われなくて済むわよね」
そう、ゲルハルディ家から出てトーマスに嫁いだ私は、今や平民でアンドレ商会の副会長だけれど、アンドレ商会には目新しい商品がないことから他の商会から一段低く見られている。
それこそ、実家のゲルハルディ家に商品を売り込むだけ、貴族の腰巾着と呼ばれることも少なくはない。
「今は商会の商品制作部門で試作しているだけだけど、本格的に製造するとなったら工房を買い取らないといけないかもしれないな」
「そこまで売れる? ウチの部門を増やすだけではダメなの?」
「試しにウチで経営している酒場に試してみるように言ったら、売り上げが1.5倍になったらしい」
「1.5倍? 目新しい商品だし、他にはない辛みもあるけどそこまで?」
「ユリアも感じたんじゃないか? この調味料を使った料理、特にソーセージはビールやウイスキーの炭酸割が欲しくなるって」
う、流石は私の旦那様。確かに私は今、猛烈にビールが欲しくなっている。
「このソーセージを焼いて、フライドポテトを添えて出したところ、ビールの注文がひっきりなしにきたらしいよ」
「うっ、確かにビールが飛ぶように売れそう」
「僕の見立てだと、マックスはまだ何か隠してそうだし、実家に様子を見に行ってもらえないかな? マックスからはチョコレートが欲しいとも言われているし」
「チョコレート? マックスってそんなに甘いものが好きだったっけ?」
「チョコレートの中にウイスキーを入れたら良いかも……と」
「ウイスキー? 漏れて出てこない?」
「僕もそう聞いたけど、試してみたいと」
「ふぅん。……うん、そうね。搬入物を捌いて、仕事がある程度片付いたら様子を見に行こうかしら」
「そうだね。流石に旅から帰ってきて早々に見に行ってほしいとは言わないよ。酒場に出すレシピの相談もしたいし」
「そうそう、この調味料とソーセージだけど、絶対ピザとかパスタに合うと思うのよ」
酒場では軽い食べ物としてピザやパスタも出しているけれど、甘味があるのが大半で、正直お酒に合っているとは言いづらいのよね。
塩胡椒を効かせた野菜炒めや、ステーキなんかが人気なんだけど、まずはピザとかパスタって人も多いし、そこでお酒を注文してもらえれば大儲けよ!
「ピザはマルゲリータのソーセージをこれに変えてもらったけど、美味しかったよ。パスタは考えてなかったな」
「確か、キャベツとソーセージのパスタがあったでしょ? あれをこのソーセージに変えて、この調味料をかければ」
「うん、お酒が絶対に欲しくなるね」
輸入品を捌きつつも、新しいレシピを考えて試食していたらあっという間に2週間が経っていて、マックスが商会に来た日から1ヶ月が過ぎていたわ。
本当に、どうして時間ってこんなに早く過ぎてしまうのよ。
「マックス! 何か新しい商品を作ったんだって!?」
そう言って、実家の調理室に顔を出すと、マックスと料理長が何やら小瓶を前に話し合いをしていた。
まあ、私のことをオバさん呼ばわりしたマックスにはお仕置きをしたけどね。
2人に聞いてみたら、虫除けの実を使った新しい調味料だとか……なんで、この前一緒に持ってこなかったのかねぇ。
これまた、辛味と酸味が絶妙なもので、ついついお酒が進んでしまう調味料。
マックスに言って、このレシピも契約することになったけど、このままだとマックス小金持ちになるんじゃ?
まあ、その辺の金銭感覚の教育は兄さんと義姉さんの仕事か……私はこれでアンドレ商会をゲルハルディ領で1番の商会にさせるんだからね!
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