気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

文字の大きさ
上 下
17 / 123
幼少期

17 クルトとの出会い

しおりを挟む
「おっ、坊ちゃん。見学ですかい?」

「騎士団長、体力作りもひと段落着いたから、剣術の方も学ぼうと思ってね」

 レナとの婚約も認められて、しばらくは体力作りに専念していたが6歳になった今では、体形も元通り、ある程度の距離を走り続けても息切れもしなくなってきた。
 そろそろダンジョン攻略に備えて、剣術のひとつも学ばなければなと思いつつ、騎士団に見学に来たってわけだ。

「剣術ですかい。俺はハルバードを使いますからな、坊ちゃんにはまだ早いでしょう」

「そんなニッチな戦い方を学ぶつもりは最初から無いよ」

「ニッチってひでえですなぁ。これでも大物が出た時には大活躍なんですよ」

「次期領主が大物が出た時に率先してハルバードを振り回してる絵面を想像してみなよ」

「ふむ……蛮族ですかな」

「だから、使わないんだよ」

「じゃあ、クラウスの旦那に習うんで? あっちでソワソワしていますし」

「規格外の剣術を習って凡人に何をしろと?」

「ですなぁ。クラウスの旦那は旦那で両手剣を片手で振り回す猛者ですからなぁ」

「もっとさ、まともな……というか、スタンダードな剣術を使う人はいないわけ?」

 自分の家の騎士団を貶したいわけではないが、この騎士団は騎士団長と領主というトップ2人が常識外れの武器を使ってる関係上、スタンダードな戦い方をする人が少ない。
 まあ、そもそもゲルハルディ領が王都側は草原、北東辺境伯側が森、南辺境伯側が山、さらに東側には海があると、いろんな戦い方が求められるから仕方ないっちゃ仕方がないんだけどさ。

「まともな……そういえば、最近入団した団員がいますぜ。基礎段階ですから、まだ染まってないんじゃないんですかね」

「染まってないってひどい言い方。……まあ、いいや。どの人?」

「あそこでロングソードを振ってる奴でさぁ。名前はクルト」

「ふーん、じゃあ教わろうかな。父上には適当に言い訳しといてよ」

「そいつぁ、また面倒なお願いですな。ま、適当に模擬戦の誘いでもして誤魔化しておきますぜ」

 騎士団長に紹介された団員は、確かに入団直後らしく、年齢にしたら14~18歳くらい……前世なら中学生から高校生の間くらいの雰囲気だ。
 握っているのはロングソードにラウンドシールドという、この世界のスタンダードな武器で、武器の振り方や盾の出し方についてベテラン団員に指導されているようだ。

「はじめまして、クルト。俺はゲルハルディ家の嫡男で、マックスだ。よろしくな」

「領主様のご子息!?」

「おお、これはこれは、マックス坊ちゃん。騎士団の見学ですか?」

「そうそう。剣術もそろそろ習おうと思ったんだけど、やっぱり習うなら騎士団かなって」

「ふむ。領主様に?」

「あんな化け物に習ったら筋骨隆々にされるよ。普通にロングソードとラウンドシールドを使いたいなって、クルトみたいに」

「はっはっは、坊ちゃんも言いますなぁ。確かに貴族学園ではロングソードとラウンドシールドが基本ですからその方が良いですかな。私が教えましょうか?」

「それも良いけど、最初からベテランに時間を取ってもらってもね。……で、クルト、俺に教えてくれるかな?」

「わ、わたしですかっ!?」

「そうそう。年齢も騎士団内じゃ比較的近いしさ」

「ふむ、坊ちゃん。未来を見据えておられるのですかな?」

「ま、そういうことだね」

「???」

 クルトはよくわかっていなくてベテラン騎士団員は分かっているようだけど、俺が領主になるだろう10年から20年後には今のベテランは騎士団を辞めてる可能性が高い。
 クルトのような新入りも10年後には小隊長、20年後には中隊長や騎士団長になっている可能性が高いってわけだ。
 だから、青田買いってわけでもないが、今から仲良くなっておくに越したことはない。
 というか、ベテランは俺が生まれた時から知ってるようなやつばかりだから、頭が上がらないというか、可愛がられているからわざわざ仲良くしなくても問題がないというのもあるんだよな。

「ふむ、クルト。坊ちゃんに剣術を教えてやれ。お前も人に教える経験をすれば、自分の糧になるだろう」

「はいっ!」

「じゃあ、クルトよろしくね。……あ、俺はこの体格だからロングソードじゃなくてショートソードからでお願いね」

「はいっ!」

 上司の息子みたいな立ち位置だから、クルトは緊張しているみたいだけど、なんとか仲良くなって軽口が叩ける程度の関係性にはならないとな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

物語の悪役らしいが自由にします

名無シング
ファンタジー
5歳でギフトとしてスキルを得る世界 スキル付与の儀式の時に前世の記憶を思い出したケヴィン・ペントレーは『吸収』のスキルを与えられ、使い方が分からずにペントレー伯爵家から見放され、勇者に立ちはだかって散る物語の序盤中ボスとして終わる役割を当てられていた。 ーどうせ見放されるなら、好きにしますかー スキルを授かって数年後、ケヴィンは継承を放棄して従者である男爵令嬢と共に体を鍛えながらスキルを極める形で自由に生きることにした。 ※カクヨムにも投稿してます。

悪役令息の三下取り巻きに転生したけれど、チートがすごすぎて三下になりきれませんでした

あいま
ファンタジー
悪役令息の取り巻き三下モブに転生した俺、ドコニ・デモイル。10歳。 貴族という序列に厳しい世界で公爵家の令息であるモラハ・ラスゴイの側近選別と噂される公爵家主催のパーティーへ強制的に行く羽目になった。 そこでモラハ・ラスゴイに殴られ、前世の記憶と女神さまから言われた言葉を思い出す。 この世界は前世で知ったくそ小説「貴族学園らぶみーどぅー」という学園を舞台にした剣と魔法の世界であることがわかった。 しかも、モラハ・ラスゴイが成長し学園に入学した暁には、もれなく主人公へ行った悪事がばれて死ぬ運命にある。 さらには、モラハ・ラスゴイと俺は一心同体で、命が繋がる呪いがオプションとしてついている。なぜなら女神様は貴腐人らしく女同士、男同士の恋の発展を望んでいるらしい。女神様は神なのにこの世界を崩壊させるつもりなのだろうか? とにかく、モラハが死ぬということは、命が繋がる呪いにかかっている俺も当然死ぬということだ。 学園には並々ならぬ執着を見せるモラハが危険に満ち溢れた学園に通わないという選択肢はない。 仕方がなく俺は、モラハ・ラスゴイの根性を叩きなおしながら、時には、殺気を向けてくるメイドを懐柔し、時には、命を狙ってくる自称美少女暗殺者を撃退し、時には、魔物を一掃して魔王を返り討ちにしたりと、女神さまかもらった微妙な恩恵ジョブ変更チート無限を使い、なんとかモラハ・ラスゴイを更生させて生き残ろうとする物語である。 ーーーーー お読みくださりありがとうございます<(_ _)>

ドアマット扱いを黙って受け入れろ?絶対嫌ですけど。

よもぎ
ファンタジー
モニカは思い出した。わたし、ネットで読んだドアマットヒロインが登場する作品のヒロインになってる。このままいくと壮絶な経験することになる…?絶対嫌だ。というわけで、回避するためにも行動することにしたのである。

悪役令嬢のいない乙女ゲームに転生しました

かぜかおる
ファンタジー
悪役令嬢のいない乙女ゲームに転生しました!しかもサポートキャラ!! 特等席で恋愛模様を眺められると喜んだものの・・・ なろうでも公開中

悪役令嬢に転生したので何もしません

下菊みこと
恋愛
微ざまぁ有りです。微々たるものですが。 小説家になろう様でも投稿しています。

転生ヒロインは乙女ゲームを始めなかった。

よもぎ
ファンタジー
転生ヒロインがマトモな感性してる世界と、シナリオの強制力がある世界を混ぜたらどうなるの?という疑問への自分なりのアンサーです。転生ヒロインに近い視点でお話が進みます。激しい山場はございません。

前世の幸福ポイントを使用してチート冒険者やってます。

サツキ コウ
ファンタジー
俗に言う異世界転生物。 人生の幸福ポイントを人一倍残した状態で不慮の死を遂げた主人公が、 前世のポイントを使ってチート化! 新たな人生では柵に囚われない為に一流の冒険者を目指す。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

処理中です...